しっぽや2(ニャン)

□先輩の教え2
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side〈HANYUU〉

しっぽや事務所の所員控え室、お昼の時間に俺(羽生)は自作のお弁当を広げてみせた。
長瀞がそれを見て
「何と言うか…初々しい感じですね」
少し、困ったように笑っている。
「サトシにも同じの作ってあげたの、これ変?」
俺も困ってそう聞いてみると
「羽生が一生懸命作った事は伝わりますよ
 今度また、お料理の勉強をしましょうね」
長瀞は、優しくそう言ってくれた。

一部焦げてジャリジャリというウインナーを食べていると

ピリピリピリ

そんな音と共に、ポケットから振動が伝わってくる。
「サトシからメールだ!」
俺はすぐに携帯を取り出して、それを読んでみた。

『はにゅう、おべんとう、おいしかったよ
 ありがとう
 はにゅうは、とてもがんばりやさんで、すごいね
 きょうの、ばんごはんは、げんさんと、たべるよ
 そっちには、ながとろが、いくから、いっしょに、ごはんを、たべててね』

何とか字を読んでそれを理解すると、喜びが湧き上がってきた。

『サトシが誉めてくれた!
 今度は、もっと美味しいのを作らなきゃ!』
どうしても、顔がニヤケてしまう。
『そっか、サトシ、今日の晩ご飯はゲンちゃんと食べるんだ』
そう思いチラリと長瀞を見ると、iPhoneをいじっている。
ゲンちゃんは長瀞の飼い主だ。
きっと、長瀞にもメールが来たのだろう。
ゲンちゃんはとても良い人間で
『お子様に「様」付けで呼ばれたくねーから、俺の事は「ゲンちゃん」って呼ぶように!』
そう言ってくれて、時々事務所に来ては『人間の常識』ってやつを俺に教えてくれるのだ。
『そうか、俺も返事しなきゃ!』
慌ててサトシに返事を返し、またお弁当の続きを食べていると長瀞が側にやって来た。

「中川様から連絡が来ましたか?
 今日は2人で飲みに行かれるそうです
 晩ご飯は私と食べましょうね
 帰りに買い物をして、一緒に料理を作ってみましょうか」
そう言ってくれる。
「うん、色々教えて!俺、サトシに美味しい物作ってあげたい!」
長瀞は料理が上手なので、俺は嬉しくなってそう答えた。
白久も長瀞に料理を教わって荒木に食べてもらっていると言っていた。
荒木はいつも喜んで食べてくれるらしい。
俺も、俺の作る料理を食べて喜ぶ、サトシの顔が見たかった。
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