BOOK-U

□どうしようもなく。
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しとしと、と



細かな水の粒が
次から次へと窓ガラスに叩きつけられ
名残惜しく伝っては落ちていく

それはあまりにドラマチックな光景で
ただ安っぽかった





瞼を下ろして
もう、このまま無かったことになっていればいいのに



この心も
この性質も

全部最初からゼロに戻して



そうして2人で
普通の愛を。





ソンギュは現実から逃げるように
瞼を下ろそうとした

しかし
いつの間にか乾いた涙が皮膚に張り付いて
それは叶わない

ソンギュの瞳には
疲れ切った顔のウヒョンがひたすら映される





「ヒョンは、
……あんたは

本当にどうしようもない男だね」





ソンギュ同様に濁ったウヒョンの両目が
深く沈んだ漆黒が
じっとりとソンギュをとらえる




「1人で勝手に背負い込んで
馬鹿みたい
何も分かっちゃいないくせに

そんなんじゃ
俺はどうなるわけ

そんなんじゃ、
……報われないじゃん」





眉を下げて
唇の端を持ち上げて

無理矢理貼り付けた表情は当然不自然だったが
紛れもなく“笑顔”に違いなかった

ソンギュのためだけに作られた笑顔だった





「馬鹿野郎」





綺麗だと
可愛らしいと
愛らしいと

力無く笑うウヒョンを見て
そんなことを思ってしまう自分は

やっぱりどうしようもないのかもしれない







窓を打ち付けていた雨は止み
ようやく顔を覗かせた太陽の光がまっすぐ部屋に射し込む

ウヒョンの手首に巻き付く手枷が
鈍く反射した










どうしようもなく。
(この鎖は、まだそのままで)
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