誠乃戦隊

□六、カスタードクリームとマヨネーズの色は似てる
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「何と…」

侑は銀時に近付く。裸の銀時に。彼の目を見ることはなく、ずっと体を見ている。


「あ、あのー?」

「何と、美しい体なんでしょう!」


ガバァッと銀時に抱き着いた侑。


「これは希に見る天賦の肉体。はぁ、触れるなんて夢みたいです」

ほんのり顔を赤く染め、大胸筋を撫で続ける侑。


「銀さんんんんん!!」

う、羨ましいぞコノヤロー!と新八は思っていた。

抱き締められている本人は、こういうことが久し振りなのか、でへへと顔が緩んでいる。


「やったね銀ちゃん、モテ期到来アル!そのままベッドインしろヨ!」

「いや、いくらぎぎぎ銀さんでもな、いい行きなりは不味いって、わわ分かってるから!あののの、取り敢えず君も服を脱いで…「新八さんの鍛え方、素晴らしいです」

銀時の言葉は無視された。
今度は新八の方へ行く侑。置いてかれた銀時は、神楽に肩をぽんぽんと叩かれながら、彼女と新八の様子を見ていた。


「触っても?」

「え、えぇっ!い、いいですけど…」

着物の上から新八の筋肉を触る侑。うんうんと頷いている。何がうんうんなのか分からないが。

新八は顔を真っ赤にしながらビシッと立っていた。さぞ筋肉も硬直していることだろう。


「毎日素振り、してらっしゃるんですね。キレイな筋肉です。あなたが立派に成長した時が楽しみです」

こんなに褒められたことがない彼は、えへへと照れていた。



「あのー、ちょっと?俺のこと忘れてる?キレイなお嬢さん」

置いてけぼりの銀時。頃合いを見計らって、声を掛けて来た。


「あぁ、えっと…坂田さんですよね。確かにあなたは天賦の肉体の持ち主ですが、毎日だらだらと過ごしている様子が丸見えですよ」

「当たってるヨ、銀ちゃん」

これまでどれほどの肉体を見てきたか分からない侑。着物の上からでも大体の筋肉量が分かり、裸を見ただけでも体のたるみや筋肉の膨らみ具合で、どのような生活を送っているのかまで分かってしまう。


「おたく何?変態なの?」

自分の体をちょっと悪く言われたから、ちょっと不機嫌な銀時である。


「変態ではありません。真選組一番隊所属の、日高侑です」

その自己紹介に、誰もが驚いた。
真選組に女っ!?こんなにキレイな子がっ!?一番隊っ!?と。


「ちなみに好きなものは、男性の鍛え上げられた肉体と、戦隊ヒーローです」

それを聞いた時点で、誰もが思った。…コイツ、普通じゃない!と。



「そ、そうだったんですか。でも、どうしてあなたが銀さんに会いに?」

「もしかして依頼か?」

上半身裸でそう訊く銀時。

「銀さん、そろそろ服着てください」


「私はそのままでも構いませんが」

その一言に、銀時は身の危険を感じたらしい。直ぐに服を着て、また居間へやって来た。

銀時の格好を見て、侑はきらりと目を輝かせた。

「お似合いです、そのお召物」


「新八ィどうしよう!さっきちょっとけなされたと思ったら今度は褒めてきたよ!ツンデレなのかあの子は!どうしよ、俺そんな褒められたことないから勘違いしちゃうじゃんかよォ!え、もしかして…俺のこと好きなの?」

「知りませんよそんなの!」

「好きではありません。ご安心ください」

「あ、そうですか…」

妙に落ち込んでいる銀時。勘違いした自分が恥ずかしく、しかもはっきりと好きじゃないと言われたからだ。



「それで、俺に用ってのは?」

侑の向かいのソファに銀時と新八。神楽はと言うと、侑の隣で酢昆布の臭いを漂わせていた。


「用というほどではありません。私はただ、近藤さんと土方さんを負かしたという侍の姿を拝見したかったのです」

「顔見に来ただけだな?あのマヨみたいに斬りかかってこねーよな?」

「一般人相手に物騒なことは致しません」

きちんとソファに座っている侑を見て、銀時は安心した。新八もほっと胸を撫で下ろす。





「用事も終わったことですし、帰ります」

「え?もう帰るアルカ?」

席を立つ侑に、悲しそうな顔をする神楽。隣に座っていただけなのに、かなり仲良くなった気でいる姿は無邪気というか、何と言うか…。


「大丈夫です神楽さん。また来ます」

「やったネ」


それと…と付け加えた侑。

「坂田さんにも、お会いしたいですし」

少し笑ったように見えた侑の顔。


「…やっぱ好きなの?」

「違います」

それははっきりしている。


「あ、お土産のシュークリーム召し上がってくださいね」

そう言い終わる前に、銀時と神楽は冷蔵庫へ突進した。先に銀時がそれを取り出し、二人で奪い合いになる。



「それでは」

「はい。また来てくださいね」

侑の見送りは新八だけであった。彼女の背中が小さくなるまで見届けた。





「いやー、いい人でしたね侑さん」

新八が居間へ帰ると、銀時がうぷ、と吐きそうになっていた。テーブルには、ぶちまけられたシュークリームが3つと、食べかけのものが1つ。


「あれ、どうしたの?」

超食欲旺盛な神楽でさえ、それには手を付けず鼻をほじっている。


「これよく見てみろヨ」

ん、とシュークリームを顎で指す神楽。


んー?と、銀時が食べたシュークリームのクリームを見続けた新八。そして鼻に届く、少し酸味の香り。


「え、まさかこれって…」










「もう召し上がった頃でしょうか。土方さんオススメ、マヨシュークリーム」

フッと悪戯に笑った侑。
ちょっとした、彼女なりの復讐だった。










おわり。
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