誠乃戦隊
□二十、女の一番の化粧は笑顔
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一気にカタをつけようとした新八。4人の思惑と行動が交差し、残り2本となった得物は空中へと向かった。
4人同時に跳び上がり、木刀へと手を伸ばす。
パシッと手にしたのは銀時と九兵衛。
九兵衛が新八を斬るが速いか、銀時が敏木斎を斬るが速いか…。
だが九兵衛は、大将を狙い隙が出来た銀時を狙っていた。
銀時の皿目がけ、刀を銀時に向けて突く。だが…銀時は一瞬で体勢をくるりと変え、攻撃を避けた。
柄で九兵衛の皿をパリーンと割ると、彼女の持っていた刀を新八へと放った。
「…!!」
銀時の背後には敵の大将。体を固定され、真っ逆さまに地上へと落ちていく。
敏木斎の計画通り。石造の中心で胸を強く打った。勿論銀時の皿も粉砕。
そして、完全に余裕ぶっていた敏木斎。だがその額についている皿を狙っている者が、まだ残っていた。
キラリと光る新八の眼鏡。
「いけ、新八」
「おおおおおおお!!」
ドゴォ!!
木刀は真っ直ぐ大将の額に届き、皿はパァン!と割れてしまった。
今までやり合っていた柳生一門と恒道館メンバーも、ん?と勝負の行方をきちんと見た。
「かっ…勝ったァァァァ!!」
「新八ぃぃぃぃぃ!!」
神楽は直ぐ新八に向かって蹴りを入れ、「あんま調子乗んじゃねーぞコルァ!!ほとんど銀ちゃんのおかげだろーが!」と言ってはいるが、嬉しそうにしている。
近藤も「さすが我が義弟!!真選組を任せられるのは君だけだ!」と有り得もしない嘘を吐いているが、豪快に笑っていた。
「また敵が出来たぜィ」
侑の肩に肘を預けながらそう言った沖田。
「私は嬉しいですよ。新八さん、素晴らしい侍になりそうですし」
総悟さんよりも、と付け足すとケッと拗ねてしまった。
銀時は痛む体で歩きながら、こう発した。
「お前らは知ってたはずだ。こんな事しても、誰も幸せにならねェことくらい」
お妙は小さな声で、
「…ごめん…なさい」
そう言った。
「謝る必要なんてねーよ、誰も。みんな、自分の護りたいもの、護ろうとしただけ。…それだけだ」
地面に仰向けになったまま、九兵衛は呟いた。
「…あの男の言う通りだ。僕はみんな知っていた。自分が弱いばかりに、君が僕を護ろうとしていたこと。父上やおじい様が、僕を護らんとして男として育てたことも知ってる」
お妙は九兵衛の頭を、自分の膝に乗せてやった。そして彼女の顔をじっと見つめた。
「結局僕は…護られてばかりで前と何も変わらない。約束なんて…なんにも果たせちゃいなかったんだ」
唇を噛みしめ、悔しそうに言った。
「僕は…弱い。…何で、こんな風になっちゃったんだろ。…いつからこんな風に……」
拳を握り、目に涙を溜めながら言った。
「僕も…ホントはみんなと一緒にままごとやあやとりしたかった。みんなみたいにキレイな着物で町を歩きたかった。妙ちゃんみたいに…強くて優しい女の子になりたかった」
ポタ、と小さな涙が零れた。それは九兵衛だけではなく、お妙もだ。
「九ちゃんは…九ちゃんよ。男も女も関係ない。私の大切な親友。だから…泣かないで」
九兵衛の頭を優しく撫でながら、言った。
「それでほォ、お侍はん…」
「妙ちゃん」
ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し謝った九兵衛。
「でも…今日くらい泣いたっていいよね」
二人は強く抱き合った。
「女の子だもの」