忍び街警備隊   完結

□忍び街警備隊 戦闘編
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かねがね噂は入ってきていた。
私達の終わりの時は近いのだと自覚もしていたんだ。

刹那に散りゆく、花びらと私達は化していく。



【忍び街警備隊 戦闘編】


会議に行った舞美ちゃんとえりかちゃん。
これが最後の会議になると思うって言ってた。

残っている、私と栞菜は宿舎の大広間に居る。
2人きりで、リーダーとサブリーダーの帰りを待っている。


「…」
「…愛理クッキー食べる?」


暗い雰囲気を壊してくれるのはいつも栞菜だった。
私のお尻を叩いたりして、たまにすごく怖いけれど

でも、全力でぶつかってくれる大事な人。


「うん、食べたい」
「じゃーお茶にしようか」


2人でお茶の用意をして、ゆったりとした
時間が流れる。


「あの、飛び込み方じゃさ、危ないよ」
「でも、あぁしなきゃ間に合わなかったよ」


いつの間にか、仕事の話になる。
段々とヒートアップして、足音すらにも気が付かなかった。


「こらっ!」
「「喧嘩じゃないよ!」」


えりかちゃんのお叱りに2人して声がハモる。
それに、皆で笑った。

喧嘩してたはずなのに栞菜とも顔を見合わせて
笑えたんだ。



でも、気が付いても居たよ。
えりかちゃんも舞美ちゃんも表情に影が差している。


「千聖と舞ちゃんが旅に出るんだって」
「え、それじゃ」

「うん、お別れ」
「そっか」


影をさしているのはこのせいかなって思った刹那。


「大丈夫だよ、また戻ってくるもん」
「そうだよ、近くにきたら絶対来るからね」


その、言葉に噛み付いたのは舞美ちゃん。


「ダメだよ、もう…戻ってきちゃダメ」
「へっ」

「どんな噂を聞いてもここに居た事は忘れて旅を続けてね」
「何を言ってるの…舞美ちゃん?」


その言葉に気づいてしまった。
決定が下ったんだ。


えりかちゃんが、私と栞菜の背中をさすってくれる。
顔を見るために少し見上げれば


すごく、複雑そうな顔をしている。


その日は見送りパーティとして盛大に騒いだ。
嫌な事を忘れるかのごとく、皆して騒いで

いつのまにか、berryzとかも入ってきて
どんちゃん騒ぎになっていた。





翌日、見送りを済ませた後、℃-uteとしての最後の
作戦会議が開かれた。


「決まったって」
「やっぱ、そうだったんだ」

「怖いから殺そうなんて…」
「…」




私達は、親なし宿無しだった。
それを、街を守るために、必要の無い子を集めた。

その中、訓練中に死ななかった私達を
いくつかのグループにして今に至る。


無敵と呼ばれたけど、迷惑はかけてない。
ただ、生まれが劣っている私達が尊敬されるのが

気に入らない、政府の決定。




「絶対、足掻いてやる」
「私達は何もしてないのに…」


暗い空気が漂う。
前回の襲撃で調べたらこういう結果が浮上した。


「でも、知れてよかったよね」
「…そうだね」

決戦は3日後。
正直、勝てる戦いではない。

けど、逃げるわけにも行かない。



「千聖と舞ちゃんが助かるだけでもよかった」
「うん、あの二人は幸せになってほしいよね」


舞美ちゃんとえりかちゃんのその会話にふと思い出した。



「愛理が死んだら泣くからねっ」


声が、頭に響く。
死にに行くんだって分かって

初めて、言われたその言葉を胸に頑張ろうって思えた
その言葉を抱いて戦うんだって。




「愛理…」
「栞、菜?」

栞菜の手が私の頬に触れる。
すごく、辛そうなその顔に息が詰まる。


「泣くなよ…愛理」
「え、泣いてなんかっ…」


言われて、拭う仕草をして気づく。
私のまぶたと頬は涙で濡れていた。

泣くつもりは無かったのに
いつの間にか、涙を落とすほど私は変わったって事なのかな?


気づけばとめどなく溢れてくる。
それを拭ってくれる栞菜。

そんな私と栞菜を抱きしめてくれる舞美ちゃん
さらに、私達、3人を包み込んでくれるえりかちゃん。



日は迫っていた。



いつもと、同じ服。
いつもの愛刀。


いつもと、何一つ変わらない。


いつもと、違うのは今日来るという
殺し屋の団体。


それに、ピリピリする空気。


髪を一つにまとめる。
後ろから、頭を撫でてくる栞菜。

振り向けば、抱きついてきた。


「栞菜」
「うん、もうすぐ出発だよ」



森へ偵察へ出れば。
奴らはすぐに、姿を現した。


「ほぉ、逃げずに来たのか」
「絶対、負けない」

怖い顔をして言う、舞美ちゃん。


「食詰め者が偉そうだな」
「っ!…」


私達の後ろには、モーニングやスマイレージ
半数のberryzがいる。


皆に向けられた言葉は重くのしかかる。
別に、偉そうになんかしてないのに…。

舞美ちゃんが唇を噛んでいるのが見える。
キッっと鋭い目つきに息を飲む。


「きゃぁぁ!」
「ぐっっ…」

「まーちゃん!」
「しっかりしてっ!」

後ろのほうで声がする。
振り返ると、相手がモーニングの新入りを殺したんだ。



おかげで、舞美ちゃんのスイッチが入った。

「くらえぇぇぇ!」
「ふふっ、精々楽しませてくれよ」


不敵な笑みで舞美ちゃんの相手をするそいつは
たぶん、かなり強い。


あちらこちらで、金属がぶつかり合う音がする。
私も例外なくさっきから、何人か殺した。

それなりに、手負いさせられたけど。


ふと、振り返れば刀を振り下ろされる瞬間だった。
慌てて、踏み込む。

「ちっ、邪魔すんなよ」
「こんな小さい子を殺そうなんておかしいですよ」


ニヤッと笑う、気持ちが悪い。
こいつらは、みんな同じような顔で笑う。


「じゃーねぇちゃんから殺してやるよ」
「…私は簡単には、っ!」

言い切る前に、振り下ろされる刀。
最後まで言わせる気がないらしい。


早いっ、けど栞菜に比べれば無駄な動きも多いし
何より、攻撃が甘い。


「つっ!」


自信満々だった、男の刀を弾き飛ばす。


男の首筋に刀を当てれば、表情に怯えが混じる。
私は、躊躇なく刀を振り下ろした。


「す、鈴木さん、ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!」」


血を払うように刀を一振りすると後ろから感謝の言葉を述べられた。


「へっ?あ…うん、よかったね」
「はい…」

はいと言いながら私の後ろを青い顔をしてみている。
同じように振り返れば、えりかちゃんが相当押されてる。

それに、踏み込む栞菜がさされそうになっていたのを見た。
私は、気が付いたら、走っていた。


瞬時に、栞菜の方は平気だと判断してえりかちゃんの前へ
この角度じゃとてもじゃないけれど弾けない。

でも、このままじゃ…えりかちゃんが…。


「あいりっ!」
「なにしてんだっ、愛理引け!」


栞菜と舞美ちゃんの声。
ごめん、でも…守りたいの。

体を盾のように飛び込んだ私に待っていたのは
腹部の熱さとえりかちゃんの泣き顔だけだった。


――――――


愛理が、刺されて崩れ落ちた。
あの、愛理が。

刀にもたれ掛かるかのように座り込む。


私が気が付いた頃にはもう間に合わない距離だった。
それを、愛理が行ってくれた。


もう一人が、えりを殺そうと近づく。
そんなの、許さない。


愛理が命を懸けて守ってくれた仲間。
これ以上、仲間を失うなんて、絶対いやっ!


ニヤニヤ近づく男を後ろから刺した。
その瞬間、サーベルを持っていないほうの腕が落ちた。


「えっ…」
「舞美ちゃんっ?!」


そして、肩を貫かれた。
血が、激しく流れていくのが分かる。

気が付くと、栞菜が泣きそうな顔で私を見ていた。

「ごめん、気づくの遅くてごめんね…」
「栞菜のせいじゃ…ないよ」


泣きそうな顔の栞菜の頭を撫でてあげれば泣き出した。
泣きながら、抱きしめてくれる。

「えりかちゃんも…ダメだった」
「そっか…」

状況を教えてくれる、聞こうにも、声がどんどん聞こえなくなってくる
あぁ、もう、ダメなんだって分かる。


そんな状態だから知らなかったんだ。
栞菜も腹部に刃物が刺さっていたなんて。

足も無い状態だったなんて。
分からなかった。



私がみた、最後は栞菜の泣き顔だった。


「栞菜…」
「ごめんね…私も、もうすぐ行くから」


最後の言葉は聞こえていなかった。





惨劇は最悪の形で幕を閉じた。
全力でその時代(とき)を生きた少女達の物語。

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