しっぽや2(ニャン)

□タケぽんの夏休み
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「ここがショッピングモールですか」
建物内に入ると、ひろせは物珍しげに辺りを見回していた。
「本当に色んなお店が入ってるんですねー
 こんなに大きいなんて、思ってませんでした
 スーパーが何個入るんだろう、全部見て回れるかな」
緊張気味のひろせに
「興味のある店だけ見れば良いんだよ
 まずは、腹ごしらえ!ワッフルのお店に行こう」
俺は笑いながら話しかけて、彼の手を取ると店に向かって歩き出した。
ひろせに頼もしげな視線を向けられ、俺は満更でもない気持ちになる。
『あのワッフル屋なら何度か入ったことあるから、案内出来るぞ!
 今日は俺がひろせをリードするんだ
 入ったことの無い店に行く事になったら…まあ、何とかなるさ』
それにひろせと一緒なら、どこに行ったって楽しいに決まっていた。

お店に着くと、外に飾ってある写真入りのメニューを2人でじっくりと見る。
「ワッフル、どれも美味しそう
 チョコとバナナの組み合わせ、抹茶アイスと小豆の組み合わせは王道ですね
 シナモンアップルと洋なし…これは珍しいかも」
「ワッフル、3種類頼んで分けっこしようか
 ワッフル付きランチセットを2種類頼んで、単品で1個ワッフルを追加すれば良いよ
 ランチはパスタとオムライスで良いかな
 こっちも分けっこすれば、色々食べられるから」
目を輝かせるひろせに、俺はそう提案した。
「はい、飼い主と分けあえるって嬉しいな」
頬を染めるひろせの顔を見ていると、幸せを感じられる。
「この店は、最初に注文してお金を払うんだ」
「ファミレスとは違うシステムなんですね」
ひろせが感心するので、俺はちょっと得意な気持ちになっていた。
レジに居る店員に注文を伝えお金を支払うと、飲み物と番号札を受け取り席に着く。
楽しいランチの始まりであった。

運ばれてきた料理を食べながら
「これからどこに行こうか?ひろせ、前に映画見てみたいって言ってたよね
 何か面白そうなのやってるかな」
俺はスマホを取り出すと、ここの映画館の情報を調べ始めた。
「僕にもわかる話があると良いんですが…
 白久が猫の好きなお侍さんの映画を見たと言ってました
 主人公が波久礼みたいだったって」
その言葉に、思わず吹き出してしまう。
「俺もあのシリーズ好きで見てたよ
 波久礼の方が迫力あるけど、うん、主人公と似てるかも
 でも、ずいぶん前の作品だから、もうやってないんだ
 何か他にあるかな」
夏休みなので子供向けの作品や、洋画のシリーズ物の上映が多かった。

『シリーズ物って途中から見てもわかんないよな
 単発で分かりやすくて、ひろせが楽しめそうなもの…』
子供向けの映画の中に、これはと思う物を発見する。
「アニメだけど、飼い主が留守中のペットがどんな事をしているか、って話の映画があるよ
 夜の上映なら、先にチケット買って時間までお店見て回る余裕あるから良いんじゃないかな」
俺がスマホの画面を見せると
「これなら分かりそうな話です」
ひろせはホッとしたような顔になった。
「それじゃ、食べ終わったらチケット買いに行こう」
良い感じにひろせをリード出来て、俺もホッとしていた。

お待ちかねのワッフルが運ばれてくると、俺達のテンションは上がってしまう。
「「美味しそう!」」
思わず2人でハモってしまい、顔を見合わせて笑ってしまった。
「焼きたてのワッフルって、ほんと美味いよなー」
「洋ナシとワッフル、合いますね
 シナモンアップルとの組み合わせも良いし、バニラアイスが上手く味をまとめてます」
俺達はあっという間にワッフルを食べきった。

「ワッフルって、のせる物によって無限の可能性を秘めてるよ
 メニュー作る人、組み合わせ考えるの楽しいだろうな」
甘い余韻に浸りながらそんなことを口にする俺に
「ワッフルメーカー…買ってみようかな」
ひろせがモジモジと言い出した。
「そうすれば、タケシが泊まりに来てくれた時、朝食やおやつに焼きたてを食べてもらえるし
 あまり生地を甘くしないで卵サラダやツナサラダをのせたら、軽食にもなるかなって
 僕がワッフル作ったら、食べてくれますか?」
伺うように聞いてくるひろせに
「もちろんだよ!考えるだけで美味しそう!」
俺は鼻息も荒く答えてしまった。

「ワッフルメーカー、ここにあるお店で売ってると良いんですが
 スマホで調べても、通販だと頼み方がよく分からなくて」
そう言われると、俺もどこで売っているのか知らなかった。
「キッチン用品売ってるような店にあると良いけど…ちょっと探してみようか
 それと捜索の時に役立ちそうな熱中症対策グッズを見て、と
 他に何か欲しい物はない?」
「タケシが泊まりに来たときに、使えそうな物があると良いなって
 僕の部屋で何か足りないものとかありますか?」
そんな健気なひろせの問いかけに胸を熱くしながら
「2人で色々見て回ろう」
俺はそう答えるのであった。
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