誠乃戦隊

□八、上司の恋を応援するのも部下の仕事
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「軒下にでもいるんじゃね?」

「屋根裏とか」

「大壺の中とか」


「ご冗談を」

近藤がお妙のストーカーをしているということを、侑は知らなかった。ただ、好きな人がいるというのは聞いていた。その相手が、このお妙なのだろうと悟った。


「真選組トップのお方が、そのような所にいるはずがありません。侮辱するのも大概にしてください」

侑は今にも刀を抜きそうだ。だがそんな険しい雰囲気を打ち破ったのは、お妙。


「随分とあの人のことを大切に思ってるんですね。こんな近くに思っている人がいるのに、どうして私に付き纏うのかしら?」


「ちっ、違いますお妙さん!侑ちゃんは俺のことを上司として…「ほら、やっぱ軒下にいた」

銀時が指差すと、侑はショックのあまり倒れそうになった。まさか、まさか局長が犯罪者だったとは…。


「おい、大丈夫か?」

そう銀時が彼女の肩にぽんと手を置くと、物凄い速さで近藤が二人を離した。


「こんな奴と関わっちゃダメって言ったでしょ!もう!」

「お父さん?」

「君も、うちの大事な侑ちゃんに触れないでくれるかな?汚れちゃうから」

侑の肩を、汚れでも付いているようにサッサと払った近藤。


「うっぜーよコイツ!ストーカーの次は親バカか?アァン?」

「単なる親バカじゃないぞ!」


ぎゅ、と近藤に抱き着いた侑。


「きちんと愛されているんだ俺は!」

ガーッハッハッハ!と豪快に笑う近藤。しかし侑は、次に意外なことを言った。


「局長、違います。私、家族愛というものではなく、恋人に抱くような思いを、局長に…その……」

「え?」

とこれは近藤も驚きの展開だった。
頬を赤らめ近藤の胸に顔を埋める彼女の姿は、恋する乙女のようだ。


「え、あの…侑ちゃん?あ、そうだったの?」

可愛くコクン、と侑は頷いた。



「お似合いよー、近藤さん。あなたも侑さんのこと、嫌いじゃないんでしょう?」

何故か怒りマークを額に浮かべているお妙。


「え、お妙さん?いやでも俺は、あなたが一番で…「さようなら」

襖をパンッと閉めて、顔を合わせることさえしなくなった。



近藤は泣きたくなった。お妙さんにさようならと言われてしまった…と絶望顔。彼の最後の希望は、侑であった。この幸せそうな顔だけが、自分の味方だった。


「侑ちゃ…」

抱き返そうとすると彼女はスルリと抜け、近藤の真正面に立った。


「今ですよ局長」

「……え?」


近藤は、何が何だか分からない。真面目な顔して今ですよって、何?


「嫉妬作戦、成功したみたいです」

「シット?」

「今まで自分のことしか見ていなかった男に、違う女性が寄りつく。意外とお似合いな姿に、元の女性が嫉妬する。女心というのは、そのようなものなんです。今頃、本当の気持ちに気付き始めているでしょう」

「と言うことは、さっきのやり取り…」


演技である。近藤のことを思った侑が仕掛けたもの。このままストーカーを続けられるのも困るというのもある。



「やっぱりな。有り得ねーよ、侑ちゃんみたいな子がこんなゴリラ好きになるなんて。好きになるならぁ、俺みたいなカッコイイ男だろ?」

「銀ちゃん、イタイアル」

「モテないの自分がよく知ってる癖に」


そして最後に侑の一撃。

「ご自身の下半身を切り落として頂けるなら、好きになりますよ」

侑が男性の下半身が大嫌いなことは、第2話で実証済である。


「侑さんやめてください。銀さんの目が本気になってます」

「別に私は止めません」


「新八ィ、真剣持って来い」

「やめてェェェ!!オカマの入り口!!つーか死ぬから!!ちょ、神楽ちゃんも止めてよ!!」

「どうせ小便するくらいしか使い道ないアル」

鼻の穴をほじりながら、神楽は言った。
そんな彼女に対し、二人はギャーギャー煩い。





原因を作った本人はそれを放っておき、近藤に伝えた。


「何をぼーっとしているんですか。あなたがいるべき場所は、ここではありませんよ」

「侑ちゃん、俺の為に一芝居打ってくれてありがとう!」

「お礼なんていいです。これも、部下の仕事ですから」


グッと親指を立てた侑に対し、近藤は涙しながら言った。

「あり、がとう侑ちゃんっ…いや、侑様ァ!!」


そして、愛する者の所へ駆け出した。

「おおおおお!!今行きます、お妙さんんっ!!俺は、あなたじゃなきゃダメなんですよォォォォォ!!!」







「きっと、幸せになってくださいね。局長」

ぽつりと呟いた瞬間だった。



「失せろっつってんだろーが糞ゴリラぁぁぁあああ!!!」

というセリフと共に、ドガァァッという痛々しい音が聞こえた。


縁側に出て見ると、近藤がキラァンと遥か彼方に飛んで行く姿が。その方向には、丁度真選組屯所がある。


「作戦、失敗でしたか。難しいですね、恋愛というのは」

無表情でそう言っていると、彼女の携帯電話から着信音が鳴った。


「もしもし」

[ご苦労さん。無事近藤さんが帰って…いや、顔パンパンで帰って来た]

電話の相手は土方だった。


[お前も早く帰って来い。仕事溜まってんだぞ]

「副長。ご褒美に、門の前で裸で待っ…プツン、ツー、ツー、ツー

切られてしまった携帯電話をポケットにしまった。










「それでは皆さん、お邪魔致しました」










おわり。


おまけ

「待て待て待てェェ!!何勝手に終わらせてんだ!!俺の下半身がどうなったのか気にならないのかっ!?」

「下半身のその後なんてどうでもいいです。私は上半身にしか興味がありません」

「でもさ侑ちゃん。男の人の下半身も魅力的だと思うんだわ。筋肉質なキレイな足に、ゴツゴツしてる「結局切り落としていないなら、簡潔にそう言ってください」

「うん出来てません!だって大事なんだもの!!今使うことがなくても、いつか侑ちゃんと合体出来る日が来るかも「下半身出してください。一生合体出来ないようにしてやります」
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