誠乃戦隊
□七、少年はカブト虫を通し生命の尊さを知る
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侑は、一人でどこかに行った沖田を探しに来た。
今夜は満月で、灯りがなくても歩けるほどだ。
丁度上を見上げた時、沖田が木の上にいるのを見つけた。
「沖田隊長!」
「侑さんかィ。何の用で?」
「夕食の時間です!」
そう言うと、直ぐに飛び降りてきた沖田。腹が減っているようだ。
そして二人で、真選組の小屋まで歩き出す。
「沖田隊長」
「何ですかィ?」
月光に照らされている侑の姿は、いつもより優美に見える。黒髪がさらりと流れ、沖田はそんな彼女に目を奪われる。
「明日こそは、ハニー大作戦で頑張りま…「バーカ」
侑を置いて、沖田はずんずんと先に行ってしまった。
二人が帰り着くと、皆でバーベキューの準備をしていた。食べごろになるにはもう少しかかるらしい。
隊士らの話しを聞いていると、どうやら万事屋をこの森から追い出す為の作戦らしい。さきほどは奴らに蚊を放し、仲間割れをさせたという。
「オイ侑、団扇で匂いを奴らに届けるんだ」
「はい」
侑は命令通り、パタパタパタと団扇で扇ぐ。
そうすると香ばしい匂いが、万事屋のいるテントまで届いてきた。
「何アルか?この匂い」
肉はもう食べごろだ。真選組の連中は、万事屋テントの前で美味しそうにそれを頬張る。
土方がマヨネーズがねェぞ!と騒いだが、この事態を予測していた侑が、マヨネーズを持って来ていた。機嫌が良くなった。
万事屋がだらりと涎を垂らしているところに、沖田がやって来る。わざとらしく、食べていたバーベキューを地面に落とした。
「おーい沖田隊長!そんなのもういいって。こっちにいっぱいあるから戻って来いよう!」
「おーう。じゃっ俺はこれで。あっそれ別に食べてもいいですぜ」
戻って来た沖田に、侑は少し怒っていた。
「隊長、作戦と言っても食べ物を粗末に扱うなんて罰が当たりますよ」
「アンタは俺のお母さんですかィ?」
これで万事屋一行は、腹が減りこの森から出て行くだろうと踏んでいたが…
「ワハハ、キャンプにはやっぱり酢昆布だよな〜」
奴らは酢昆布を焼いて食べていた。痛々しくて見ていられない。
「彼らも、んむ…手強い、ですね」
侑はもちゃもちゃと肉を食いながらそう呟いた。
そして神楽がやって来た。絶対にやらねーぞ。と言う土方。だが、彼女は彼らの想像を超える行動を取ったのだった。
「うっぷ…」
自分の喉に指を突っ込み、吐き気を催す。
「おぼろろろろろろろッ」
「「「ギャアアアアアアア!!!」」」
焼いていた串を全部ダメにしてしまった。と言うか臭いも手伝い、隊士たちの食う気も失せた。
その端で、もらいゲロをした山崎の背中を擦っていた侑。「皆さんご愁傷様です」と呟いた。