緑の指を持つ僕は、妖怪達に懐かれる
□オサキ狐編 PART2〈No.28〜30〉
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〈No.29〉得々(とくとく)
◆OSAKI 2〈2〉
憑き物の結婚式(?)にお呼ばれした僕は、少し焦っていた。
まさかそんなことになるとは思っていなかったので、お祝いの品的物を何も用意していなかったからだ。
こっそり荒井(あらい)さんに聞いてみると
「キューリはオザキの飼い主を助けたんだろ?それで十分じゃないか
用意してもらった大豆がなければ、人間2人の結婚はずっと先だったろうし
そうなるとヨネに良い油揚げが卸されるのも先だったから、私も感謝してるんだよ
豆腐で雷汁を作るのも良さそうで、近日中にヨネのメニューが広がるぞ」
商魂たくましい荒井さんはウキウキしていた。
「皆さん、沢山食べていってくださいね」
米(よね)さんがお盆を持って店内にやって来る。
『狐』だからお稲荷さんや油揚げが主役かと思いきや、お赤飯のおにぎりがメインだった。
僕の不思議そうな顔を見た荒井さんが
「オサキや狐は、小豆飯が好きなんだよ」
そう教えてくれる。
それを聞いて、僕は閃(ひらめ)くものがあった。
「米さん、僕も台所のお手伝いして良いですか」
彼女は笑って頷いてくれた。
学校の帰りだったし何も持っていないと思ったが、友達にダブったガチャを貰っていたのだ。
僕はそのカプセルを開き中身を取りだしてラップをのせ、水を少し垂らす。
そこにお赤飯を詰めて外すと、半円のお赤飯が現れる。
それを何個も作り大きいお皿に配置し、米さんが作ったキンピラゴボウを飾ると、お赤飯で作った満開の梅が出来上がっていた。
「僕、木に咲く花も好きなんだよね
どうかな、おめでたく見える?」
「まあ、可愛らしい」
「こりゃ良い、ヨネの季節限定メニューに決定だ
今回の祝言、ヨネにとってお得メニュー情報満載だな」
いつの間にか後ろで見ていた荒井さんが、ホクホク顔で頭の中のソロバンを弾いていた。
お赤飯で作った梅の大皿を持って店に戻ると、2人のヤンキーオサキが並んで座っている。
これから集会でも始まるんじゃないかという迫力のある顔になっていたが
「お前等、何を照れてるんだ」
荒井さんの言葉で2人の顔は更に険しく赤くなっていった。
「あの、これ、僕が作ったお祝い膳(?)です」
2人の前に皿を置くと
「えー、うっそー、ヤダー、可愛い」
サキさんは両拳を口にあて身をくねらせたが、すぐにハッとなってしかめっ面に戻ってしまう。
しかし
「可愛いサキちゃん久しぶりに見た…最高の贈り物をありがとう、キューリ!」
オザキさんは感涙にむせび泣いているのであった。