℃海賊団   完結

□℃-ute海賊団12
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おおきな風との戦い。
見える絶景と最後の誓。



【℃-ute海賊団 12後編】


舞ちゃんの策は風を使って押し返す事だった。
でも、それには力を全開にする必要があった、この長い通路

解放しっぱなしとは体が持つんだろうか。


「駄目だよ、体が壊れちゃうよ」
「大丈夫だよ、船長…舞の存在が試されるときなんだから」


なんでそんな刹那的なの。
これは、だめ。

絶対、おかしくなる。


「船長の言うとおりだよやめようよ」
「大丈夫だって」

「舞…危険すぎるよ」
「愛理まで…平気だって」

「200mはあるよ?出来る?」
「うん、余裕だって!」


「ま、舞ちゃん…」
「船長だって無茶したじゃん?」


そこを出されると痛い。
言い返せない。


「舞だって海賊だし…なにより皆のための無理なら
喜んでしたい」


そこまで言われたら任せるしかない。
それがどんなものかも知らず私は舞を送り出した。




地図を片手になっきぃから報告
ここの大きな岩を砕けば道が出来るということらしい。



「どうする?ちっさーのほうがいいかな?」
「うん、モーニングスターのほうが砕くの楽だと思う」




決戦は1時間後。




一人で淡々と風を変化させている。

「みんなここに並んで」

固まって並んだところ舞ちゃんの風に包まれた。


「うわぁ…すごい」
「風の中ってこんな見え方するんだね」



そして、一番前に立ったちっさーがぶんぶん武器を振り回している。



「舞、準備はおっけー?」
「うん、いつでもいいよ」



そういった瞬間、ものすごい勢いで叩きつけて
岩はあっという間に崩れた。


「うわっ」
「ちっさーちゃんとつかまって」



舞ちゃんの風に包まれていても辛いくらいの風が巻き起こる。
ちっさーなんか浮き上がってたし。


「なっきぃ…大丈夫?」
「うん、平気」


愛理とちっさーを掴んでるからどこにつかまってもらおうかと
思ったけどちっさーの反対側の手を掴んでるから平気みたいだ。


前を見るとものすごい風をまとって押し返している舞ちゃん。
ところどころ切れて血が出てるなと思っていたら

目の前で風の刃で傷ついていく様が見える。


右手に急に痛みが走ったから隣を見ると
ちっさーが強く強く手をにぎっていた。


「ちっさー?」
「…くっ」


この子はこの子で葛藤してるんだろうなと思う。
それと同時に爆発音がした。

「えっなに?」
「きゃっ!」

愛理に抱き着かれてにやけてる場合じゃなかった。


見ると、舞ちゃんが風を押し出した音だった。

風がやんで普通の洞窟になった。

真っ先に走って行ったのはちっさー。



「まいっ!」
「だめっ!走って」


そう、叫んだ舞ちゃんをものすごい勢いでおぶって出口までダッシュした
ちっさーに続く。

洞窟を出てすぐに大きな風が通り抜ける。


「こ、こわっ」
「やばかったね…」



広いところに舞ちゃんを寝かせて
愛理が一目散に駆け寄る。


「ごめんねーちょっと痛いかも」
「うぁっ…いっ」


10分程の治療をして少し休ませる感じに
私たちも疲れたってことでお昼休憩を取ることになった。


「ちっさーこれ美味しい!」
「ふふーん、だろ〜?」

ちっさーのごはんはとってもおいしくて
痛みでうめいてた舞ちゃんも食べることが出きて

ちっさーもご満悦でよかった。


「あとは10分くらい歩いて到着だよ」
「あと、少しだね」


舞ちゃんは私がおぶって山のふもとまでやってきた。
この洞窟にある宝が私たちの求めていたもの。


そして、これから狙われ続けるもの。




数日後。



帰りは思う以上に簡単に帰れて今は船の上。


「船長」
「愛理…舞ちゃんはいいの?」


白衣から赤い海賊着に着替えた愛理がいた。


「うん、治療自体は終わってるの…千聖が看病してるし」
「そっか、おいで愛理」

「ふふ、うん」

嬉しそうにテクテクと歩いてきた愛理をぎゅっと抱きしめた。
迷いが飛びそうになるほど幸せ。


「…船長」
「ん?」

「…よからぬこと考えてるでしょ?」
「え?…そんなことないよ」


少し寂しそうな顔をする愛理に胸が締め付けられるけど
何をすべきかどうすればいいか


わかってるんだ、だけど…感情で動きそうになる。
駄目だってわかってるのに、手放したくないと思ってしまう。



この航海もあと一か月くらいで終わる。



それまでに、しっかり答えを出さないといけない。
メンバーは無事に送り届けるのが私の役目だと思ってる。


「舞美ちゃん」

名前を呼ばれて振り返ったら頬へキスされた。

「え、あ…愛理っ」
「ふふ…戻るね」


あっさりと部屋へ戻ってしまった。
視界をまた海へと戻す。


色々あったなとか思い出すとメンバーに助けられてる。


…浸ってる場合じゃなかった。


「なっきぃ!巨大生物確認面舵いっぱーい!」
「了解!巨大生物確認、面舵いっぱーい!」


見張り台にいるなっきぃにそう伝えるとすぐに船体が動き始める。
方向転換をして、しばらくした頃、巨大生物が姿を現した。

この、海域は多い、もう見れなくなると思うと少し寂しいかも
最初は怖かったけど。



―――――――――――



街へ着くと皆おかえりって言ってくれた。
それが嬉しくってちゃんと報告もした。


ごちそうも用意してもらえてみんなでワイワイ食べた。
そう、だから気づかなかった。


船長がいないことに。


朝、残された手紙と大量の金貨を置いて一人で
旅に出てしまったんだ。


「こんなの…こんなのないよ」
「…」

「あれ?愛理は?」


なっきぃの言葉にはっとする。



「あれ?愛理は?」

外へ出て見渡しても愛理の家へ行ってもいない。


「愛理、付いていったのかな?」
「もう、なんか舞美ちゃんと愛理らしいけどね」



千聖達は金貨のおかげで村人に今まで以上に重宝された。


怒りも数年もすれば冷めてきて。
3人で愛理と船長の帰りを待つ日々が続いていた。



――――――――――――


長い廊下を歩いていてこれからを迷っていた。
時間はあるし、国を周るのもいいかもしれない。

ブリッジの扉を開けるとそこには愛理が佇んでいた。



「え?愛理!?なんでここにいるの?」
「舞美ちゃんの考えてる事くらい…わかるよ」



少しボロくなった赤い海賊着を着た愛理は綺麗だった。
あの新品だった服もこんなにボロボロになるほどに一緒に頑張ったんだって

思えば思うほど泣けそうで、つらかったんだ。


「ま、舞美ちゃん?」
「あいりぃ…」

ふいに零れ落ちた涙を見て慌てる愛理が愛おしくて。
苦笑いしながら拭ってくれる。


「一人じゃ行かせないからね」
「うん、一緒に…行きたい…」


ずっと言いたかった言葉。
我慢しようと思っていた言葉が漏れる。


「本当に…皆はいいの?」
「うん…島で暮らしたほうがいいに決まってるもん」


船を動かすと全自動のためあちらこちらから機械音がする。


「のんびり旅をしよう」
「うん」


全自動と手動が選べる船に、この辺は危険が特にないから
全自動にしてある。





愛理から袋に入っている青い何かをもらった。


「はい」
「これ…なに?」


青い海賊着。


「少し型が違うけどかっこいいでしょ?」
「うん」

「皆の分はちゃんとおいてきたから見てると思うんだけど」
「愛理…ありがとう」


着てみると新しくなった気がしてすべてがリセットされる感じがした。


「愛理、似合うよ」
「舞美ちゃんも似合ってるよ」


剣を携えて、帽子をかぶり直した。
愛理を見ると同じように全部セットし終えた。


「愛理、いくよっ!」
「ま、まってよぉ!」


甲板へ出て海を見渡す。
これからの冒険へ胸を躍らせる。


「愛理、どこへいきたい?」
「大陸、行きたいな」

「よしっ、大陸で買い物でもしようっ!」
「ま、舞美ちゃん…早いってぇ!」





次に会えるのを夢見て、私達は旅へ出た。




おわり

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