しっぽや5(go)

□甘い芸術の秋
3ページ/4ページ

その後はタルト屋パン屋和菓子屋を見に行った。
新しいケーキ屋は混んでいて近寄れなかったので後回しにする。
これから食べ放題に行くと思うと、美味しそうだと思っても流石に手が出なかった。
それでも宝石のようなお菓子を目にして
「そうか、生のフルーツはタルトの上にのせても良いんだ
 フルーツ大福風にするのは白あんと黒餡、どっちが良いのか作り比べるのも面白そう
 練りきりのお菓子は僕には細工が出来そうにないけど、大福なら作れそうだもの
 パン屋さんのパイ系、美味しそうだったな」
ひろせのテンションは上がっていた。
可愛いひろせを見れたし、芸術的気分も味わえて俺も大いに満足していた。
これから、お待ちかねの食べ放題!
その事実で、俺はさらに浮かれた気分になるのだった。


「予約出来て良かったね」
店内の混雑、待っている人の列を見て、カズハさんが苦笑しながら俺を見た。
「週末だから混んでるんですかね
 この店くるの初めてだから、予約なんて考えもしませんでしたよ」
俺達は係りの人に案内されて予約席に向かった。
他にも何席かリザーブの札が置かれたテーブルがある。
「いつもはここまで混んでないよ
 季節限定スイーツコースが人気なんだと思う
 予約できるのは1日12組限定だから、ネット予約はあっという間に埋まっちゃうんだ
 後は当日開店前に来て並ぶとか、空き待ちを狙って並ぶとか
 限定コースじゃなければ、ここまで混んでないよ」
カズハさんに示された方を見ると、混んではいるが通常コース席の熱気はここまでではなかった。

「このコース、通常コースより3000円も高いのにね
 やっぱり秋の芋栗カボチャ系スイーツは人気が高いみたい」
「栗のスイーツって自分で裏漉ししてみてわかったけど、作るの大変なんですよ」
「僕はカボチャのスイーツって自分で作ったことないから、勉強したくて
 皆野にカボチャと小豆のいとこ煮は教えてもらったけど、自分的にはスイーツ感がしないんです」
「カボチャの煮たやつって、おかずなんじゃないの?
 俺は甘いもんは後にして、カレーにパスタにサンドイッチ、後は唐揚げ、グラタンにピラフ
 お楽しみはローストビーフだ」
俺達は浮かれまくって席に着き、係りの人から説明を受けた。
限定コースのスイーツは専用の模様が入ってるお皿で取り、渋皮栗のモンブランは1人1個までとのことだった。
モンブランを受け取った人の皿は違う色の皿に変更されるから、ズルをする人はいなさそうだ。
制限時間は90分。
俺達は早速好みの物を取りに行った。


楽しみにしていたので、最初からスイーツのコーナーに来てしまった。
とは言え、渋皮栗のモンブランは最初にいくのは勿体ない。
「あ、普通のモンブランもある、食べ比べられるの良いな
 スイートポテトとカボチャのタルト、カボチャプリンもある
 安納芋の焼き芋も美味しそう
 後はマロングラッセも試してみよう」
俺は限定コースのスイーツをどんどん皿にのせていった。
俺の隣に居るひろせも似たものを取っている。
カズハさんと空は食事から先にするようで、スイーツコーナーには居なかった。
飲み物はダージリンの茶葉を選びポットでひろせとシェアする事にして、席に戻った俺達は早速秋の芸術を食べ始めた。

「マロンクリームじゃないモンブラン、濃厚で栗の味がどっしりして美味しい」
「モンブランの絞り方もキレイです
 僕だとグニャってなってしまって」
「食べ放題用なのに1個1個手を抜いてない感じで凄いよね
 プリンにのってる生クリームも角が立ってピンとしてるし、本当に芸術作品だ」
「焼き芋もネットリとした舌触りが凄いです
 焼いただけなのに立派なスイーツになってますよ
 お芋が違うのかな、焼き方に秘密があるとか」
俺達が感嘆しながら食べているところに、カズハさんと空が戻ってきた。
カズハさんはサンドイッチとパスタとサラダをワンプレートにおしゃれに配置していたが、空はマンガのように山盛りにされたパスタの周りにミートボールと唐揚げを配置していた。
おまけに丼に入った山盛りカレーも持っている。
「ローストビーフとサンドイッチは次のターンだ」
「空、野菜も食べてね」
「はーい、次はサラダも持ってくる」
いつもながらカズハさんのハスキーあしらいはスバらしかった。
「俺達もしょっぱい系とスープを取りに行こうか」
俺が誘うと
「はい、それで口の中を整えて、渋皮栗のモンブランに挑みましょう」
ひろせはにっこり笑った。

「栗ご飯とパンプキンシチューがある」
「カボチャと小豆のいとこ煮もあります
 ここはプロの味を勉強させてもらいましょう」
俺達は料理に紛れている秋を探しながら取っていった。
「何か宝探しみたいで楽しいね」
「違う季節も来てみたくなりました
 冬になったらデートでまた行きましょう」
俺達は近い未来のデートの約束を取り付け、楽しみにするのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ