ウラしっぽや〈R-18〉

□新人と楽しく◇モッチー&ソシオ◇
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「こないだの飲み会の時は、本当、ビックリしたな」
仕事が終わってソウちゃんと2人で家飲みを楽しみながら、俺は数週間前を思い出していた。
「ソシオは飼ってもらえることになったし、飼い主は無事だったのでホッとしました
 引っ越しも終え正式にしっぽや所員になるため、ソシオは猫の捜索で1番になるんだと息巻いておりましたよ
 雄の三毛猫のラッキーパワーを見せてやる、と
 ひろせ同様、犬の捜索にも出られる猫なので助かります」
グラスのクラフトビールを飲みながら、ソウちゃんは穏やかに微笑んでいた。

「雄の三毛猫って珍しいんだってな
 荒木とタケぽんに、延々と説明されたよ
 ソシオって俺はまだ会ったこと無いけど、ソウちゃんは詳しいの?」
「ソシオは長く三峰様のお屋敷で過ごしていたし、自分たち武衆の者とは良い距離を保っておりました
 三峰様のお気に入りだったので、暫くは寂しく感じるでしょう
 もっとも、武衆の浮かれ者共が三峰様の機嫌を損ねたとき落ち着かせる係が居なくなってしまったと、波久礼の方がガックリしていましたね」
ソウちゃんは苦笑する。
「飼い主の方は、ナリのバイク友達なんだってさ
 色々話を聞いたけど、面白そうな奴かも」
俺はナリの話を思い出していた。


『モッチーは悪い奴じゃないんだけど、ちょっと気が多いというか
 仲間内では「たらしのモッチー」って呼ばれてたんだ
 ウラってモッチーの好きそうなタイプだから、口説かれないよう気を付けてね
 今はソシオがいるし、大丈夫だと思うけど
 たらしのモッチーも年貢の納め時かな
 あ、モッチーってわかりやすい格好良さが好きで、ワイルド系気取ってるから外見は大麻生的かも
 ウラも火遊びしないでよ
 何だかんだ言っても、モッチーって根は真面目だから』

ナリにはきっちりと釘を刺されたが、逆にそれが俺の興味を引いたのだ。
『素直&お堅い系が多いしっぽや関係者に同類が来るかも』
それはそれで楽しそうな予感がしていた。



ピンポーン

来客の予定は無いのに、チャイムが鳴った。
最上階のこの部屋に来ると言うことは、しっぽや関係者だろう。
ソウちゃんを見ると
「ソシオのようですね
 飼い主も一緒でしょうか、知らない人間の気配です」
「ホームセキュリティなんて無くても、ソウちゃんが居ると頼りになる」
俺は彼にキスをして、2人で来客を迎えるため玄関に向かった。

「こんばんは、大麻生」
ドアを開けるとパーカーを着た可愛い化生が立っていた。
白い髪に黒と茶の房があるところを見ると、彼が噂のラッキーキャット、三毛猫ソシオのようだ。
「夜分にすいません
 事故の時助けていただいたお礼に伺いました」
ソシオの側にいる大柄な男が頭を下げた。
俺は彼をマジマジと見つめる。
黒で統一された服に、長めの髪をわざと乱れさせた状態で1つに結っていた。
自分の外見の引き立て方を知っているファッションだ。
これは、俺にとってはおなじみの人種に間違いなしだった。

「お初でーす、たらしのモッチー君」
俺はヒラヒラと手を振って挨拶を返す。
モッチーは一瞬呆気にとられた顔を俺に向けたが
「ナリだな」
すぐに気が付いて苦笑する。
「そ、色々聞いてるよ
 せっかくだから入って入って、今、ソウちゃんと家飲みしてたとこ
 お近づきのしるしに飲んでってよ」
俺が手招きすると
「じゃあ、お邪魔させてもらおうか」
「うん」
2人は顔を見合わせて飲み会に加わった。


「モッチーはウイスキー党なんだって?
 俺、ハイボールくらいしか分かんないんだよなー
 クラフトビール開いてるから、それで良い?
 ソシオはお酒大丈夫?ミルクにしとく?ミルクティー作ろうか?
 つか、モッチーって名前なんつーの、餅太郎?」
俺は笑いながら2人にクッションを勧める。
「名前は持田 保夫(もちだ やすお)
 ウラだっけ、それ本名?
 酒はビールで良いよ、ソシオはどうする?ミルクティーもらうか?」
「ミルクティー飲んでみたい」
モッチーは優しくソシオに話しかけていた。
「山口 浦(やまぐち うら)が正式名称でーっす
 ミルクティー、注文いただきましたー
 ソウちゃんにも淹れてあげるね、ちょっと待ってて」
人数の増えた家飲みに、何だか浮かれた気分になっていた。


「オーソドックスにアッサムのミルクティーだよ」
俺はミルクティーの入ったマグカップをソシオとソウちゃんの前に置いた。
「歓迎会には間に合わなかったけど、新たな仲間に乾杯」
俺は飲みかけのグラスを掲げる。
その後、新たに用意したモッチーのグラス、ソウちゃんとソシオのマグカップと触れ合わせ乾杯をした。

「ナリからウラは日本酒がいける口だって聞いてたから、お礼の品で日本酒持ってきたんだ
 事故の時は本当にありがとう、助かったよ」
モッチーは改まって頭を下げ、紙袋を差し出してきた。
確かに根は真面目のようだ。
「あざーす、早速開けちゃうか
 モッチーも呑めるんだろ?一緒に呑もうぜ
 ソウちゃんも味見してみる?ソシオはガムシロ入れたミルクで割ればいけんじゃね?」
ソウちゃんもソシオも頷いたので、俺はグラスを用意して注いでいく。
家飲み、日本酒バージョンの始まりであった。
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