小説

□海の呪い
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 海を渡る人々なら誰もが知っていることだ。広い海の一部に呪われた生物がすみついたという。そこを通る船は幽霊船となりあの世でさまようという話だ。
しかし、ひと繋ぎの大秘宝ワンピースが存在するこの世界に何があってもおかしくないのだ。
何を見間違えただけだろうとサカズキは航路を確認していた。
噂によるとこのあたりだが何の変哲もないただの青い海だ。何かが現れるような気配は全くなかった。
「センゴクさんも何考えてるんですかね・・・」ため息をつきながらサカズキの後ろからモヒカン男が近づいてきた。
「センゴクさんがあそこまで気にしてる事よ、しっかり偵察せんと・・・」そう言うと右手を上に上げた。その行動を見た部下たちは整列をし命令が出るのを待った。ふっくり船の先端に近づき船の下を見ていた。何か黒い影が近づいてきた。「し、衝撃に備えろ!」その瞬間船が黒い生物が現れ戦艦が流れる滝に乗って勢いよく海に落ちた。運良く逆さまにならなかったため安心していたが目の前の生物が神話に出てくるような姿をしていた。
巨大な馬の頭をしていたが後ろ側は魚とおなじ尾びれでその上に尾びれを持ち片手にやりを持つ巨人よりも何倍の大きさもある人魚だった。
あまりの大きさに海兵達は腰を抜かしてしまった。その場だけ空が暗く渦を巻いていた。
「我々の怒りを受ける哀れな人間どもよ!」そう言うとやりを戦艦につきさそうとした。その瞬間、馬の鳴き声と鯨のような鳴き声の混じった動物の悲鳴が上がった。
「さ、サカズキ大将!」見るとサカズキの腕はマグマに変わっていた。もとに戻ると右手から肩にかけて血に染まっていた。ドロドロと垂れる血、あの鳴き声をあげた生物の血だろう、鉄の匂いと腐った魚の匂いにモモンガは吐き気を覚えた。
息を切らしながらも攻撃を仕掛けていた。馬と魚の融合体を見ると両目が潰れていて血が海の中にたれていた。一滴だけでその海はその名のとおり血の海になった。
「わしの怒りは海の怒り!人間どもよ!審判の日が来るまでパンドラの箱の憎悪を受けそして死ぬがよい!」巨人の持つ槍がサカズキの体を貫いた。物理的攻撃ではないようだがそれを受けたサカズキは苦しそうに胸を押さえ込んだ。
「パンドラの箱の希望など何の役にも立たないことをおもしるがよい!哀れな人間どもよ!」そういい残すと消えてしまった。天候も変わり光のカーテンがうまれた。
「うっ・・・む、胸が・・・焼ける・・ゥッ」体を丸め苦しさのあまり目を開けることすらままならなかった。「は、早く!本部に連絡だ!」近くにいた海兵は礼儀正しく敬礼したあと走って行ってしまった。
モモンガは両腕を強くおさえるサカズキを横抱きにし医務室に向かった。
 ジャケットと手袋を外されベッドに横になっても苦しみを訴えてくるサカズキ大将の顔をみると右側のほっぺらへんが紫色に侵食されていた。
船医がサカズキのシャツを脱がせると押さえ込んでいる胸から肩右、右手も侵食されていた。
船のなかで出来ることを尽くしたがどれも効果がなかった。
「も、モモンガ・・・・水・・をくれ・・んか」赤い瞳は涙で輝いていた。
黙ってコップに水を注ぐとゆっくりと体を起こさせ水を飲ませてやった。「ッ・・・ハァ・・・ウッ・・」苦しそうにする彼女の背中を優しく撫でてやった。これが自分の唯一できることだった。
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