誠乃戦隊

□四、夏のアイスには気を付けろ
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先ほどまで和やかだった雰囲気が、ガラリと変わった。

二人は連絡があった場所へ走って向かう。近くに攘夷浪士が現れたと言うのだ。しかも、指名手配犯になるほど有名な一派の親玉。

先に見つけた見廻りの者たちが今必死で追っているらしい。



沖田は侑を横目で見た。
組に入って初めての制裁になり得る。だが、侑はいつもと変わらず冷静な目つきでただ走っている。

この人なら、心配いらねーか。

沖田はそう感じた。





連絡通りの場所に着いた時、細い路地を横切って行く黒い影が見えた。

追いかけていた隊士らは二人に気付いて声を張り上げた。


「沖田隊長!お願いします!」

「任せとけィ」


しかしもう一方の路地に入って行く影も見えた。侑は指示を受ける前に、そちらへ駆けて行った。





「お通しすることは出来ません」

侑は俊足の持ち主であった。直ぐに追いつき、浪士たちの前に立ち塞がる。


「女でも容赦はせんぞ!」

「その面、血で汚してやるぜ」

そう言った二人の男を、じっと見ていた侑。


「…るんでいます」

「あ?」

「たるんでいます、その腹」

落ち着いたトーンで言ったものだから、相手は腹を立てた。


「んだとこの女ァ!!」

「別にたるんでたっていいじゃんっ!!」

「そのような体で幕府を倒そうなどと言う妄想はお止めください。叶わぬ夢です。…あ、後ろのお二人は美しいお体ですね」

「何この子ォォ!!体しか見てねーじゃん!!とんだビッチだなァ!!」


侑の額にピキ、と筋が入った。実は彼女、ビッチだとか尻軽だとか言われることが大嫌いなのだ。しかし変態ならまだいいらしい。


「さよなら」


ダンッと地を蹴り、一気に前二人との距離を縮めた。
姿勢を低くし、素早く刀を抜く。居合により、二人の上体を斬った。

そして後ろにいた二人の男は、首を斬られた。
大量に吹き出す血。だが侑はそこから素早く離れ、回避した。





「やりましたねィ」

「…沖田隊長」

不意にやって来た沖田。彼はもうとっくに片付けていたのだろう。


「こんな血生臭ェとこイヤでしょう?帰りましょーや」

「はい」

侑は先に路地を抜け出た。

沖田は斬られた攘夷浪士を一瞬見、侑の後を追った。





「あ、報告書頼みまさァ」

「自分でお書きになってください。私自分の分しか書きませんから」

「何でィ。アイス奢ってやったのに」

「最後食べられましたけど」

「…結構気にするタイプか、アンタ」










屯所へ戻り、報告書を書いている侑。沖田も書くべきなのだが、彼は手を付けず、近藤の部屋へ来ていた。多分報告書の方は後で書くはず。うん、多分。



「近藤さん」

「何だ?総悟」


沖田は近藤の目を真っ直ぐ見つめ、今日考えたことを口に出した。





「あの人…侑さんを、一番隊に入れてもらいやせんかね?」










おわり。
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