忍び街警備隊   完結

□忍び街警備隊 4
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勢いのある毎日に押されて流されて
自分がたまに分からなくなる。



【忍び街警備隊 4】


栞菜視点



私はもともとオリジナルメンバーではない。
だから、放りこまれた時の疎外感はとんでもなかった。

親にすら愛されなかった私が愛されるはずも無く
警備隊に入れられたときは、早く死ねるって嬉しかったのを

今も、覚えてる。


「栞菜!」
「えりかちゃん…?」

「なにやってんの!」
「…」

ある日、どうしても耐え切れなくなって
自分から殺されに行こうとした。

閉じた視界が更に深く濃くなった
おそる、おそる目を開けると大怪我をした


えりかちゃんが私の前で険しい顔をしていた。


「…許さないから」
「え?」

「自分から…自分から死ぬなんて許さないから!」
「え、えりかちゃん」


険しい顔をして怒ってる。
よく、言うことを聞くいい子だねっていわれてきた。

私のそんな癖を見抜こうとはしてくれなかった。
でも、えりかちゃんは私のために怒ってくれてる。


「栞菜!えり!」
「舞美ちゃん」

舞美ちゃんが応援に来てくれて、えりかちゃんを守りながら
戦ってくれる。

私も、死ぬつもりはないから全力で戦った。
思った以上に弱かった相手は5分も持たずに倒れた。


「栞菜」
「なに?」

えりかちゃんを背負った舞美ちゃんが真剣な顔をして
私を見る。

「私は栞菜も家族だと思ってるんだけど」
「…」

「迷惑でも嫌でも私たちは大事な存在としてみてる…」
「…」


ほしいと、喉から手が出るほど欲しかった言葉も
いざ、言われてみるとすごく怖い。



「頼ってくれないでこうして危険に晒されてたらと思うと怖い」
「…わかんないよ」

「え?」
「本当は…本当はそう思ってなんかないんでしょ?」

「そんなわけないでしょ!」
「…」

「栞菜が死にたがってるのも知ってた…だけど…
仕事をさせないわけにもいかなかった…」
「知ってたならほっといてよ」


思っていたことがばれていた
その、恥ずかしさと悔しさと色々な思いが舞美ちゃんを傷つける


「栞菜は家族なの!誰も失いたくない…大事な家族なんだもん」
「舞美ちゃん…」

「いっ…あんたは」
「え、えり?」

「あんたはね皆に愛されてるよ?」
「…」

私のせいで大怪我をしたくせにやさしすぎる笑顔で
見つめてくる。

「怖がる必要は無いよ?℃-uteはすっごく暖かいんだから」
「ごめん…痛かったよね?舞美ちゃんも…ごめんなさい」


ふって笑った舞美ちゃんに手を引かれて
連れてかれる。

歩きながら話していたおかげもあってか思ったより
早く本部へついた。


そのあとは、医務室へ行って。
怪我が治ったえりかちゃんに初めてお尻をぶたれて。

色々と初めてづくしが沢山ちりばめられていた日々を過ごした。
今は死にたいとは思わなくなった。


仲間…いや、家族のためならいつでも死ねるけど
自分の命は惜しくない。


でも、出来る限りは死にたくないし
皆で笑い会える未来を願うようになった。




愛理がひょこっと顔を出した。


「栞菜〜ご飯だって…アルバム?」
「うん見る?」

「うん!」
「この、愛理幼いね」

2人できゃっきゃ言いながらアルバムを見た。
なんで、こんなこと思い出したんだろう…


こう見えても意外と悪戯好きな愛理と
怒られる要素たっぷりだった私はよく叱られた。

「栞菜?大丈夫?」
「へっ?」

愛理の手が目元の涙をぬぐってくれた。
どうやら、私は泣いていたみたいで。


「なんか、あったら言ってよ?」
「ありがと、ご飯いこっか?」

やさしい子なんだ、自分を犠牲にしてでも
他人を守ろうとする。

メンバー皆、そうだけど。
一番、儚い感じがして急に居なくなりそうで
不安に駆られる事が多々ある。



大きな扉を開ければ皆がそろってる。
笑顔を向けてくれて、招いてくれる。



どんなに願っても手に入らなかったものが
毎日心の中へ入ってくる。

当たり前じゃなかった毎日が当たり前に切り替わる。
でも、忘れない。

知ってるから、痛かった日々を
知ってるからこそ忘れないようにしようってこっそり

胸に誓った。

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