その他シリーズ
□我ら天使と上司をくっつけ隊
1ﾍﾟｰｼﾞ/1ﾍﾟｰｼﾞ
皆様初めまして。私、ディセプティコンに多数所属している量産兵ビーコンの内一体です。
今回、僭越ながらビーコン代表としてこの物語の主人公である方をご紹介するという大役を務める事になりました。
その方の名はマキナ様。
我らビーコンの上司である航空参謀スタースクリーム様の妹君であり、彼の補佐官でもあらせられます。
マキナ様はそうですね…我々が拠点としているアメリカから遙か東にある日本という国に女性の容姿のみならず立ち振る舞いも美しい様を『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』と表現するそうですが、正にその言葉が相応しい方だと思っております。
常にご自身の兄で上司でもあるスタースクリーム様の三歩後ろに付き従い、働く姿は優雅そのもの。物静かな性格の持ち主でその美しいフェイスパーツには常に微笑みをたたえ、おまけに我々ビーコンにまで分け隔て無く接するというハイスペックぶり。
近頃では軍医のメディックノックアウト様に「貴女、所属する軍勢間違えてません？」と真顔で尋ねられ、メガトロン様に至っては「貴様のその謙虚さの何分かの1でもあの愚か者にあれば…」とまで仰るようになりました。
そんなマキナ様ですから我々ビーコンの中では絶大な人気を誇っております。
ええ、ファンクラブもありますよ。
合い言葉は『うちの航空参謀補佐官まじ天使』ですけど何か？
…ごほん。失礼、お見苦しい所を見せてしまいましたね。
ある日、ファンクラブに所属するビーコン達の間でとある噂がまことしやかに囁かれ始めました。
内容は『マキナ様にお慕いする男性が出来た』と言う物です。
最初は「そんな馬鹿な」と鼻で笑う者もいました。しかし兄弟機の一体が好奇心から事もあろうかマキナ様ご本人に直接件の噂について質問をしたのです。
マキナ様はと言うと質問された内容を理解した途端、フェイスパーツどころか機体中を真っ赤にして「え？！い、いませんよそんな人！どうしたんですかいきなり…」と明らかに動揺した様子を見せました。
その反応を見た我々は「あ、あの噂ガチだ」と確信。即座に相手を特定する作業に入りました。
何故ならば大事な上司であり癒やしでありアイドルであるマキナ様。彼女には是非とも幸せになって頂きたい。故に相手を把握してそれがマキナ様に相応しい方であればビーコン一同全力で応援を、相応しくなければ全力で妨害をしなければと思ったからです。
まず実兄であるスタースクリーム様は真っ先に除外されました。次に浮かぶのはやはりメガトロン様なのですがあの方はどちらかと言えばマキナ様をご息女のように可愛がっておいでなので此方は保留。
メデイックノックアウト様？論外です。あのようなサボり魔…げふんげふん、自由奔放な方は生真面目なマキナ様に相応しくありません。もしあの方がお相手なら我々ビーコン、スクラップのち実験材料になる覚悟で阻止させて頂きます。
ならばウォーブレークダウン様か？いやいや、ドレッドウイング様かも。まさかオートボットの誰かじゃないだろうなと白熱した議論が交わされていたそんな中、お相手が明らかになったのはつい先日の事。マキナ様は我々と共にスタースクリーム様のご命令でサウンドウェーブ様のデータ解析をお手伝いしておりました。
「サウンドウェーブ、こちらの解析終わりました」
「≪了解≫≪こちらに≫≪パス！≫」
「はい、どうぞ…あ」
データの入った端末を持っていたマキナ様の手と作業中で手を使って受け取る事が出来ないから、とサウンドウェーブ様の使用したケーブルが触れ合ったんです。
それに驚いたマキナ様はついうっかり手を離してしまい、携帯端末はカシャンと音を立てて落下しました。
「「！！」」
「ご、ごめんなさいサウンドウェーブ。私ったらついうっかり…」
「≪気にしないで≫≪大丈夫だ、問題無い≫」
「そうですか？なら良いんですけど…じゃあこれ、お願いします。私はお兄様の所へ戻りますね」
「≪了解≫」
マキナ様は即座に謝罪の言葉を述べた後、床に落ちた携帯端末を拾い上げてサウンドウェーブ様に手渡し部屋を退出なさいました。
そして部屋の近くを偶然通りがかった私の兄弟機は見たのです。ドアが閉まったのを確認してから
「…サウンドウェーブのケーブルに触っちゃいました…」
なんて、赤く染まった頬に手を添えながら嬉しそうに呟かれると命じられた仕事が終わった事を報告する為にスタースクリーム様の下へと向かわれるマキナ様のお姿を。
一方のサウンドウェーブ様はと言うと、マキナ様が部屋から退出した後にご自身の手とケーブルを見比べてから…
「………」
ガンッ！ガンッ！！
私を始め、何体かのビーコンがまだ室内に残っているにも関わらずいきなり四つん這いになって床に拳を叩き付け始めました。所謂orzのポーズって奴です。
こっそりアテレコするなら「何で！横着して！！ケーブル使ったんだ！！！俺！！！！」と言った所でしょうかね。
…聡明な皆様でしたらもうお分かりになっている事でしょうが、この際無礼を承知ではっきり申し上げます。
じれったいんですよあの二人！どう見ても両想いですありがとうございます！！
他のエピソードを挙げるときりがないので割愛させて頂きますが観察すればする程、常日頃から人間が使うインターネット界隈で言う所の「ここに教会を建てよう」「式場が来い」レベルなこのお二人。それなのにお互いの気持ちに気付いていないとかいつの時代の少女漫画ですか全く…
故に我々はお二人に幸せになって頂くべく、ファンクラブの名称を変更する事に致しました。
その名も…
我ら、上司と天使をくっつけ隊
只今絶賛隊員募集中です！
.