しっぽや1(ワン)

□クリスマスパーティー
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side〈ARAKI〉

朝のメールチェック。
思った通り、今日はゲンさんからの私信メールも来ていた。

『おっはー(^o^)
 今日は待ちに待ってたクリスマスパーティー☆
 っても、ハロウィン同様先取りバージョンだけどな( ´艸`)
 本番は、自分の化生とゆっくり過ごしてくれればいいのよ♪
 俺もナガトと2人っきりのクリスマスを堪能するぜい(*´Д`*)

 今回のミッションは、皆一緒で「オーソドックス」(・∀・)
 侮る無かれ、オーソドックスの中にはジェネレーションギャップが隠れているのだ、OH テリブル!
 荒木、白久組は「オードブル」よろしこ!
 若人のオーソドックスオードブル、期待してるぜ(`・ω・´)

 クリスマスだけど、プレゼント交換は無しな
 楽しそうだが年齢とかバラバラすぎて、品物選ぶの悩むだろ?
 プレゼントは自分の化生にあげてくれ(*^_^*)

 んじゃ、夜に会おう(≧▽≦)』

白久と初めてのクリスマスパーティー。
ハロウィンの時より、俺はワクワクする気持ちになっていた。
自分にとって、ハロウィンよりクリスマスの方が馴染み深いイベントだったのだと改めて気が付いた。
今日も、皆で過ごすパーティーの後は久しぶりに白久の部屋にお泊まりできる。
試験が終わった開放感も手伝って、俺の浮かれた気分は授業が終わっても続いていた。



「日野、帰ろうぜ!」
手早く荷物をまとめると、俺と日野は教室を後にする。
日野も、嬉しそうな顔をしていた。
「やっぱさ、ハロウィンより気分が盛り上がるよな」
「あ、やっぱお前も?俺もそう思ってた?」
俺たちは駅への道すがら、ニヤニヤ笑いが止まらなかった。

しかし、日野がふと真面目な顔になり
「荒木に、ちょっと相談したいことがあるんだ」
そんな言葉を切り出した。
「プレゼントは無し、ってメールに書いてあったけど…
 俺、ゲンさんには何かお礼したくてさ
 初めて会ったとき俺、荒木の敵だったのに、咳込んだら病院に連れて行ってくれようとした
 俺が早く皆に馴染めるよう、色々気を使ってくれた
 あの人がいてくれて、本当に感謝してるんだ」
真剣な日野の言葉に、俺も今までのことを思い出す。
考えるまでもなく、俺もゲンさんにはお世話になっていた。

「うん、そうだな
 俺たち2人で何かプレゼント用意しようか
 皆の前で渡せば、ゲンさんだって受け取ってくれるよ」
俺が言うと、日野はホッとした顔になる。
「実は、プレゼントの目星は付けてあるんだ
 買いに行くの付き合ってよ」
「もちろん!」
こうして俺たちは、少し寄り道をしてからしっぽやに向かった。


事務所に着くと白久と一緒にランチを食べに出て、帰りにミッション用の買い物を済ませた。
「オーソドックスと言われても、オードブルってよくわかんないや」
「前菜のことですね
 空が『テリーヌ』が一般的だと言っていたので、今回はトレンディーな犬の言うことを聞いておきましょう」
白久が悪戯っぽく笑う。
「この時期って、市販のテリーヌが普通にハムコーナーで売ってるんだね
 きれいなのが色々あって迷うけど、楽できた」
俺もヘヘッと笑って見せた。
「後はスライスしてお皿に盛るだけです
 それと、この前テレビで見た『カプレーゼ』も作ってみます
 モッツァレラチーズとトマトをスライスするだけですが」
「何かオシャレな感じ
 家ではそんなの食べないから、ちょっと楽しみ」
俺は高揚した気分のまま、白久に寄り添って事務所までの道を歩くのであった。


しっぽや業務が終わり、後片づけをすると俺たちは影森マンションに向かう。
いったん各々の部屋に戻り、着替えてからゲンさんの部屋に向かうのだ。
俺と白久は色違いだけどお揃いのセーターに着替えた。
最近、飼い主のいる化生の間では密かに『お揃い』がブームになっているらしい。
空は新郷のように伊達眼鏡をかけるようになっていた。
「クロは日野様とお揃いのマフラーを、お婆様に編んでいただいたそうですよ
 羽生は、ネクタイをするようになりました
 生前、首輪を付けることなく死んでいるので首が締まるのは窮屈だと言って敬遠していたのですが
 中川先生に結び方を教えてもらったと、嬉しそうに自慢していました」
白久がそう教えてくれた。
そんな化生の一途さが、とても可愛らしく思える。
「今度また、一緒に服を買いに行こう」
俺が言うと、白久は嬉しそうに頷くのであった。
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