しっぽや1(ワン)

□メリクリプチパーティー☆《後編》
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side<ARAKI>

12月に入ったばかりであったが予備校の予定に少しだけ余裕のあった俺と日野は、しっぽや事務所を使わせてもらいクリスマスパーティーを開催することにした。
いつもイベント事はゲンさんが計画してくれて俺達はそれに乗っかるだけで良かったので、初めて自分達で計画すると言うことに緊張と興奮があった。
準備しきれなかった部分は皆がフォローしてくれて、俺達は楽しいパーティーを堪能中なのであった。


控え室の隅で白久と一緒に豆乳ヨーグルトを飲みながら
「月さんや桜さんとはあまり会う機会が無いから、白久も新郷やジョンにあんまり会えない?
 事務所でけっこー会ってるのかな
 黒谷も入れて、皆、古い時代からの仲間なんだろ?
 たまには集まってご飯でも食べれば良いのに」
俺は先ほど見た4人(匹?)の楽しそうな姿を思い出し、そう聞いてみた。
「そうですね、古くからのとても大切な仲間です
 彼らが居なければ、飼い主の居なかった長い年月を耐えられなかったかもしれません
 でも、付き合いは短くとも、羽生やひろせだって大切な仲間ですよ」
白久はそっと微笑んだ。
「しかし、私にとっては荒木が1番大切なお方です
 飼い主がいる者は、飼い主と一緒に居られる時間が1番楽しく大切なものなのですよ
 仲間内で集まるのは、このような催しのついでで十分、と言うと薄情に聞こえますでしょうか」
悪戯っぽい笑顔をみせる白久に
「日野やタケぽんと居ても楽しいけどさ
 俺も白久と一緒に居るのが、1番楽しいかも」
俺も思わず笑ってしまう。

「自分たちの時間を大切にしつつ、皆で集まる機会も作りたい
 何か、ゲンさんの気持ちが凄く分かる気がする
 まだゲンさんみたいには上手く出来ないけどさ、また皆で楽しめること考えてみるよ
 もっとも、1人じゃ無理だから、日野とタケぽんと一緒にとかさ
 今回もチキンの数、十分用意出来なかったもんなー
 考えてみればクリスマス前だし、そんなに大量に売ってないんだよね
 20本くらい予約しとけば良かった
 寿司とケーキは『予約しなきゃ』って頭があったのに、チキンは当日買えば良いか、とか軽く考えてた」
俺は腕を組んで唸ってしまった。
「飼い主と分けて食べるチキンは美味しかったので、私は大満足ですよ」
白久の笑顔を見ていると『まあ、良いか』と心が軽くなっていく。
「よし、トリモモはもう無いけど、寿司食べよ!
 早くしないと日野に食い尽くされちゃう
 っと、飲み物…流石にこれ、寿司には合わないか」
俺は残っていた豆乳ヨーグルトを一気に飲み干した。

「インスタントのお吸い物かお味噌汁を作りましょうか
 エコではありませんが、パーティーなので紙コップでお手軽に」
白久も同じくドリンクを飲み干して、スープ類の入っている引き出しに手をかける。
「うん、そうだ、皆にも聞いてみよう
 少しくらい立案者っぽく役に立つことしないと」
俺は笑って舌を出し
「寿司用にインスタントのお吸い物と味噌汁作るけど、飲みたい人いる?」
そう声を張り上げた。
『欲しい』と言う声が大量に上がったので、俺は人数分作ることにする。
「荒木、手伝うよ」
近寄ってきた日野が手を貸してくれた。
「何かまだ、ゲンさんみたいにビシッと決めらんねーな、俺達」
苦笑する日野に
「次は、もうちょっと上手くやろう
 また色々企画してみようぜ」
俺は笑ってそう言った。
「よし!って、次は受験明けじゃないと無理そうだけど
 春っぽいこと、してみるのも楽しそうじゃん」
「だな」
俺達は顔を見合わせて笑い合い、出来上がった飲み物をお盆に乗せると皆に配って回った。


コンコン

ノックと共にすかさず長瀞さんが立ち上がってドアを開けに行ったので、誰が来たのかは直ぐに分かった。
「メリークリスマス&ハッピーニューイヤー
 いや、正月はまだ早すぎるか」
大きなビニール袋を下げたゲンさんがにこやかな顔で事務所に入ってくる。
それはプレゼントの袋を持ったサンタのように見えた。
「チキンの追加、持ってきたぜー
 この時期だと、まだ肉屋で大量に手に入れるの大変だろ
 それを見越して、スーパーに予約しといたんだ
 亀の甲より年の功ってな
 照り焼きばっかじゃ飽きると思って、塩味多めに買ってみたぜ」
ゲンさんはニヒッと笑って、袋を掲げてみせた。
「流石ゲンさん!」
「ゲンちゃんサンタ、格好良い!」
「やったー、トリモモ追加ー」
場の皆からドッと歓声が上がる。
俺と日野はゲンさんに尊敬の眼差しを向けるしかなかった。

「白久、塩味だって
 また分けっこしよ」
「はい、飲み物はどうなさいますか
 ここはサッパリと炭酸系でコーラはいかがでしょうか?」
好みを覚えてくれている飼い犬に、満足感を覚え顔が笑ってしまう。
「うん、白久の分は俺が入れてあげるね」
俺は新しい紙コップとコーラを手にして飲み物を用意すると、早速トリモモ争奪戦に加わっていくのであった。
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