ウラしっぽや〈R-18〉

□トラウマの払拭◇日野◇
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side<URA>

ペット探偵しっぽや事務所には、結果はまだ出ていないものの試験が終わって羽を伸ばしている日野の姿があった。
「清々(せいせい)した、って顔してんな」
「そりゃそうだよ、今まではここでバイトしてても黒谷と居ても、なーんか心の片隅に『受験』の文字が浮かんでたからさ
 後は結果を待つだけで、今は何にも出来ないもん
 なら、楽しんどかなきゃ」
日野は二ヤッと笑ってみせた。
「余裕のある奴のセリフだねー
 受かるって思ってんだ」
俺が少し意地悪く聞くと
「試験、良い感触だったとは思ってるよ」
シレッと答えてくる。
「んじゃ、合格を信じてお祝いの前渡ししてやるか
 今晩は黒谷んとこに泊まりなんだろ?
 うちに晩飯食いにきな、ソウちゃんの絶品海鮮中華丼おごってやるから
 その後、前に言ってたキスのレクチャーしてやるよ」
「中華丼は魅力だけど…キスはいらないって
 てか、いつものメンツならファミレスで良いじゃん」
日野は露骨に顔をしかめた。

「何でそんな、執拗にイヤがるんだよ
 金取らないでキスしてやるって言ってんのに」
むくれる俺に
「ウラって確かにキレイだけど、自意識過剰過ぎ
 そんな奴の部屋に行くの、危なくてイヤに決まってるだろ」
日野は呆れたジト目を向けてきた。
「言ったな、こいつ」
俺は日野を抱き寄せ、その耳元で
「料理対決させてみたいってのもあるんだよ
 ソウちゃんの炒め物、プロ顔負けの火加減なんだぜ
 特にエビのプリプリ食感、中華街の高級料理店並
 まあ、そんな店行ったこと無いから、イメージだけど」
そう囁いてやった。
「黒谷は豆ご飯とか、炊き込みご飯が絶品だから急に言われても用意できないよ
 あー、でも、オムレツの半熟加減とか最高なんだ
 豆の炊き込みご飯で作った『タンポポオムライス』は、高級レストランで出しても良いくらい美味いぜ」
日野も対抗するように言い出した。
「タンポポオムライス?何それ?」
「オムレツをご飯の山の上で割って、オムライスにするやつ
 半熟だとご飯を包むようにトロッと流れていくから、見た目もゴージャスでさ
 オムライスとして邪道だって言う奴もいるけど、俺は好き」
「美味そう!食ってみたい
 それにソウちゃんの作った具沢山の中華アンとかかけたら、更に美味いんじゃね?」
俺の提案は日野にとっても魅力的だったらしく
「じゃあ、お邪魔しちゃおっかな
 卵とか買い物して、後から行くよ
 味の濃い、ちょっと良い卵使うとより美味いんだ」
そう言い出してくれた。

「なら、うちは冷凍のシーフードミックスじゃなく、大きいエビとイカを用意するか
 野菜は、ソウちゃんおまかせで
 そうだ、デザートは杏仁豆腐出してやるよ
 事務所に持って行こうと思って買っといた、デッカいパックのがあるんだ
 日野ちゃんがいりゃ、4人で食いきれるだろ
 お茶は、奮発した凍頂(とうちょう)烏龍茶開けるか
 カズハ先輩に教わったやつでさ、グレード高いと値段もバカ高いの
 けど、烏龍茶なのに全然渋くなくて飲みやすいんだ
 日野ちゃんの合格祝いだから、贅沢すっか」
俺は日野を抱きしめたまま、言葉を続ける。
「なんか、色々悪いな
 落ちてたらどうしようって、心配になってきた」
日野は警戒を解いて殊勝なことを言いつつも、その目は笑っている。
落ちてる、なんて微塵も思ってないようだ。
「そんときゃ、また来年、同じ事すりゃ良いんだよ
 一応、来年のメニューも考えとく?」
俺がウインクして答えると
「お祝い二重取も悪くないか」
日野は楽しそうに笑っていた。



その晩は、豪華な晩餐になった。
お互いの飼い犬が腕によりをかけてくれて、高級レストランに行かなくても大満足のご馳走を食べられたのだ。
「どうせ競わせるなら、最初っから料理対決にすりゃ良かった
 悔しいけど、オムライス、超美味かったわ」
俺は烏龍茶を飲みながら、傍らに座るソウちゃんにしなだれかかる。
ソウちゃんはしっかりと俺を抱きとめていてくれた。
「大麻生の海鮮も美味かったよ、口の中でエビがプリプリ弾けるのビックリした
 料理対決なら、またしようぜ
 格好良い対決は、黒谷の勝ちだからやる意味ないもんね」
日野も黒谷に寄りかかって、満足げな顔を見せている。

「だーかーらー、ソウちゃんの方が格好良いんだって
 見ろよ、この胸筋と割れた腹、引き締まった腰
 超セクシーだろ?」
俺はソウちゃんのシャツをはだけさせ、その肉体美を日野に見せつける。
「こっちの太さも、堅さも、反りも、申し分ないんだから
 回数こなせる持続力もあるし」
俺はクツクツ笑って、服の上からソウちゃんの股間に手を這わせ撫で上げる。
飼い主からの刺激で、たちまちそれが堅くなっていった。
日野は赤くなって、目を逸らした。
「日野ちゃんだって、黒谷と散々やってんだろ
 何、可愛い反応しちゃってんの」
俺は立ち上がって日野に近付くと、彼の手を取って立ち上がらせる。
それから肩を抱いて少し強引にベッドに座らせた。
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