籠球

□相思相愛
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私がこの高校生活で最も大きな影響を与えた人は、
腹黒で、鋭くて、冷たくて、酷く優しい、18年間生きた中で初恋である、男の子だった。



『ねぇ、翔一くん』

私たちは、この高校を1か月後、卒業する。

「何や?花子」

今日この日、私の気まぐれである1つの質問をしてみた。

『翔一くんは、今の生活に満足しているのかしら?』

急になんやねん…。

と言いながら、答えてくれた。

「そりゃ、満足なわけないやんか。WC負けて…、心残りなんかめっちゃあるで。」

という、答が返ってきた。

『そう…。それは残念だったわね。私はそうでもないけれど。』

なんや、自慢か、というツッコミが返ってくる。


『自慢よ。短い青春を謳歌したんだもの。勝ち組に決まってるでしょう??』

というと、あきれ顔をしてくれた。

笑うと、

「でもな、そんなワシは唯一、満足やったことは、花子と出会えたことやな。」

ちょっと、その言葉には裏がありそうだったが、気づかないふりをする。
気づかないほうがこの関係を崩すことがなさそうだったから。だから、適当に流すことにした。

『ねぇ、翔一くん。私はあなたに出会えてよかったわ。』

短い青春。

小さな出会い。

儚い初恋。

そして、別れ。

「何や、消えるみたいな言いぐさやなぁ?」


察しがいいところは相変わらず、憎たらしい。

『そうね。消えるわ。』

特に驚くでもなく、ただ、そうか、と言っただけだった。

『私、アメリカに留学するから。もう、ほぼ会えないでしょう?』

そこで、ニヤりと笑われてしまった。

『何?何か言いたそうね。』

「知っとるか?花子。

ワシは花子に会おう思たら簡単に会えるっちゅーことを。」

つくづくふざけたことを抜かす男だ。

『どうして?』

やはりまた奴はニヤリと笑う。



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