小説
□行動で示せ
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他愛もない雑談が続き、開始から二十分は優に経った頃。
「『二人は仲いいの?』…うーん、どうなの?えおえお」
急にコメントを読んでいたFBに話を振られ、ぼーっとしていた俺は何のことかさっぱりわからない。
画面を確認すれば、
『あろまとえおえおって仲いいの?』
『←俺もそれ聞きたいわ』
『←kwsk』
なんていう、まあそのままの質問が書いてあって。
「それ、どういう話?」
「ん?あろまとえおえおが仲いいかって話」
結局のところ、特に前置きは無いわけか。
本当に唐突な質問だ。
「ラブラブだってはっきり言っちゃえよ〜!ひゅーひゅー!」
「アホか」
『きっくんうぜぇw』
『きっくんww』
『隊長に軽くあしらわれてるw』
『あろま先生はー?』
「ほらー!皆気になって寝れなくなっちゃうから、とっとと言ってやれあろまー」
「え?俺とえおえおは仲悪いよ、さっきも殴り合いの喧嘩してたから」
「またそれかよ!ww」
「はは…w」
冷やかしを入れるきっくんに、平然と嘘をつき、無邪気に笑うあろま。
前々から、仲の良さについて聞かれると、あろまは決まってそう言う。
それは、俺との仲に限った話ではなく。
FBときっくんとの仲を聞かれた時も、同じように“仲悪い”と言っては、楽しそうに笑っていた。
俺としてもこれはこれで楽しいし、本気じゃないと知ってるから大して不快にも思わない。
だけど、今日は何となく、別の反応を返してほしくて。
『先生ww』
『うそつけwww』
『マジかよ!w』
「ほんと、あろまはツンデレなんだからぁ…えおえおは?」
「…うん…そうだな……」
何も言わずに黙っていると、案の定きっくんに話し掛けられて少し考え込む。
曖昧な返事をした後、あろまの傍まで近付いていって、とんとんと軽く肩を叩いた。
「あろま」
「何よ」
「ちょいちょい」
「だからなん…ん!?」
二度目の呼び掛けでようやくこっちを向いたあろまに、ぬっと一気に顔を近付ける。
ほんの、一瞬の出来事だった。
FBは「えおえおさん!?」なんて酷く困惑した声で、きっくんは「うえぇぇい!ww」なんて、誰よりも高いテンション。
あろまはといえば、目を見開いて何か言いたそうに口を動かしているものの、言葉としては出ずにただ呆然と俺を見上げていた。
コメントでも『え!?どした?』『あろまの喘ぎ声が…』『えおえお何したんだしw』と、炎上してんじゃねぇかってぐらいの騒ぎよう。
中にはカメラも付いてないのに『えおえお絶対キスしたろ』なんて結構勘のいいコメントもあって、そこから連鎖するように画面はたちまちキスがどうのって似たようなコメントで溢れ返った。
「とりあえずあの、皆さん一旦落しゅちぇって!!」
「お前が落ち着けw」
『さすがふぶちゃんww』
『FBが動揺してるってことは、やっぱり…?』
『でも仮にえおえおがキスしたんだとしたら…あっ…(察し)』
『あっ…(察し)』
『あろまが受けってこと?』
『←お前…先生にころされるぞ…』
「この際だから、もうズバーンと言っちゃえよえおえお!俺を見習って!」
「きっくんなに煽って…!」
「FB大好きー!!」
「え、待ってきっく…にゃあぁんッ!?」
後ろがさらに騒がしいことになっているが、まるっきり無視。
きっくんの冷やかすような煽りを真に受けるのはあまり気が乗らないけど、どっちにしても結論は一つしかなかった。
視聴者も色々好き放題言ってるし、わざわざ隠す必要もないし。
何より目の前で赤くなっているあろまが、可愛いから。
「えっえおえお、お前…何して…」
「好きだよ、あろま」
「はぁ!?何で今…つか、まだ生放送終わってないのにこの状況どうすんだよ…!?」
「いいじゃん、公認ってことで…あろまだって俺のこと好きでしょ?」
「っ…うるせぇ馬鹿、死ね」
『なにこの告白回』
『神回決定だわ』
『ちょwwさっそくタグ追加されてるwww』
『ソウルメイトは確信犯』
『@1分』
『←マジだった』
「あれ?もうそんな経ってた?」
「ちょっ…苦しいよきっくん…!」
「んじゃ今日はもう終わりね!全世界の皆、ばあああああい!!」
『ばあああああああああい』
『次の放送で報告よろしくー!』
『リア充末長くお幸せにー』
『←おまえらw』
『←お前ら最高』
『←さすがソウルメイト』
視聴者の熱気はしばらく止むことなく、完全に途切れるまでずっと続いていた。
きっくんが早々にお開きしたにも関わらず、僅かに残った1分程度の間に、祝福コメントが川のように流れてきて。
その団結力といったら、恐らく今までで一番だったのではないかと思う。
そんな膨大な余韻も、最後は盛大な拍手弾幕で締められ、放送は無事終了した。