しっぽや2(ニャン)

□会見
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スッと襖が開き、1人の人物が入ってくる。
2mはありそうな長身に、無造作に伸ばした灰色の髪、彫りの深い顔立ちは日本人に見えなかった。
灰色のスーツをビシッと着こなしたその姿からは、威厳あるオーラを感じとれる。
「お待たせしましたかな?
 お招きに預かり、光栄です
 私が三峰(みつみね)、そちらの言うところの化生の元締め、と言った存在です」
相手は厳かにそう言った。
ナガトが慌てたように俺と三峰を見比べる。
三峰は鋭い眼光をナガトに飛ばし、口を挟むことを遮った。

「本日はお呼び立てしてしまい、申し訳ありません
 貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございます」
俺は頭を下げて礼を述べる。
「化生の飼い主と面会する機会は、今まであまりありませんでした
 して、本日はどういったご用件で?」
俺の前に座った三峰は、どこか居丈高な調子で話しかけてくる。
「貴方様の資産に対してご提案がありまして、お呼び立てした次第にございます
 貴方様にとっても、けっして損のある話ではないかと思われます」
俺の言葉に
「私の資産ね…」
三峰はフンッと軽く鼻を鳴らし、不快そうな表情になった。
「どこで何を聞き及んだか知らんが、そんな話は間に合っている
 今日の会見は、無かった事にしてもらおう」
三峰は立ち上がり、部屋から出て行こうとする。

「まーまー、お腹が空いてると、気も短くなるからさ
 何か食べてから話しましょうや
 つか、今日、3人分しか予約入れてないんだ
 今からもう1人分、追加出来るかな?
 ああ、俺、あんま食えねーし、俺とナガトは半分こっつすりゃ良いか
 懐石料理なんて、ワンコちゃんにゃ、物足りないかな?
 松阪牛のステーキでも追加するから、座ってよ」
俺がくだけた口調で言うと
「な、なんと無礼な…」
相手は顔を赤くして、上から俺を睨み付けてくる。
俺はその視線を真っ向から受け止め
「ペットだったんだから、100%じゃないよね
 でも野生が濃いな、狼の血90%以上入ってるでしょ、ワンコちゃん
 そんなワンコちゃんが懐いてるなら、もしかして本物は100%?」
ニヤリと笑って相手を見る。
「ゲン!」
ナガトが青ざめた顔で、俺を庇うように三峰との間に入ってきた。
三峰はギクリとした顔で固まっている。

「ホホホホホ、波久礼(はぐれ)、お前の負けじゃ」
部屋に楽しそうな女性の声が響いたかと思うと、スッと襖が開き、1人の少女が入ってきた。
長い黒髪に、清楚な白のワンピース。
それは、日本人形のように可愛らしい顔立ちの美少女であった。
「何故、この者が『三峰』ではないとわかりましたか?」
美少女は軽やかな足取りで俺に近付き、そう聞いてくる。
「俺はナガトの記憶の転写を見た時に、貴女のシルエットを見てますからね
 別人であると、すぐわかりましたよ
 でも、実体にはお初にお目にかかります、三峰様」
俺はうやうやしく美少女に頭を下げた。
「そのような呼び名、堅苦しい
 どうぞ『ミイちゃん』とお呼びください
 私も『ゲン』と呼ばせてもらいます」
三峰、ミイちゃんは愛くるしい笑顔を見せた。
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