小説

□家族
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 大将であるサカズキには二人の子供がいる。
 しかし、夫である人物はとある島を荒らしに来た海賊たちに殺され、残ったのはその二人だけだった。
 写真は残っていたが夫の顔は焼け焦げていて見えない。二人は父親の顔を覚えてはいなかった。
 

 「青雉大将、仕事仕事してつかぁさい」
自分よりも背の高い男の前に立ちはだかる男は、灰色のフード付きのパーカーにめんさい柄のズボン、軍事用ブーツそして深めにかぶった帽子を身につけている。
 

 どこかで見たことのある服装だが、それもそうだ、クザンは溜息を漏らし”親子だなぁ”とつぶやいたが、息子であるハクはいきなり”親子”だと言われ何のことだかわからなかった。
 

 「ハクよぉ、いい男がそんな服装で出歩いてたらもったいねぇーだろ?まぁ、俺の方がいい男だけどな」
 ハクは言葉につまり、右手に持っている刀を握り締め、とりあえず目の前にいる男にディスクワークをさせるために、クザンの体にロープを巻きつけ部屋に連行させていった。
 

 クザンは文句を言いながらも机の上の書類を片付け始めたが、わずか5分もしないうちに飽きたようで、机の上で眠ってしまった。
 

 ハクは訓練で疲れた体を休めるために、同僚達がいる中将専用の休憩室に向かっている。廊下には忙しそうにしている、海兵達が行き来している。
 

 ふすまを開けると、そこにはモモンガとストロベリーがいた。
 向かい合っているソファーに座り、トランプゲームをしている。
 

 暇ならば訓練でもしていればいいのに、と思ったその思考は母親であるサカズキと同じで、よくそういうところを見せている。二人はしっかりしているが手がかかることも多々あるのだ。
 

 「ハクか、どうだお前もやらないか?」
そんな質問をしても”やらない”と返されるのがオチだが毎回のように聞く二人は、ハクの事を気遣っているつもりなのだ。
 

 大将赤犬の息子である、ハクは赤犬と同じく近寄りがたい存在なのだ、覇気はにじみ出ているものの、赤犬のように猛烈なものではない、それに自分の事よりも他人を気遣う人間なのだ。
 しかし赤犬と違うのは”絶対的正義”を掲げていない事なだ。
 会議中などでよくもめている。”赤犬は行き過ぎている”など口癖のように言っている。
 

 母親の名前を呼ぶのは気が引けるため、海兵の時は”赤犬”と呼んでいる。そのため”赤犬”の同僚達のことも異名で呼んでいるのだ。
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