誠乃戦隊
□二四、祭りのメインが花火だとは限らない
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江戸付近で行われる夏祭りは、もうこれで最後。毎年恒例の大規模な祭りだ。有名な歌手や芸人を呼んで、派手に騒ぐのが粋な楽しみ方。だが、その裏で喧嘩沙汰が多い。色んな者が集まる為、喧嘩を売ったり売られたり…だ。
そこで毎年、真選組の連中が駆り出されるという訳。去年侑は留守番だったが、今年は容赦なく仕事になった。
前日に、祭りのことでミーティングが行われた。
しかし誰も話を聞かないで喋っている為、侑も祭りのチラシに目を移していた。
「あ、キョウリウジャーショーあるじゃないですか」
スケジュール表を見ながら言った侑。途端に目を輝かせた。
だが、そんな彼女に近藤は申し訳なく諭した。
「すまん侑ちゃん。毎年の事なんだが、ショーを見ている暇なんて俺たちにはないんだ。もうホンット忙しいから!」
「そ、そうなんですか…」
下を向いて、今にでも泣き出しそうな侑。そして「局長なんて、嫌いです」と近藤にギリギリ聞こえるくらいの声で呟いた。
「えっ…き、嫌い?……あ、あっ、そうだ!今年は動員人数を増やそう!うん!そうしたら、ちょっとは暇が出来るかなー」
侑の顔色をうかがいながら、そう提案した近藤。だが…
「ちょっと待てェ!」
と鬼の副長が声を上げた。
「近藤さん、コイツの口車に乗せられてんじゃねーよ。どうせお得意の演技だろ」
「…副長なんて、嫌いです」
「いいのかトシ!侑ちゃんに嫌われても!俺は耐えられないから1時間のフリータイムを確保してあげようと思います!」
「だーから甘やかすなって言ってんだろ!」
近藤は騙せても、土方は騙せなかった。
相変わらずの無表情で座っている侑だが、心の中ではメラメラと土方に対する反抗心が芽生え始めていた。
「いいじゃねーですかィ、少しくらい自由時間があっても。ね、侑さん」
「はい、30分で構いません。あ、でも撮影会もあるんですよね。やっぱり40分で」
「じゃあ俺はその倍で」
「てめーらナメてんのか!!」
結局、祭りの見廻りをする者は休憩時間を取れないことになった。
全て土方が決めたこと。隊士たちからブーイングの嵐だったが、バズーカを一発打つとシーンと静まりかえった。
そして要項が伝えられた後、解散した。