ウラしっぽや〈R-18〉

□皆、仲良く◇ナリ&カズハ◇
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side<URA>

「今日の1日の仕事に、乾杯」
「「乾杯!」」
俺とカズハ先輩とナリは、引っ越し祝いのパーティーをやった後も3人と飼い犬3匹で集まって酒やお茶を飲むことが多くなった。
タイプが違う俺達だが、何だか馬が合っていたのだ。
今日は酒バージョンの飲み会だ。
酒やツマミは持ち寄り、会場は空の部屋、ささやかではあるが気のあった者達と飲む酒は旨かった。

テーブルが置いてあるリビングの壁には、大きく引き延ばしたハスキーの写真が何枚も飾られている。
最初に見た時は生前の空かと思い、どうやって写真を入手したのか不思議に思っていた。
けれどもそれは、カズハ先輩が子供の頃に飼っていたハスキーの写真だった。
「前の犬の写真を飾るって、今の飼い犬として悔しくないのかよ、空」
思わず聞いた俺に
「彼女がいたから、カズハがハスキー好きになってくれたんだ
 恩人と言うか恩犬だよ
 それにハスキーってインテリアとしても最高な犬種じゃん
 この写真を飾るだけで、部屋が一気にトレンディーになるんだぜ」
空は得意満面の笑みを浮かべて鼻息も荒く力説する。
「ハスキーの容姿は、完璧だものね」
カズハ先輩も語気を強めて頷いていた。
「そう言われると、俺も犬の写真飾りたくなるなー
 爺ちゃんとこいけば、生前のソウちゃんの写真が手に入るし
 でも昔の写真だから、写りがビミョーなんだよね」
悩んだ結果、俺はソウちゃんの部屋にシェパードのカレンダーを飾ることで良しとすることにした。

「カズハの真似して、うちはスズキとヤマハの写真でも飾ろうかと思ってるんだ
 でも寝てるとこしか撮れなくてさ」
リビングを見渡すナリに
「うちは父が写真好きだったから、沢山撮ってあったんです
 エレは『待て』が出来る良いモデルだったし、色んな場所に撮りに行ったっけ」
カズハは懐かしそうな顔で写真を見つめ、説明していた。
「今は空とあちこち出かけて、心のカメラで僕だけの写真を撮ってます
 なんて」
照れたように舌を出すカズハ先輩は、知り合った頃より明るい表情をする事が増えていた。
「ごちそうさま、私もそうしようかな
 これからふかやとツーリングであちこち行く予定だもの」
ナリの言葉に、ふかやも満面の笑みを浮かべていた。

「俺は、ソウちゃんとスマホの自撮りけっこーしてるぜ
 対になったり、色違いおそろの服を着たりしてさ
 2人だけの思い出の写真、いっぱいあるんだ
 フォルダ分けとかしてないから、かなりカオスになってきちゃってるけど
 そのうち整理しようとか思いながら、中々ねー」
俺はため息をついてしまうが
「そだ、今日の記念に飼い主3人の写真も撮ろう
 ソウちゃん、撮って」
俺は彼にスマホを手渡した。
恥ずかしがるカズハ先輩を強引に真ん中に挟み、俺とナリはスマホに笑顔を向ける。
何枚か撮った後、俺はカズハ先輩を解放した。
犬達の写真も撮ってみたが
「ハスキーとシェパードに挟まれると、流石にふかやは愛玩犬全開に見えるな」
座っていて大きさの対比が変わらないせいか、スタンダードプードルがとても華奢に見えるのだ。
「えー?愛玩犬は俺だろ?ふかやって、バカデケーんだぜ」
不満そうな空の言葉に大笑いし、俺達は楽しく盛り上がっていた。


「そういえばカズハ、髪染めたんだね
 ちょっと明るい印象になって、似合ってるよ」
ナリに言われてカズハ先輩は照れた笑顔を浮かべていた。
「そうそう、あの日は色々自信もついたでしょ」
俺が意味ありげな視線を送ると、とたんに真っ赤になって慌て出す。
「あ、いや、あの日は、その…」
アワアワしているカズハ先輩を、ナリは不思議そうな瞳で見つめていた。
「ナリは染めないの?染めるんなら、カズハ先輩にお店紹介してもらえるよ」
そう勧めてみたが、ナリは首をひねって苦笑していた。
「私の髪型で染めてると、アニメとかのキャラっぽくなるんじゃないかなって思って
 黒髪だから出来る髪型と言うか」
「真っ白とかまっ黄色に染めなきゃ、んなことないと思うよー
 むしろ、黒髪おかっぱのキャラいるじゃん
 桜ちゃんから借りたバトルマンガに出てきてたぜ、日本人じゃなくてイタリア人だったけど」
「僕は、囲碁のマンガに出てきたライバルの子っぽいな、って思ってました」
それから暫く、俺達はナリの髪型で盛り上がる。
犬達はマンガを読まない(と言うか、読んでもうまく理解できない)から意味は分からないものの、飼い主達が盛り上がっているのを楽しそうに見つめていた。


「カズハ、飲み物のお代わりいる?
 俺、オレンジビール作るよ」
空気を読まない空だけど、カズハ先輩の事に関しては絶妙なタイミングで言葉を挟んでくる。
俺達のグラスは空(から)になっていた。
「そうだ、2人へのお土産で実家に帰ったとき買ってきたのがあるんだ
 これ、開けてみない?」
ナリがテーブルに細長い箱を置く。
「お、渋い!たまには日本酒も良いじゃん
 最近飲むのはビール系が多かったからな」
俺はいつもとは違う酒にテンションが上がるのであった。
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