℃海賊団   完結

□℃-ute海賊団 8
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穏やかな海。
のんびりとした空気漂う。


【℃-ute海賊団 8】


けど、海はフィールドにするには避けたい場所だった。
底のない、水溜り。


隠れようもなく、狭い。
船はどうしても予測不能の揺れを繰り返す。



「どれが一番使いやすかった?」
「やっぱり、剣かな…あ、でもモーニングスターがやっぱり使いやすいかも」


船長と千聖の戦闘後の定番の会話。
ここ、最近はかなり、戦闘する事が増えて

戸惑いも大分前に消えたと思う。


「なっきぃ、見張りだれだっけ?」
「舞じゃなかった?」

「そうだっけ?ありがと」
「うん、いってらっしゃい」


そういって、軽い身のこなしで見張り台まで登る舞を見届ける。


今までは怪我とかもせずにやってこれたけど
それは、運がよかったからで、考えれば考えるほど

次が怖くなる。



「次はこの海域か…渦がやっかいだね」
「そうなんだよね」

方角を見ながら舟を動かす部屋。
地図を広げてみていれば、私の頭の中を

読んだのか、不思議に思えるほど杞憂ポイントを
突いてくる船長。


「でも、渦が使える」
「でも、難しいよ?」

そう、顔を見て言えば不敵な笑みを浮かべる船長。

「うん、でも出来なくはない」
「そうだけど」

「絶対、仲間は死なせないからね!」
「う、うん」


そういって、部屋を出て行った。



変わってないようにも見えるけど
実際、戦闘を重ねて一番成長してるのは舞美ちゃんだと思う。

変わったってより、元から持ってるものが上手く使えるように
なっただけかな…。


次が千聖。
とにかく、順応性が高い。


「海賊船発見、繰り返す、海賊船発見」
「了解」


慌てて、外へ出れば皆、もう戦闘準備出来ている様子で
ピリピリとした気迫を感じた。


極力、殺したくないって言う船長の下、私達は急所を外して
戦うけど、最悪の場合は躊躇なく殺す。

その役割を最初に背負ってくれたのは千聖だった。



「舞ちゃんっ!」
「へっ?」

後ろから、襲い掛かる男。
その刹那、金属がぶつかり合う音がする。

「くそぉぉ!」
「千聖っ!」


相打ちだった。

使いやすいって言っていた
モーニングスターを放り投げて、腰にある剣を抜いた。


「うわぁぁあ!」
「ぐがぁっ!」


男に止めの一撃を与えると同時に男と2人海に放り出された。


「下っ、巨大生物が居る!なっきぃ、舵をとってっ!」
「うそっ…」


「千聖っ!」
「ま、舞ちゃんあぶなっ」

最前線で戦っていた愛理が機器を知らせてくれる。
放心状態になっていた私の変わりに船長が部屋まで走っていった。



その瞬間、ありえないほどの風が船の近くで巻き上がる
同時に千聖の体が風に乗って舞い上がった。

「まいちゃん、危ないって!」
「このままは、いやっ!」


愛理が止めるも振り払って風の中へ飛び込んでいった。

「舞っ?!」
「なっきぃ、あぶないっ」


揺れる船体で弾き飛ばされそうになる。
愛理と共に上を見上げると千聖の体を抱きしめている所。


その下には、先ほど愛理が見つけた巨大生物。

「…愛理っ」
「大丈夫、舞ちゃんなら大丈夫だよ」


その瞬間、巨大生物の周りの水を竜巻で巻き上げる。


「えっ」
「す、すごい」

怖いほどの音を立てて巻き上げる水は圧巻の一言。
その竜巻から弾き飛ばされて空を舞う千聖と舞。

船への着地の瞬間軽い風を起こして千聖を助け出した。

「つっ!…」


自分まで力をまわすほど余力がなかったのか
舞は叩きつけられた。


「舞ちゃんっ」
「舞っ!」

いつの間にか、戻ってきていた船長。


「愛理、舞ちゃんは大丈夫?」
「…全身打撲はしてるけど…頭に異常はない」


テキパキと見ていく愛理。


「じゃー舞ちゃんを部屋に寝かせてくるね」
「うん、ありがとう」


舞のおかげもあり千聖は思うほど重症じゃなかった。
今は、包帯を巻いてるのを眺めている。

「ねぇ、愛理」
「なーに?」

「舞さ…暴走してたね」
「うん」


愛理は、寝ている千聖に毛布をかけて
こっちを向いた。


「船長に相談しよ」
「うん」


ドアを開けるときょとんとした船長と目が合った。

「船長、舞ちゃんの件なんだけど」
「舞ちゃん?」

「今日、暴走したでしょ?」
「うん」

「正直ね…息を飲んだ」
「うん、私も」


いやいや、船長がそんなんでどうするの?
愛理が息を飲んだならほかに言い方があるでしょ。


「とっても強いから…コントロールを身につけさせたほうがいいと思って」
「最初からそのつもりだよ?」

「え?」
「まさか、あんなでっかいの巻き上げれるとは思わなかったけど」

最初から、舞をしっかり仲間に加えてたんだ。
昔に、舞が嘆いていた事を思い出した。


弱いから強くなりたい。


「風と水を扱えるなんて最強でしょ?」

そう、不敵な笑みで笑う船長に私と愛理は同意した。
それから半年、風の力を最大限に使って船を蹴散らしたりする

舞の姿があった。


小悪魔のような笑みで風を扱って水を巻き上げる。
こうして、私達は次のステージへ確実にステップアップしていった。



「そろそろ…ミリオン海へ行こう」
「うん」


旅を始めてもう2年の月日が流れていた。




つづく

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