シリーズのお店【混合】

□L'Etoile
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カランコロン…ッ!

『いらっしゃいませ。』

「名無しさんちゃん、元気やった?」

見慣れた常連客だった。

『あら、今吉さんじゃないですか。関西に戻るとか言ってませんでしたっけ?』

そう。

最近、あまりよくないことが起きて、実家に帰りたいとか言い出していたのだ。

「それな、何とかなったんやw」

『なるほど。それは、よかったですね。まぁ、座ってくださいな。』

「そうするわー。」

「はいっ、お水です!」

と、結愛が水を出す。

「ありがとうなぁ。ところで、マスター。」

『何でしょう?』

「バーに未成年働かしてもええんか?」

面白すぎて、グラスを落としそうになった…。

結愛なんか、真っ赤な顔をして、怒っている。


『アハハww結愛、よかったですね。』

「よくないですよ!!?」

「ほー、成程。」

察してくれたのか。流石だと思う。

『結愛はこう見えても、大学生なんですよ。今年20歳なんで、まぁ、いいかなと思って、採用したんです。』

「そりゃ、失礼なことを言ったなぁ」

失笑をこぼしていた。

まぁ、笑える話だ。

『いつものですか?』

「せや。頼むわー。」

『かしこまりました。』

といい、作り始める。

「マスター聞いてや…。」

と、今吉さんが話を切り出す。

『はい、聞きましょう。』

手を動かしながら。聞く。

「ワシ、今日、彼女にフラれてん…。」

意外だった。


『あら、今吉さんがフラれるなんて、意外ですね…。どうしたんですか?彼女さんとかなり仲が良かったと聞いてますけど…、』

と聞くと、

「ワシにも分からん。急に、別れようって言ってきたんや…。ワシ、めっちゃ大切にしとったんやで?」

と。
聞いたところ、別にこれと言った別れる理由などなかった。

ただ、今吉さんの仕事はかなりハードだったと聞いている。
だから、少し考えてみる。


『そうですねぇ…。彼女さんって、確か職場が違いましたよね?』

「そや。」

『今吉さん、彼女さんをほったらかしにしてませんでした?』

と尋ねると、少し心当たりがあったようだ。

「そうかもしれんなぁ…。」

『だったら、それなんじゃないですか?
あまり、会えなかったから、きっと彼女さん、不安になったんだと思いますよ?だから、あえて今吉さんを試してみたんではないでしょうか?』

「試す?」

補足し、説明した。

『別れ話をして、引き止めてくれるのを願っていたんではないでしょうか?』

というと、納得したみたいだ。

「まぁ、確かに、アイツならするかもしれんなぁ。」

『そうと分かれば、ぜひ、仲直りをしましょう。仲を取り持てるよう、取り持ちますよ。』

カクテルがやっと出来上がる。

『お待たせいたしました。』

「ありがとうなぁ。」

『電話を彼女さんにかけてみては?』

「きっと、来てくれへんで?」

と、心配そうにしているが、

『大丈夫です。そこは私が何とかしましょう。』

というと、今吉さんは彼女さんに電話をかけてみた。

「もしもし、おる?…すまん、ちょぉ、来てくれへんか?今、【L'Etoile】っちゅー、お店におるんや。…ん、そう、か。すまん…な」

多分、断られているのだろう。
仕方ない。一肌脱ごうと思い、

『すみません、電話、お借りいたしますよ?』

と、断りを入れ、電話を借りる。

『もしもし?あなたが翔一さんの"元"彼女さんでしょうか?』

"元"という単語を強めに言う、と、急に小さい声が聞こえた。

〈あなた、誰ですか…!〉

『フフッ、翔一さん、とてもかっこいいですね。私、好きになっちゃいました。勿論、取っても、いいですよね?』

〈んなっ…!!!〉

動揺しているのが伝わる。あと、もう少し脅してみる。

『あら、文句がありそうですね?文句があるのであれば、ぜひお会いして話し合いましょう?【L'Etoile】という店にいますわ。来なかったら、勿論、翔一さん奪いますから。』

〈っ!分かったわ…!〉

『では、待っています。』

と言うと、電話は切れた。

『ありがとうございます。勝手なことをして申し訳ないです。』

と、謝罪をする。

「いや、別に構へんで?むしろ感謝や。」

「マ、マスター!!え、私、今、修羅場が起きそうな気がするんですがっ…!!そんな人にお水を渡さないといけないんですか!!?勘弁してくださいぃ!!」

結愛が異常なまでに動揺している。まぁ、修羅場が起きそうになるのは確かである。

『安心して、結愛。』

とりあえず、結愛を落ち着け、梓に頼んで、結愛を厨房の方に入れた。

そして、彼女さんを待つことにした。





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