BOOK-V

□Wake-up!!!
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優しい彼
いつもふわふわと笑って



その度に

何度も
何度も
何度も

もう笑顔しか
その顔に浮かべられないのかと
心配したけれど





僕の心配なんて
必要なかったみたいだね





だって
だったら

そんな
ぐっと眉を寄せて
さも不満だというような激しい表情はしない

見たことないし





「しつこい
めんどくさい」


「なんだよ、それ
ていうかお前は誰?」


「誰って」





あははは

乾いた笑い声が
僕と彼しかいない部屋に響き渡る



綺麗な顔

いつの間にそんな酷い表情が出来るようになったの



ああ、そうか
あの完璧な笑顔と引き換えに
手に入れたのか

それとも
器用にもその下に隠して
ずっと誰にも見せなかった?



どっちにしろ
君はもう君じゃない





「僕はオニュ以外の何者でもないよ
当たり前だろ」


「違う」


「何が?
ならお前は“オニュ”の何を知ってるの」





あ、



息をする暇さえなく
鼻と鼻が触れるほど至近距離で彼の顔を見る

あまりに近すぎて焦点が合わない



なんだよ

結局
綺麗な造形はぼやぼやと輪郭を失い
視界に収まりきらない





汗が
彼の顎から垂れて
僕の太股に落ちた

彼の瞳の中
様々な色の光が
まるで流れ星みたいに一瞬
横切る





「目覚めろ」


「は?」


「本当は気づいてる
誰が本物の“KEY”なのか

気づいてて知らない振りをして
変化を恐れるな
偽物の恐怖に屈するな

そうすれば
きっと
お前はお前になれるよ」





嫌だ
怖い
やめて





叫びだ

ずっと心の底に沈んでいた
二度と浮かび上がってくることのないように
錘まで付けて沈めたはずの



それらが浮かび上がっては
彼によって破壊されていく





どうしよう

頭が朦朧として
僕の意識なのに制御できない





でも
なんかいい感じだ





ゆっくりと
意識を手放す
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