しっぽや5(go)

□近い未来
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「近戸は凄いよな、きちんと将来のこと考えてて
 俺なんてそこまでしっかり考えてないからな〜」
思わず苦笑する俺に
「でも、荒木が白久を飼いだしてからしっぽやが良い方に変わっていったし、飼い主と会える化生が増えたって明戸が言ってたよ
 そもそも、俺と明戸を巡り合わせてくれたのも荒木じゃん
 そっちのほうが凄いと思うけど
 俺は、そういう能力とか全くないしさ」
近戸は逆に感心したような視線を向けてきた。
「いや、俺も別に能力とかないし、たまたまじゃない?」
「何かのきっかけは作ってると思うよ」
真っ直ぐに誉められて、くすぐったい気持ちになった。

「そう言えば、ニットリとかイケイアって何か関係あるの?
 さっきそんなこと言ってなかった」
俺は支離滅裂だった近戸の言葉を思い出した。
「そうそう、1年の夏休みなら比較的時間がとれるんじゃないかってことで、今年の夏休みに明戸達が部屋を引っ越すことにしたんだ
 もちろん、俺とトノも時間の許す限り手伝うつもり
 荒木も見たとおり、双子猫の持ち物って少ないから自分たちで何とか出来るんじゃないかなって思ってさ
 ただ、せっかくだし家具は部屋の寸法とか計って新しいのが欲しいんだ
 だから皆で家具を見に行こうって話が出てるんだよ
 荒木と白久も一緒に行かない?
 明戸達の荷物を搬出したら、すぐに部屋を移れるようにさ
 もちろん、ベッドとかテーブルとかそのまま使ってもらってかまわないけど
 明戸が使ってる文机、皆野の食器や調理器具以外、新居に持って行かなくても良いかなって思ってるんだ」
近戸からの言葉は、まだまだ先のことだと思っていた未来への誘いだった。

「新しい家具、見に行きたい!
 こないだ部屋を見せてもらったとき、白久と色々話してたんだ 
 そっか、それで家具屋の話が出てたのか」
「何か、ハッキリ言うのまだ恥ずかしくて
 家具代も明戸に借りなきゃいけない状態だからさ」
近戸の言葉は、俺にも耳が痛かった。
「あー、俺も白久に借りる感じ
 借りるというか、返せるあてとかない現状だけど」
思わずため息を吐く俺に
「俺たちはその分、飼ってる化生を可愛がろう
 それは、飼い主にしかできないことだしさ」
近戸は俺と自分自身に向けて言葉を放っていた。
「そうだな、それは自信ある」
俺は笑って答えるのだった。

「俺、ベッドは新しくしたいんだ
 白久は大きいし、ダブルベッド欲しくて
 双子のもセミダブルだろ?
 白久のもセミダブルだから、一緒に寝ると少し窮屈なんだよね」
そう言ってから、自分の発言の大胆さに赤くなってしまった。
「うん、明戸のとこも、どうせ2人でくっついて寝るからってセミダブルなんだ
 荒木達が使わないなら、お客用に新居に持って行っても良いかも
 新居にはダブルベッド2台買うから、それだけでもかなりの出費だ
 ある程度作り付けの収納があるのが救いだよ」
「確かにね
 テーブルはどうしようかな、部屋のサイズ的にピッタリだからそれは明戸達のが欲しいな」
「そうしてもらった方が助かるよ、流石に4人であのテーブルだと狭くて
 2人なら十分じゃないか?」
「明戸の文机がある部屋にパソコンデスク置きたいんだよね
 あっちを、俺の部屋にして良いって白久が言ってくれたから」
「パソコンデスクか、うちは1台あれば後はタブレットかノーパソで済ますようにしたいな
 でもリビングに作業用のパソコンデスクがあった方が便利かな
 そうだ、皆野が大きい炊飯器欲しがってたんだ
 新しいオーブンレンジも欲しいって言ってたし、冷蔵庫も大きくしたいとか
 家電も見に行く必要があるな」
「レンジや冷蔵庫は、使えそうならそのまま貰いたいかも
 ここは出費を押さえないと」


俺たちは話しに熱が入り、近戸のバイト時間ぎりぎりまでねばってしまった。
移動の電車の中で白久に連絡を入れると、速攻で返事が返ってきた。
かなり心配をかけてしまっていたようだ。
俺がしっぽやに到着したときには終了時間が間近に迫っているような状態だったが、近戸と話した内容を伝えたら白久も俺との新生活に喜びを隠しきれない様子だった。
「双子の部屋の寸法ちゃんと計らせて貰って、次の休みに近戸達と家具や家電を見に行こうよ
 貰うものと新居に持って行ってもらうものの確認も、ちゃんとしなきゃね
 それによって、俺たちも持って行くものと処分するものが出てくるじゃん」
「荒木の制服は絶対に持って行きます!」
「雑炊作ってもらった土鍋は持って行きたいかも
 他の食器類はどうしよう、その辺は皆野と相談した方が良いか
 秩父先生に貰った医学書も持って行かなきゃ
 今日は泊まっていけないけど、ファミレスで夕飯食べながら相談しよう
 しっぽやでお茶しそびれたから、お腹空いてきちゃった」
俺が笑ってお腹を押さえると
「私も荒木が心配で、ひろせの焼き菓子を食べそびれました
 ファミレスでは大盛りを頼んでしまいそうです」
白久も同じように笑いながらお腹を押さえ、俺たちはファミレスで豪華な夕飯楽しむのであった。
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