誠乃戦隊
□四、夏のアイスには気を付けろ
2ページ/2ページ
先ほどまで和やかだった雰囲気が、ガラリと変わった。
二人は連絡があった場所へ走って向かう。近くに攘夷浪士が現れたと言うのだ。しかも、指名手配犯になるほど有名な一派の親玉。
先に見つけた見廻りの者たちが今必死で追っているらしい。
沖田は侑を横目で見た。
組に入って初めての制裁になり得る。だが、侑はいつもと変わらず冷静な目つきでただ走っている。
この人なら、心配いらねーか。
沖田はそう感じた。
連絡通りの場所に着いた時、細い路地を横切って行く黒い影が見えた。
追いかけていた隊士らは二人に気付いて声を張り上げた。
「沖田隊長!お願いします!」
「任せとけィ」
しかしもう一方の路地に入って行く影も見えた。侑は指示を受ける前に、そちらへ駆けて行った。
「お通しすることは出来ません」
侑は俊足の持ち主であった。直ぐに追いつき、浪士たちの前に立ち塞がる。
「女でも容赦はせんぞ!」
「その面、血で汚してやるぜ」
そう言った二人の男を、じっと見ていた侑。
「…るんでいます」
「あ?」
「たるんでいます、その腹」
落ち着いたトーンで言ったものだから、相手は腹を立てた。
「んだとこの女ァ!!」
「別にたるんでたっていいじゃんっ!!」
「そのような体で幕府を倒そうなどと言う妄想はお止めください。叶わぬ夢です。…あ、後ろのお二人は美しいお体ですね」
「何この子ォォ!!体しか見てねーじゃん!!とんだビッチだなァ!!」
侑の額にピキ、と筋が入った。実は彼女、ビッチだとか尻軽だとか言われることが大嫌いなのだ。しかし変態ならまだいいらしい。
「さよなら」
ダンッと地を蹴り、一気に前二人との距離を縮めた。
姿勢を低くし、素早く刀を抜く。居合により、二人の上体を斬った。
そして後ろにいた二人の男は、首を斬られた。
大量に吹き出す血。だが侑はそこから素早く離れ、回避した。
「やりましたねィ」
「…沖田隊長」
不意にやって来た沖田。彼はもうとっくに片付けていたのだろう。
「こんな血生臭ェとこイヤでしょう?帰りましょーや」
「はい」
侑は先に路地を抜け出た。
沖田は斬られた攘夷浪士を一瞬見、侑の後を追った。
「あ、報告書頼みまさァ」
「自分でお書きになってください。私自分の分しか書きませんから」
「何でィ。アイス奢ってやったのに」
「最後食べられましたけど」
「…結構気にするタイプか、アンタ」
屯所へ戻り、報告書を書いている侑。沖田も書くべきなのだが、彼は手を付けず、近藤の部屋へ来ていた。多分報告書の方は後で書くはず。うん、多分。
「近藤さん」
「何だ?総悟」
沖田は近藤の目を真っ直ぐ見つめ、今日考えたことを口に出した。
「あの人…侑さんを、一番隊に入れてもらいやせんかね?」
おわり。