ぶっく
□波紋
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風に誘われ、ゆらゆら揺れる水面。
そこに映る景色は滲んでいる。
森の中の湖は静寂に包まれていた。
昼間の動物はまだ動かず、夜行性の動物は眠っている。
そんな、自然の中に潜む僅かな瞬間。
そこにはを呑むような美しい光景が存在してるのだ。
木々と月と星と湖。
絵に描かれたようなそれらは、誰に見られることもなく刻一刻とその表情を変えていく。
時が止まり永遠に続くかのような時間。
しかし、それが長く続くことはなかった。
湖畔に現れる影。
人を乗せて運ぶことなど容易いだろう大きさ。キラキラと輝く銀色の体毛。知性と誇りに満ちた翡翠のような眼。
ーーーそこには、一匹の狼がいた。