℃海賊団   完結

□℃-ute海賊団 7
1ページ/1ページ

なっきぃの提案の意味を深く考えなかった。
戦う必要がどこにあるんだろうとすら思った。

皆が怪我をするのは、本当は避けたかったから。



【℃-ute海賊団 7】




ただ、戦う事を提案していたのは舞美ちゃんで。
なっきぃは一拍おいてからうなずいた。


それは会議が始まる前の話。
戦闘の件はなっきぃが切り出していた。



会議は終わったけれど
舞の心はもやもやしたままだった。


「舞ちゃん」
「…千聖」

今日の見張りは舞で少し頭を冷やそうって思ってたら
いつのまにか、千聖がいて。

少し混乱していて。




だからか、千聖だからかもしれないけれど
舞は愚痴ってしまった。


「戦いたくないな」
「ん?」

「出来るなら、戦うのは回避したい」
「うん、千聖もそう思って船長に言ったらさ」


吃驚した、同じ事を思っていたんだって思う前に
もう、船長へ直接言っていたんだから。


「うん、船長なんて?」
「ミリオン海は…激戦区だから今のまま行ったらひとたまりもないって」

「え?」
「だから、辻斬りみたいに片っ端から経験をつむ必要がある」


辻斬り?
そんなことすんの?


「辻斬りはオーバーだけどねって笑ってたけど」
「そ、そうだよね」


それを聞いて、ほっとした。
舞美ちゃんならやりかねない。


「でも、売られた喧嘩は全部買うらしい」
「なんか、舞美ちゃんぽいね」

「でしょー?なっきぃが横で苦笑いしてたよ」
「なっきぃは何も?」

「全部賛同してた」
「そっか」



――――――――




会議が終わった後、舞ちゃんが浮かない顔をしていたのも
分かってた、けれど聞いておきたいことがあった。


「船長」
「ちっさー?」

「うん、聞きたいことがあって」
「なに?」


「どうして、戦闘を避けないの?」
「それは、私が言ったこ」


なっきぃが口を挟んでくるけど、そんな手にはのらない。


「知ってるよ、舞美ちゃんが提案した事くらい」
「…」

「うん、私が提案した」


あっさり、ニコニコと認める。


「なんで?戦闘して、勝てればいいけど負けたらどうするの?」
「…うん、困るね」


いやいや、そうじゃなくて!


「そうじゃなくて!」
「え?」

「メンバーが死んだり、怪我したり…そういうことだってあるでしょ?」
「そりゃ、ないとも言い切れないね」


なんで、こんな平然としてるんだろう。
ここ、大事じゃない?


「舞美ちゃんはメンバーが死んでも平気なの?」


思わず言ってしまった一言


「そんなわけないでしょ!でも今、経験を積んで置かないと…
ミリオン海へ行ったら全滅だよ」


船長は声を少し荒げて反論してきた。
少し吃驚したけど、言ってる事はもっともだから何ともいえない。


「あ、そうか…」
「今は出来るだけ戦闘の場数を踏んで戦略を練ったほうがいい」


「そうだね…ごめん」
「うんん、戦闘は避けたいの当然だよね」


その時の舞美ちゃんの顔が優しい微笑みだったけど
どこか、寂しげに見えたんだ。


「あと…これ舞ちゃんには内緒ね」
「ん?」

「舞ちゃんの風使いとしても経験をつませてあげたいの」
「…舞ちゃん?」

「うん、風を操れれば、水も操れるから」
「分かった、言わない」


そういえば、舞美ちゃんは太陽のような笑みを向けてくれた。



その後、舞ちゃんのところへ。
少し話せば出てくる愚痴に、同じ事考えてたんだって

少し嬉しくなって。


船長が言っていた事を伝える。
もちろん、内緒の話は省いて。



「でも、売られた喧嘩は全部買うらしい」
「なんか、舞美ちゃんぽいね」

「でしょー?なっきぃが横で苦笑いしてたよ」
「なっきぃは何も?」

「全部賛同してた」
「そっか」


そっかって言った舞ちゃんの顔は最初と比べて
緊張感がなくなっていたから、もう大丈夫。


「なんか、舞美ちゃんらしいね」
「うん」


夜も更けた見張り台での事。
なんか、部屋に帰るのもなんだから今日は残ろうかな。




舞ちゃんの声に現実に引き戻される。



「あれ、愛理?」
「え?」

甲板で空を眺めてたと思ったら水面を眺め始めた。

「何やってんだろ」
「…なんだろうね」

こっちが見てる事に気がついたのかクルッとこっちを見た。

「まいちゃーん!」
「なーに?」

愛理の声は信じられないくらい聞き取りやすかった。
普段からは想像もつかないくらい。


「面舵いっぱーいって船長に言って!」
「え?」

「はやくっ!」
「あ、うん」

そのやり取りの最中に千聖が舞美ちゃんに伝える。


「愛理が何かを発見、面舵一杯!」
「了解、面舵一杯、舞と愛理に振り落とされないように伝えて」

そう、なっきぃの声がした。


「愛理、しっかりつかまって!」


返事が聞こえる前に船に力がかかる。
重い力に持っていかれそうになりながら必死につかむ。



さっき、船が居た場所でなにか大きな生物がはねた。
え、なにあれ。


まだ、船は走っているけれど。
大きすぎる。


「なっきぃ、スピードあげてっ!」
「わかってる!これでも全速力だから!」


千聖達はまだいい。
問題は甲板にいる愛理。

水面は生物のせいで荒波立っていて、嵐かってくらいに
船を揺らされる。

そのせいで、愛理がさっきから、水をかぶっている。
あれ、手を離したら助からない。


「愛理、やばくない?」
「…やばい」


そういった瞬間、船長の声が聞こえた。


「愛理っ!」
「え?…まい、みちゃ…ん」


愛理の元までダッシュして→愛理をおぶって→室内までダッシュ。
を、すごい速さでやってのけた。


水をものともしない、危ないでしょ!って事をしてたけど。
2人共助かって一安心。


「さっきの船長かっこよかったのに」                     
「ん?」   

「また、無茶な事したね」
「そうだね、でもあれが舞美ちゃんだね」


そういう舞ちゃんの顔が嬉しそうだったから。
まぁ、いっか。




―――――――――



昔、何かの本で読んだ。
世界に広がる海には見た事もない生き物が居るって。


そんな話、信じてなかったし。
なにより、どこかってどこ?って思った記憶があった。



大体、そんな伝説とか言われる生物が居たら怖い。
そんな大きさの生き物に勝てるとは思えないし。



「…え」

けど、私が目にしたのは紛れもなく未知のなにか。



「ゆ、ゆめ…じゃないよね」
「あ、いり」


目が覚めるとベットの上にいた。
隣で寝てるのは、舞美ちゃん。

私の部屋にしては広いなと思ったら
船長室だったみたい。


昨日、濡れた海賊着は干されていて。
変わりに質素な町に調達しに行くときに着る服を着せられていた。


ベットの上に上半身だけ起き上がらせていると
寝ぼけた舞美ちゃんがぎゅっと抱きついてくる。

頭を撫でてあげると少しくすぐったそうにして。


「昨日は、ありがとう」

返事はないけど、少し笑った気がする。
もう一度、寝よう。

舞美ちゃんに寄り添ってまぶたをとじた。




つづく

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ