小説

□家族
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 「センゴクよぉ、ハクの部隊、昨日遠征から帰ってきたばっかりなんだからよ休暇ぐらいやったらどうなんだよ」
 ガープは煎餅を食べながら元帥の部屋にあるソファーに座っている。
 しかし、センゴクは書類を片付けている手を止めはしなかった。
 

 中将であるガープは弟子と同じくよくサボり、女と遊んでいる。そんなガープは昔から何も変わっていない。


「・・・やったさ、だがアイツが休むと思うか」
 ため息を漏らし、母親であるサカズキに似てしまった男に、サカズキと似たような接し方をしているセンゴクは、慣れているようだ。


 「あれ?お兄ちゃんまだ帰ってないの?」
ひょこっと現れたのは、サカズキのもう一人の子供であるシロだ。
 見た目はサカズキにそっくりだが、性格は明るく、笑顔がトレードマークだ。
 美人というよりは可愛い系だろう、これは亡くなった父親に似たのだろう。


 瞳はやはり赤だ。
誰も父親と同じ瞳の色をしていない。
 しかしセンゴク達は安堵していた。
病弱だった男のように体が弱くなく、サカズキのように強く凛々しいからだ。


 茶色い色で花柄のロングスカートをはき、茶色の長袖を着ているシロは重たそうに大きな紙袋を持っていた。
 

「よっ!煎餅くうかい?」
 嬉しそうに立ち上がり、目の前に煎餅を差し出すとシロは嬉しそうに”いただきます”と紙袋を下に置き両手で握り、上品に食べた。
 いつもと同じ、醤油味に海苔の煎餅にシロはニコニコ笑っている。
 

「ハクと会わなかったのか・・・それなら多分中将の休憩室か外の演習場だろ」
 センゴクは照れくさそうに、ペンのお尻の部分で頬をかいた。


シロは礼を言うと紙袋から二人分の弁当箱を出し目の前にいるガープに差し出した。
 ガープも笑顔で受け取り、礼を言った。


本部に泊まることになったり、夜遅くなると聞くと、野菜や米、肉もしくは魚のバランスのいい弁当を作って持ってきてくれる。
 料理の腕もよく、家の事は殆どシロがやっている。
 サカズキも料理は得意らしいがあまり作っているところなど見たことがない。


サカズキは海兵で忙しいく、家事や母親らしい事を全くできない事を申し訳なく感じているようだが、ハクとシロはそんなサカズキを恨むこともせず、ちゃんと母親としてみている。
 昔はよく遊びに行ったりとしたが、子供が年頃になるにつれ、どんどん忙しくなり相手ができなくなっていった。
 一日会えなくなると、心配でどうしよもなくなってしまうらしく、一日中そわそわしている。


「今日は会議があって遅くなるって聞いたから、これ食べてください!」
 お辞儀をすると、重たそうに紙袋を握り締め、中将専用休憩室に向かった。


 何度も来ているため、迷うことなくついた。

 ノックをすると、返事が聞こえたのでふすまを開け、中に入った。

まず目に入ったのは、驚いた顔をした兄であるハクだ。
 帽子もフードも外してあり、素顔が見えた。
 まだ30代だがどこか渋く見える。


「なんじゃ、シロか」
安心したように溜息を漏らすと、手に持っているトランプカードをテーブルに置き、シロに席を譲った。


「あれ?今日はモモンガさんとストロベリーさんだけですか?」
 残念そうに袋の中を見ると名前を呼ばれた二人は顔を合わせ”まぁーな”と返事をした。


せっかく全員分の弁当を作ってきたが、こういうことはよくある。
 シロは紙袋ごとテーブルの横に置き、一緒にトランプゲームを始めた。


「珍しいね、お兄ちゃんがほかの人と仲良くしてるの」
 そんな言葉にハクは”たまには・・・な・・”と呟き、あまり見せない一面を見せた。
 「本当・・・サカズキ大将とそっくりだな、昔は極悪級だって聞いたけど、そこらへんは似なくてよかった・・・」
 同僚よりも少し背の低いハクの頭をモモンガは乱暴に撫でると、シロもストロベリーも面白そうに笑っている。
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