忍び街警備隊   完結

□忍び街警備隊 1
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真っ白な月と青い夜。
砂漠の向こうを見てみたいんだ



【忍び街、警備隊】




千聖視点



もう、旅を始めて随分と経つ。
相棒の舞ちゃんと共に新しい地へ来た。

見渡す限り砂漠
初めて来たこの地に当然の如く迷って舞ちゃんにボロクソ言われていた。



「…地図見ても所在地が分からない」
「…だから砂漠はよそうって言ったのに」

「と、とりあえず、テント張って食事の支度しよう!」
「…平らな場所まで出ないと危ないから」

「…はい」


そう、舞ちゃんはしっかりしてる。
迷いに迷ったこの場所も、でこぼこで嵐が来たら埋まる。

しばらく、歩いていたら平らな場所が出てきた。



「この辺は?」
「うん、ここでいいや」

テントを張ってちまちま使っている枝も
これで、そこを尽きた。

「…これで、明日から火が使えないね」
「うん」



焼けたチーズをパンに塗る。
これだけだけど、とってもおいしい。


「明日からどうしようか…」
「…」

「食料も薪も底尽きたし」
「ごめんなさい…」

「うんん、千聖のせいじゃないから」
「…街でもあればね」

「…こんな、砂漠にあるわけないじゃん」
「だよね…」


パチパチと薪が火を散らす。
星空、薪の音、旅をして好きになったものは沢山ある。

とりあえず、寝るって言って寝た舞ちゃんと一緒に寝るべきか
迷ったんだけど、なんか寝れないからもう少し薪の番をすることにした。





「こんなところに居ては危ないですよ」
「…」

「ですから、賊が来たら身包み剥がされ」
「…なんで、人が?」

「へっ?」


気のせいだと思ったけどバンバン話しかけてくるこの人。
なんか、堅い服を着ている。


テントが開いた音がした、警戒した舞ちゃんと目が合った。


「…どなた様ですか?」
「あ、にんにん街警備隊の隊長を勤めさせていただいてます。矢島です」

「…千聖」
「…うん」

にんにん街といった。
街が近くにあるということだ。

私と舞ちゃんは矢島さんに飛び掛った。


「矢島さん、困っていたんです」
「どうか、助けてください!」

飛び掛られて困っていた矢島さんは笑って案内してくれた。




「…こんな近くに町があったなんて…」
「まったく、気がつかなかった」

「そりゃ、そうですよ…砂漠に街自体は少ないですが
ここは、少し特殊な場所なんですよ?」

「そうなんだ」
「特殊?」

「はい、街の名前の由来が事実に関係しています」
「にんにん?」

「はい、砂嵐で街出身者以外は知らない方が多いのですよ」
「…にんにんって忍忍?」

「その通りです、別名、忍びの町と呼ばれています。」
「そうなんだ」



矢島さんの話によれば警備隊はそんなに大きくないらしい
けど、少数精鋭でやってるらしく、そこそこ有名だと聞いた。



「最近、賊が勢いを増していて危ないんですよ」
「そうなんですね」

「だから、見かけると街へ案内しているのです」
「本当に助かりました」

「いえいえ、大きな町なので食料など補充していってくださいね」
「はい、そうさせていただきます!」


そこで、矢島さんが目を細めた。
その瞬間、首に何かが来そうな感覚があったため

回し蹴りをしたら、後ろで男が伸びていた。


「えっ?え、え、」
「あ、やべっ」

「千聖、またやったの?」
「ごめん、つい」

「え、えっと…またとは?」


驚いている矢島さんに説明する。
旅をする家系、島育ちの私達は武道は一通り叩き込まれている。

呆れてる舞ちゃんもそれなりに強い。

背後に立たれるとつい、癖で体が反応する。


「って、訳なんですよ」
「それは、頼もしいですね」


ニコニコとそして、何かを思いついたらしい
矢島さんはある提案をした。


「そうだ、なんなら少し警備のお手伝いをしてはもらえませんか?」
「警備?私達が?」

「はい、無理にとは言いませんが、金貨は払いますよ」
「そ、それは…是非お願いします」


食料調達の金子稼ぎで数ヶ月居候することになった。
警備隊には宿舎と本部があるらしい。


本部へ行って矢島さんが説明してるのを眺めて
宿舎まで玄関のあたりで音がすることに気がついた。



「…すいません、少々待っていてください」
「「はい」」

呆れた様子の矢島さんが行ってしまって
舞ちゃんと二人で耳を澄ます





「もう、いい、もういいってば」
「よくないでしょ、何回目?」

「…だって」
「無茶をするなと何度言えば分かるの愛理は?」

「ひゃっ!いたいってば!」
「痛くしてんの」


ピシャン、ピシャンと音の後に女の子の声がする。
その後、矢島さんらしき声がした。


「あ、舞美ちゃん!助けて!」
「あ〜随分と厳しくやられてるね」

「当たり前だよ、無鉄砲すぎるんだもん」
「でも、お客様がいらしててさ」

「え、それは…どうしよう」
「そろそろ、解放してあげてくれない?真っ赤だし」

「…次、やったら百叩きだからね」
「いたっ!…はい」


_____ ____ _____





「初めまして、有原かんなです」
「…鈴木愛理です」

今日、夜勤の2人らしい。
苦笑いして戻ってきた矢島さんに通されて

紹介された仲間だった。

「私の隊は5人居るんだ」
「期間限定さん?」

「そうそう」
「面白そうだね」

このチームは℃-uteと言うらしい。



愛理と名乗った少女は目が赤い。
きっと、さっきの叱られていた少女はこの子だろう。


そんなこんなで、数週間がたった。
大分、打ち解けてきてなんだか楽しい。


「ねぇ、愛理って普段どこに居るの?」
「普段は稽古で町外れに居る」

「そっか、えらいね」
「いや、普通だから」

「舞ちゃん、それじゃ千聖が普通じゃないみたいじゃん」
「…普通じゃないでしょ、稽古嫌いなくせに強いとか」


「お取り込み中、悪いけど、出陣だよ」
「あ、かんな!」

「舞美ちゃんは?」
「隊長5人が危ないから出陣なんだけど…」

「そっか」
「そろそろ、行こう」



さっきまで、ふざけていた愛理も仕事には真剣で
刀を携えた姿が別人のようだった。

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