忍び街警備隊   完結

□忍び街警備隊 2
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チームのリーダー(サブも入る)で編成されたグループがある
SS任務でしか出動しない、危ない任務担当って所だと思う。


SSが入ってきて現場に向かえば酷い有様。
沢山の人が死んでいる。


よく見れば、他の街の警備隊のようだった。
プロがこんな酷い殺され方をする相手。


「これは…酷い」
「うっ…うぇっ」

「和田ちゃん大丈夫?」
「…はい」

今までで、一番危ない任務かもしれない。
皆が凍り付いている。



佐紀が和田ちゃんの背中をさすってる間に
情報収集に励む。



「舞美…引き返す?」
「…戻ったほうがいいかも」

「だよね、どう説得する?」
「無駄死になるとしか言えない…大人しく怒られよう」


えりと顔を見合わせる。
反対はされないだろう、本部に戻れば怒られるだろうけど。


皆の方を向いた瞬間、横を何かが通り抜けた。
すぐに、刃がぶつかり合う音がした。


私に向かってきた刃をえりが弾いてくれたようで
私を庇うように前にでる。


「ほぉ〜楽しませてくれるじゃないか」
「不意打ちなんて、ふざけんな!」

「ルールもなにもないだろ?」
「でも、卑怯だ!」


みんなが声を上げる。
でも、相手の冷たい一言で言い返せなくなった。

「卑怯か、最高のほめ言葉だよ」


その後、気がつくと立っているのは
私とえりと佐紀だけだった。

素早くて姿すらまともに見えない相手に四苦八苦
えりが刺されそうになった瞬間、栞菜が飛び込んだのが見えた。






___ ____ ______







「さて、で、どうして飛び込んだの?」
「…つい」

「つい?愛理に同じ事で叱ってた栞菜がつい?」
「うっ…」

「助けてくれて感謝してるけど…死ぬなんて許さないから」
「えりかちゃん…怖いって…」



目の前には怖い顔したえりが栞菜を睨んでる。
伝統ってか、チームごとの地雷とでも言うのかな。

同期のベリーズ工房なんかは任務重視派
仲間が任務で命を落としたときに全員が泣かずにお墓を見つめていたのは


とても、印象に残っている。



それを見たえりは今まで以上に仲間を大事にするようになった。
でも、こんな風に叱ってるえりが一番仲間のために死ぬことを躊躇わないのは

私はよく知っている。



「まって!明日も任務あるからっ」
「待たない」

ピシャン!

「いたっ!むりっ痛い!」
「あんたが飛び込んでうちがどれだけ吃驚したと思ってんの?」

ピシャン!

「うっ、だって…危なかったし…」
「後ろに舞美がいたでしょ」

ピシャン!

「気が付かなかったんだもん!」
「それこそ、鍛錬が足りない!」

ピシャン!!

「…ふぇっ…やだぁ!」
「もう、心臓止まるかと思った…」



たぶん、もうしばらく掛かるだろうから
愛理の様子を見に行くことにする。


部屋に入れば顔をしかめて包帯を巻いてもらってる
愛理と頭と肩に包帯を巻いて横たわる千聖が目に入る。


「舞ちゃん、愛理は大丈夫?」
「うん、傷は深くないよ」

「…千聖は…」
「このくらいなら、すぐ治るよ」

「千聖には起きたら沢山、お礼言わないと」
「どうなるかわかって突っ込んだんだろうから…気にしないの」

「でも…」
「その気持ちだけで千聖は喜ぶよ」


愛理の頭をやさしく撫でてあげる舞ちゃんは
とてもじゃないけど、年下には見えなかった。


「ごめんね、こんな大惨事に巻き込んで…」
「舞美ちゃん…私たち自分で決めてやってる事だから」

「で、でも…」
「千聖が怪我するのもわかってたしね…こういうことよくあるから」

「…でも、怖かったでしょ?痛かったよね…」
「…泣かないでよ、舞美ちゃんが背負うことじゃないから」


いつのまにか、流れていた涙を拭われて少し恥ずかしかったけど
きっと、こんなにしっかりした子だから千聖は安心して真っ直ぐに走れるんだろう。

話していると、千聖がゆっくり起き上がるのを舞ちゃんが阻止していた。


「…っつ…いてて…」
「もう、また無茶ばっかしてさ…」

「あ、舞ちゃん…ごめんね」
「えりかちゃんに、叱られてこい」

「そ、それは…」
「舞美ちゃんも愛理も泣いてたよ」

そう言われて千聖が慌てて振り返った。
つい、さっきまで泣いてたから愛理も私も目が赤い。

「あ、あ…ごめん…」

すごく、申し訳なさそうに言う千聖をみて舞ちゃんが笑った。

「どっちかって言うと感謝されてたけどね」
「え?」

「うん、心配はしたけど、ありがとう千聖」
「ありがと、でも、舞ちゃんの事も考えてあげなよ?」


包帯が痛々しい千聖だけど、優しく舞ちゃんの頭を撫でる。
さっきは、大人びて見えた舞ちゃんも千聖にかかれば年相に見える。


「今度こそ…死んだと思ったじゃん…」
「ごめん、ごめんね」

「置いてかないでよ…」
「まだ、死んでないよ」

泣きながら千聖にしがみつく舞ちゃん
見てたら、いけないかなって愛理と一緒に部屋を出る。


「ねぇ、愛理…ありがとね」
「え?」

「今日は愛理にえりに…沢山の人に助けられちゃった」
「…舞美ちゃんが生きててよかった」

微笑むと言うのだろうか?
無邪気な笑顔じゃなくて微笑む愛理のお尻を軽く叩いてやった。


「いたっ、なにすんの」
「感謝してるけど、自分を大事にしなきゃだめだよ?」

「…分かってるよ」
「可愛いなぁ、愛理は」

ぐっと、肩を抱いて引き寄せる。
真っ赤な顔をしてるけどあんな表情も出来るのかと吃驚した。

人の成長は早いんだね。
腕に巻いてある、包帯を見ながらもう、怪我はさせないと誓った。

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