短編 ベリキュー(スパ)

□きゅーと6
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今でこそ、5人でほのぼのだけれど
8人の頃は怖いお姉さんがいた。


【きゅーと 6】



千聖視点


まだ、小学校低学年でこの世界に入った。
その頃はお姉さん組、小さい子組と分かれていた。

そして、一まとめだった15人は
2つのグループに分けられた。

お姉さん組が泣いていたのが印象的だった。
私達は幼すぎてわからなかった。


そして、私達のスタートは遅れたものの
℃-uteという名前ももらえたし

すべては、順調に思えた。


そう、すべては順調に。



――――――


えりかちゃんと舞美ちゃんは叱らない。
なかさきちゃんは問題外。

怖いのはめぐだ。


普段はいいけれど、いやよくないけれど
ママにお尻ぶたれた後にめぐにやられる時は

直前から、なきたくなる。


そして、今、目の前に居るのは叱られて後ずさってる愛理と
優しい口調で目が笑っていないめぐ。


「ご、ごめんなさい…」
「うん、反省してるならおいで?」

「…」
「愛理?」

さっきから、同じような会話を繰り返している。
お説教の間は小さくなっていたんだけどね。

「ほらっ、おいで」
「うぅ…やだぁ」

「…まったく」
「ま、待って」

めぐがいつものように立って
愛理を連れに行くとあわあわしだす。


あっというまに膝の上にスタンバイさせられた
愛理は耐えるために小さくなって震えている。

ピシャン!

「いたっ!」
「反省してるなら一度くらい自分からきなよ?」

ピシャン!

「うぅ…だって」
「だってはいりません」

ピシャン!

「ご、ごめんなさぃ」
「まだ…少し反省しようね」


すぐに赤く染められていく愛理のお尻を見て
千聖はヒヤヒヤしていた。

だって、愛理が叱られている事の
主犯は千聖だし。

愛理のお尻はもう真っ赤だった。
いつの間にか、わんわん泣いてるし。

ってか、愛理は巻き込んだ、だけだったり…
だからか、見てるの辛いんだけど…

変な行動を取ったら、ばれる…
確実に、座れないほど叱られる!

それだけは、回避したかった。


「ごめっごめんなさっ…ふぇっ…えぐっ…」
「もう、気をつけてよ?」

「はいぃ…」
「はい、終わり」

そういった瞬間に舞美ちゃんの所まで
えぐえぐ言いながら抱きつきに行った愛理を見ていたら。

「千聖?」
「え?うわぁぁ!!」

さっきまで、怖い顔しながら愛理を叱っていた
めぐに話しかけられていた。

吃驚しすぎて、後ろに飛んじゃったけど
怪しんでないよね?


「ちょっ…吃驚するでしょ」
「え、あ…ごめん」

「いや、いいけど」
「う、うん」

「そういえば、顔色悪いけど…体調悪い?」
「…だいじょうぶ」

そう?って言いながら疑いの眼差しで見られる。
あれ、やばくない?


ふと、見ると苦笑いした舞美ちゃんとえりかちゃん
なんで、顔色悪いかあの二人にはばれてる様子で。

「もしかして、愛理の件」
「え?」

「あれ、主犯あんた?」
「…」

自分でわかる。
血の気が引いていくってこんな感じなんだ

きっと。

目の前でやっぱりねって声がする。


「だよね、愛理が一人でやると思わなかったし」
「…」

なんもいえない。

「まぁ、反省はしてるみたいだし…20我慢ね」
「えっ、そんなに?」

「愛理は50だったんだから足りないくらいでしょ」
「うっ…そういわれると…」

気がつくと、床が目の前にあった。
お尻を出されたからか身震いした瞬間

きつい、平手が落ちた。

「い、いたいっ!」
「痛くないお仕置きとか聞いた事ない」

「む、無理無理!」
「無理じゃない」

「やだっ!」
「もう少しだから我慢」

泣いて暴れていたらいつの間にか終わっていて
めぐに抱きしめられて背中をさすられていた。

愛理と共にソファでお尻を冷やしてもらって。
愛理と目が合って恥ずかしげに二人で笑って。



――――――――――

ついさっき、叱られていた愛理を久しぶりに見たから
きっと、こんな事思い出したんだ。

きっと、きっとそうなんだ。
今日はホテルに泊まりで、今はなっきぃがお風呂に入っていて。

余計に、ぐるぐると回る。


あれから、めぐはすぐにいなくなった。
いい関係だった、チームワークは一度崩れてぐちゃぐちゃになった。

栞菜もえりかちゃんもやめて。
あの、雰囲気はなくなってどうしていいか分からなくなって

舞美ちゃんに当り散らした時期もあって。
周りが止めるほどひどくなっても


笑いながら全部受け止めてくれた。


それすらも、嫌で余計にひどく当たって。
怒らなかったから怒れないんだと勘違いしていた。

子供過ぎて分からなかったんだ。
舞美ちゃんも私達とそんなに年齢が変わらないと。

八つ当たりは自分を責めるために怒らなかったんだと
気がついたのは意外と最近。


そして、初めて舞美ちゃんに叱られたのは
自分を大切にしなかった時だった。


座るのが辛くて3日はべそべそ言っていたと思う。

でも、忘れる事が出来ない。
舞美ちゃんの涙。

「ごめんね、いたかったよね」
「ふぇっ…」

「ごめんね…千聖」
「舞美ちゃん…」

「辛かったんだよね、寂しかったんだよね」
「…」

「何にもしてあげられなくてごめんね」
「へっ?…」

私の頭を撫でながら辛そうな顔でそんな事いって。
何もいえなかった。

なんて、声をかけていいか分からなくて。

「誰のせいでもない、舞美ちゃんが泣く必要はないよ」
「なっきぃ…ありがと」

私を抱きしめたままなっきぃの方を向く舞美ちゃん
なっきぃに頭を撫でられていて、あふれ出す涙を抑えきれない

今までにあんな顔をしたリーダーは見た事が無かった。
そして、やっぱ私達の中ではお姉さんな、なっきぃに吃驚して。


「千聖〜出たよ」
「…」

「千聖?ちょっ…どうしたの?」
「へっ?」

今は、なかさきちゃんからなっきぃになって
でも、変わらない部分もちゃんとあって。

「なんか、あった?」

そういって、いつのまにか流れていた
涙をぬぐってくれて。

「今日、一緒に寝よっか?」
「はぁ?…なんでだよ」

「いいじゃん、寝ようよ?」
「まぁ、寝てやらない事もないけど…」

あれから、みんな変わったいい方向へ。
皆そう、変わったけど変わらない部分もちゃんとある。



リーダーは叱るようになったけど
頼ってもくれるようになった。

愛理はプレッシャーに強くなった。
一緒に悪戯もするけれど。

舞ちゃんは更に大人びた考えをするようになった。
でも、やっぱり、可愛い私達の末っ子。

なっきぃはリーダーを支えてる。
皆が変わっていけたのはある種この人の力も大きいのかも。


「千聖、寂しいなら寂しいって舞美ちゃんに
いってあげなよ?」
「…うるせぇ」

見透かされてるのも気に食わないけれど
今、ハグされてるのも気に食わない。

けど、今日はこの中で寝てやろう。









おわり

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