誠乃戦隊
□一、人は見た目じゃ分からない
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無表情な面持ちから、それが本心なのかどうか分からない。が、確かに侑は今、土方が好きだと言った。
突然の告白に、された本人はたらりと汗を掻き、おどおどしていた。土方は意外と初である。
「うおぉやっぱりィ!?やっぱり副長かい!」
「あのね日高さん、この人実はね…」
と気に入らない隊士らが、土方の本性を侑に教えようとした。だが侑は、近藤の方を向いた。
「局長のことも好きです」
やっぱり無表情でそう伝える。
「え、えぇっ!?い、いやその、俺には心に決めた人がいるからさァ。あ、ありがたいんだけどォ…」
満更でもない近藤。好きと言われて悪い気がする男なんていないのだ。
「あなたも好きです」
「えっ?」
「あなたも」
「え、僕ですかっ?」
「あなたも」
「それマジっ?」
「皆さんのこと、好きです」
相変わらず無表情でこのセリフである。
この時、鈍い隊士以外の者たちはこう思っていた。
日高さんてもしかして、ビッチなのかっ!?
嘘だろォ!清楚に見えてまさかのォ!?
あ、ヤベ…想像したら興奮してきた!そういうプレイもありだと思うよ俺はァ!
あらぬ想像をする隊士たち。大概は変な性癖を持っている奴らである。
そんな中、スパァァンと会議室の襖が開けられた。さきほどまでいなかった、一番隊隊長の沖田総悟がスタスタと入って来た。
上半身裸で竹刀を持っているところを見ると、稽古をしていたのだろうか。
「あれ、皆さんお揃いで何してんですかィ?」
「そらこっちのセリフだ!昨日新入隊士の紹介するって言ってただろーが!!」
「あれ、そうでしたっけ?覚えてねーや。土方さんの抹殺の仕方考えてたからァ」
ニタァと笑う沖田。彼にとっては毎度のことである。副長の座をいつも狙っている。
「上等だゴラァ!!真剣持てこの野郎!!」
土方が沖田に斬りかかろうとした時、スッと彼の前に現れた侑。
「お前っ、どういうつもりだ?」
土方の方を向いていた侑であったが、無視してくるりと沖田の方を向いた。沖田の顔を見ているのではなかった。目を細め、沖田の裸を見ていたのだ。
「土方さん、もしかしてこの女が新しっ…」
沖田は言葉を止めた。眉をぴくぴくと動かし、今自分が置かれている状況を理解しようとしていた。
「「「「日高さぁぁぁんん!?」」」」
今の侑は無表情ではなかった。恍惚とした表情で、沖田に抱き着いている。胸に頬を摺り寄せ、今の状態を楽しんでいる。
「さすが、一番隊隊長ですね。大胸筋から腹直筋、外腹斜筋まで美しいなんて。あぁ、幸せです。これほどまでに整った体、そうそう見られるものではありません」
躊躇いもせずに、沖田の美しい筋肉を撫でる侑。その行動に、隊士たちはぽかーんと口を開けていた。そして沖田を羨ましいという目で見始める。
「近藤さん、誰ですかィこの変態女は」
侑に触られていた沖田は少しくすぐったい気持ちでいたが、平常心で侑を引き剥がした。
「申し遅れました。私、本日より真選組隊士として入隊致しました。日高侑と申します。無礼な振る舞いをして、申し訳ありません」
「へぇ、新入りの分際で俺の大事な体をまさぐったんですかィ?とんだ変態ですね、あんた」
沖田はドS王子である。目の前の侑は、完全に彼のターゲットになってしまった!
「申し訳ございません。私、男性の鍛え上げられた肉体を拝見したり触ることが好きなもので」
顔を赤らめながら言う侑。愛嬌はないが、こういう表情はたまにする。
「隊服を着られていても分かります。皆さんが、美しい肉体をされていること…」
「て言うことは、さっき侑ちゃんが言ってた好きっていうのは…」
「皆さんの美しい体つきが、好きです」
そっちなのォォォォォォ!!?
と、隊士らの心の声が揃った瞬間であった。
「お前は変態か?男の体が好きなんざ、その類だろ」
さっきまで少し動揺していた土方が聞いた。彼だって少し引いてるくらいだ。
「違います。だって私、汚ならしい男性の下半身だけは苦手ですから」
「「「「………」」」」
上半身だけあればいい、という考えなのだ侑の場合。
「不束者ですが、どうぞよろしくお願い致します」
おわり。
おまけ
沖田が何故上半身裸だったのか。
新入隊士紹介のことを忘れてたんじゃなく、単にさぼっていたから。
怒られないために、ちょっと稽古してましたーみたいな格好で登場!てな感じ。季節も夏設定だから、暑いんです。