誠乃戦隊
□五、部下の奪い合いする上司って大人げない
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後日、真選組の掲示板に一枚の張り紙がされていた。
配属決定通知
本日より、日高侑を一番隊に配属する。
そこを通った隊士らが言いふらす為、最早掲示物はもう必要のないものとなった。
沖田もそれを聞きつけ、早速侑を使ってやろうと彼女を探した。だがどこにもいない。あっれーおかしいな。と思いながらも、丁度出くわした近藤に尋ねた。
「侑ちゃんなら資料室にいたぞ。つーか総悟、仕事は?」
「ありがとうごぜーやす。そんじゃー」
「そんじゃーじゃないよね!コラ総悟!仕事をせんかァァァァァ!!」
近藤の叫びなど聞かず、逃げるように資料室へ向かった。
侑は黙々と、事件ファイルを棚に収めていた。
すると、空いていた棚の向こうからにょきっと顔を出す沖田。
「おはようございます、沖田隊長。何をしてらっしゃるんですか」
「アンタこそ何してんでィ。今日から一番隊に所属なんだから、俺に挨拶しに来るのが礼儀ってもんでしょう」
「申し訳ございません」
そう言ってから、ドン!とファイルを置いた。そして沖田の目の前まで行き、敬礼した。
「本日より一番隊所属の日高侑と申します。何卒、隊長のご指南の程をよろしくお願い致します」
「相変わらず堅苦しい人ですねィ」
「何ですかそれ」
侑はまたファイルを手に取り、仕事を続けた。これ以上沖田の相手なんてしたくないのだ。忙しいのだ、彼女は。
「何してんですかィ?」
「…ファイルの整理です。副長に頼まれたので」
「アンタの上司は俺ですよ。何で土方の野郎の言うことなんか…」
一番上の棚までは手が届かない侑。しかし諦めが悪い彼女は、いっぱい背伸びをした。
「自分で決めたことなんです。…っ、副長の、手伝いをするっ、て」
沖田はそれを見かね、ファイルを取り上げ一番上の棚にそれを収めた。
「ありがとうございます。だから、私は沖田隊長の部下ですが、副っぶ…」
侑は沖田に両頬を挟まれた。片手でがっしりと。声が上手く出せない。
「それ終わったらアイス買って来いよ。ちょっとでも溶かしたらお前の顔にスパーキングしてやっかんな」
ドSな笑みを侑に向けた。しかしそんな顔をされても、彼女はいつも通りこう言うのだった。
「…はい。味は何がお好みですか?」
「いちご」
今の顔に似合わず可愛い人。と侑は思ったが、決して口には出来ない。
すると、ガララと戸の開く音がした。誰かが来たらしい。
「オイ日高。お前いつまでやってんだ」
土方だった。
出くわした上司と上司。いつも以上に睨み合っている。
「直ぐに終わりますから」
奥の棚へ向かった侑。その後土方と沖田はその場で論争を繰り広げていた。
「侑さんはうちの隊に所属してるんで、命令すんなら俺を通してくだせェ」
「俺の仕事を助けると言ってきたのはアイツ自身だ。俺は仕方なく仕事を頼んだだけだ」
「じゃあ今の仕事が終わったら返してもらいますよ。俺だって頼みたい仕事があるんでィ」
「お前の場合はパシリとして使うんだろうが」
「そういう土方さんだって、この前マヨネーズの買い出し頼んでたじゃねーですかィ」
「あれはアイツの足腰を鍛えてやろうとだな…」
「奇遇ですね。俺もアイツの足腰を鍛えてやろうとアイス頼みやした」
「アイスだけでどうやって鍛えんだよっ!そんなことにアイツを使うってんなら、俺が使ってやった方がマシだ」
「あーやだやだ。一室に男女二人きりで、やらしいマッサージでもさせるんでしょう?」
「させるかァ!!大方書類整理だ。アイツはお前と違って頭の回転が速い。大助かりだ」
「あー、もっと下もっと下。違う、中心部分の…あっソコだソコ!あぁ、きもち「だから違うっつってんだろーがっっ!!」
ファイルを全部片付けた侑は、まず土方に向かって言った。
「副長、隊長にアイスを頼まれたので買いに行って来ます。仕事は、帰って来てからまたしますので」
今度は沖田に向かって言った。
「それではアイス、買って来ます」
「頼みましたぜー」
資料室から出ようとした侑。だが不意に、後ろから腕を強く掴まれた。