しっぽや1(ワン)

□分からないのに惹かれる7
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「俺も、過去のこととかソウちゃんに話した方が良いのかな…」
ウラは自分を見つめ、戸惑った顔になる。
「ウラが必要だと思ったのなら教えてください
 無理に語ることはありません」
自分の言葉に、彼はホッとしたような表情になった。
「ごめん、まだ色々と伝える勇気無いや
 ソウちゃんは、俺に見せてくれたのにね…
 チャラ男でヘタレって、自分でも情けねーや」
少し自虐的な感じで言う彼に
「ウラは真面目な方です
 出来なかったことを気にするのは、責任感の現れと思います」
自分はそう告げた。

「責任感って…、ソウちゃん、どんだけポジティブシンキングなの
 俺のは問題を先送りにしてるだけ、単なる逃げだ
 ほんと感覚ズレてるんだからって、これ、犬だから当たり前なのか
 あーもう、俺、ソウちゃんの考えた『番犬プレイ』マジで超エロいとか思ってたのに
 俺一人で盛り上がってただけかよ」
ウラは頭を抱えて考え込んでしまった。
自分の言葉の何が彼を考え込ませてしまっているのかわからず、オロオロするしかない自分が情けなかった。

「よし、本当に犬なんだから、首輪着けるの有りだよな
 黒毛に黒い首輪は目立たないけど、身体は人間だから大丈夫か
 鋲(びょう)が付いてるようなゴツいやつが似合いそう
 リードだとムードでないから、やっぱ鎖だな」
ウラは何か呟いていたが頭を上げて
「ソウちゃん、今度からは『番犬プレイ』じゃなく『警察犬プレイ』に変更
 『警察犬』って響きの方が背徳感あって燃えるじゃん
 そのうち小道具そろえるから、着けてエッチして」
自分を見て頬を染め、艶めいた顔で命令する。
それが具体的にどのような命令なのか理解できなかったが
「ご期待に添えるよう頑張ります」
自分は張り切ってそう答えるのであった。

「色々考えてたら、したくなっちゃった
 ソウちゃん、エッチしよ」
ウラが自分に抱きつきながら、甘い吐息を漏らす。
この身が化け物だと判明した後にだというのに、いつもと変わらず自分を求めてくれるウラに驚きと感動を覚えてしまう。
「ウラに触れても宜しいのですか」
オズオズと問いかける自分に
「飼い主とエッチするの嫌?
 でも、ここはこんなになってるよ」
ウラは少し意地悪く笑いながら、自分の股間をなで上げてくる。
ウラに触れられている刺激で、自分の身体はとっくに反応を示していた。

「我々化生にとって、飼い主と契れることは何よりの誉れです
 飼い主に受け入れてもらえることが、無情の喜びなのです」
ウラは自分の言った答えに満足したように微笑むと、唇を合わせてきた。
「ん…ソウちゃん…」
合わせた唇、絡めた舌の隙間から漏れる飼い主の呼びかけに
「ウラ…」
自分も返事を返す。
ベッドに移動して服を脱ぎ、彼の美しい肢体に舌を這わせると甘い悲鳴を上げながら自分の身体に爪を立ててくる。
いつもより激しく反応しているように見え、こちらも興奮が増してしまう。
今、自分達は身体だけではなく心も繋がっているのだと思うと、果てしない喜びがわき上がっていた。
自分の解放した熱い想いを受け、ウラも同じ反応を返してくれる。
欲望が尽きるまで何度も繋がりあい、熱い気持ちが落ち着いてきた時には、とっくに深夜を回っているのだった。


「すげー良かった、俺達、身体の相性良いよな」
ウラが腕の中で幸せそうに笑ってくれるので、自分も幸福な思いに包まれた。
「ウラのために、もっと頑張ります
 飼い主と共にいる時が長い元同僚に、少し教えてもらおうかと
 飼い主が居ないときは彼が何を言っているのか理解できなかったけれど、今なら分かる気がするので」
聞き飽きていた新郷の桜ちゃん自慢が、自分にとって現実味を帯びた話に感じられていた。
「そっか、化生って他にもけっこー居るのか
 あ、黒谷もそうなの?ってことは飼い主は日野?
 通りで偉そうにしてると思った」
ウラは納得した顔を見せる。

「以前焼き菓子を作ってきてくれたひろせも化生です」
「あの可愛い子?じゃあ、あのデカい彼氏が飼い主?
 しっぽやって、化生が運営してるんだ
 組織力在るなー」
驚いているウラに
「正式に貴方に飼っていただけたことを黒谷に報告します
 それと、今後どのように生活していくか、一緒に考えていただけると嬉しいのですが」
自分は伺うように聞いてみた。

「今後の生活…」
ウラは眉根を寄せる。
「自分と共に暮らすのはご迷惑でしょうか」
困ったようなウラの顔を見て、胸に不安が広がっていった。
「そんなわけないじゃん、ソウちゃんと一緒にいたいよ
 今度こそ、ちゃんと飼い犬の面倒みたいし
 問題は俺なんだ
 逃げてる場合じゃないっつーのは、分かってんだけどさ」
ウラは甘えるように、自分の胸に頬を押しつけてきた。
「少しずつ片付けていくしかないか
 ソウちゃんと一緒なら、出来そうな気がする
 でも、本当にゆっくりだけど」
何かを決心したように凛とした表情になるウラに
「自分に出来ることであれば、何なりとお申し付けください」
自分は真剣にそう伝える。

飼い主のために出来ることがあるかもしれないと思うだけで、胸には誇らかな喜びがわいてくるのであった。
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