誠乃戦隊

□十九、普段眼鏡をかけてる奴が眼鏡を外すとなんかもの足りない パーツが一個足りない気がする
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道場の外へ出て、改めて対峙する両陣営。
恒道館の側から押しかけてきた為、勝負のルールは柳生流に従うことになった。


九兵衛の方から説明がされた。

「ここに皿がある。これを各々自分の身体のどこかにつけてくれ。勝負は六対七のサバイバル戦。この柳生屋敷全てを使ってとり行う。この敷地内であればどこにいってもいい。敵の大将の首を先にとった方を勝ちとする」


侑はどこにつけようか考えていた。頭、首、胸、腹…。


「つまりこの皿は戦でいう首級。これを割られた者は、その場でこの合戦勝負からぬけてもらう。だがたとえ何枚皿を割ろうと大将の皿を割らねば勝利にはならん。逆にいえば、仲間が何人やられようと大将さえ生き残っていれば負けにはならん。ルールはそれだけだ。あとは自由」

「大勢で一人を囲もうが逃げ回ろうがいいってわけかィ。まるで喧嘩だな。いいのか?型にはまった道場剣法ならあんたら柳生流に分がある。俺達ゃ喧嘩なら負けねーよ」

自信有り気にそう言った土方。こちら真選組は、血の気の多い連中ばかりだ。


「これは柳生流に伝わる合戦演習。我々は年に一度これをとり行い、士気を高め、有事の際幕府がため戦にはせ参じる準備を整えているんだ」


その心構えに、今は敵ながら侑は拍手を送りたくなった。


「柳生流がただの道場剣法でないところをお見せしよう。君たちの誇る、その実戦剣法とやらを完膚なきまで叩き潰して、全ての未練を完全に断ち切ってやる」

こちらも自信有り気だ。流石、柳生家時期当主と言ったところ。


「上等だよコノヤロー。喧嘩なら負けねーぞ」

「ちょっと待て。六対七って、そっちは五人しかいねーじゃねーか。騙そうたってそうはいかねー」

「オイなめんじゃねーぞ。数くらい数えられんだヨ!!あやうく騙されるとこだったアル!!」

恒道館メンバーは7人。柳生流は今のところ5人。馬鹿にしているとしか思えない人数だった。


「先に宣言しておこう。僕とこの柳生四天王、この五人の中に大将はいない。我等の大将は既にこの屋敷のどこかにいる。我々を相手にせずそいつを探して倒せば勝てるぞ」

「なにを…」

銀時はムカついた為言い返そうとしたが、四天王筆頭の東城に遮られた。


「どのみち私たちはあなた方の皿を全て割るつもりなので、大将が誰だろうと関係ありません。それと、人数でそちらが有利なのはか弱き女性が一人いらっしゃったようなので…」

侑を一瞬見つめ、フフッと笑いながら行ってしまった東城。何だか女だからと馬鹿にされたような気がして、腹が立った。


「か弱き女性って…うちにいるのは馬鹿力娘と女侍しかいませんぜ。誰のこと言ってんだ?」

沖田の心無い言葉にまた腹が立ってしまった侑。
平然と「まず、作戦会議をしましょう。勝負開始まで20分ありますから」と場所を移動する時、地味に沖田の足をグリグリと踏んだ。










ドカッドカッと近藤は屋敷内の一本の木を蹴った蹴った。


「腹立つんですけどォ、すかしやがってホントムカつく奴らだよ!!あんな奴らに絶対お妙さんはやれんん!!」

「いや、アンタのものでもないですけど」


「もうムカつくからさァ、こっちも大将ムキ出していこうぜ!丸出しでいこうぜ!いつやられてもOKみたいなカンジで!!」

新八の股間部分に皿をつけた近藤。


「OKじゃないっスよ!!一発KOですそんなトコ!ってか僕が大将!?」

「あたりめーだろ。不本意だが俺達ゃ一応恒道館の門弟ってことになってんだ」

「んなこと言ったって、もっと強い人が大将の方が…」


自分では絶対に力不足だと、卑下している新八。だがそんな彼の肩に手を置き、大声で近藤が言い張る。

「心配いらんぞ!新八君は俺が命を張って護る!色々話したいこともあるしな!ウチに住むか、俺がそっちに住むか…」

「すいません!誰か他の人にしてください!」



「新八さん、大丈夫です。近藤さんは頼りになりますし、自分にも自信を持ってください。毎日素振りをしている成果を、ここで発揮すればいいんです」

「いやでも…」

「鍛え上げられた体は、嘘を吐きません」


いいことを言った風だが、既に彼女はうふふと新八の上半身を触っていた。…やっぱりだった。



「んなことより、みなさんどこに皿つけるんでェ?これでけっこう生死が分かれるぜィ。土方さんは負けるつもり一切ないんで、眼球につけるらしでさァ」

「オイ、眼球えぐり出されてーのかてめーは?」


「グダグダ考えても割れる時は割れるんだよ。適当に張っとけ適当に」

銀時は「よし、俺はココにしよう」と自分の皿を土方の右目につけた。


「だからなんで俺だァァァ!!てめーの皿だろーがァァ!!」

「片眼だけだとむこうの九兵衛君とキャラがカブるだろーがァ!空気を読めェェ!!」

「読んでみろ土方!!お前なら読めるはずだ土方!!」

「だまっとけやドSコンビ!」



一方侑はと言うと、皿を額につけていた。後頭部でキュ、と紐を結ぶと何だか気合いが入った。


「お、侑ちゃんはそこにつけたか!」

「はい。何だかここからビーム出そうじゃないですか。カッコイイじゃないですか」

「うおっホントだ!超カッケーじゃんそれェ!」


何があろうとビームなど出るはずもないのに、近藤と二人盛り上がる姿はただのガキだった。



「銀ちゃーん!!私スゴイこと考えたアル!足の裏コレ、歩いてたら見えなくねスゴクネ?コレ?」

自分の右足の裏をヒョイと見せた神楽。そこに皿がつけてある。


「これなら絶対気付かれないアル!」

一人自信に満ち溢れながら足を地面に下ろすと、パキッと音がした。





「痛っ〜。なんか踏んだアル、切れたアル足」


パンッ

と銀時が神楽の頭を殴った。

「ごまかしてんじゃねェェ!!お前何してんだァ!!勝負始まる前に皿粉砕って!!」

「どうすんだコレ!?どうなるんだコレ!!」

「ちょっと取替えてこい!柳生の人に言って、皿もらってこい!」


そうするしかなかったが、土方が「オイ待て」とそれを止めた。


「敵の作戦がわからねー以上単独行動は危険だ。近藤さんは大将の守備。こっちは二手に分かれて別ルートで敵の大将を狙うぞ」

「じゃあ私と銀ちゃんで決まりアルナ。侑もこっちでいいけど、そっちの汚職警官チームに華がなくなるネ。我慢するアル」

「てめーらと組むつもりなんざサラサラねェよ。丁度ツラ見んのは嫌になってたトコだ。こっから別行動だ。行くぜ総悟、侑」


土方がそのように作戦を立てたと言うのに、

「土方さん。ドSコンビ勝手にガンガン行っちゃいました」

この有り様だ。


「っ、仕方ねェな。オイ侑、お前は俺と…」

「折角のお誘いですが、申し訳ありません。私どうしてもあの東城さんという方をギャフンと言わせたいのでお先に」


クラウチングスタートでダダダダダーッと走り去ってしまった侑。



「オイちょっと待てェェェェェェ!!」



土方の呼ぶ声など、もう彼女の耳に届いてこなかった。
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