誠乃戦隊

□十八、昨日の敵は今日もなんやかんやで敵
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スナックすまいる。お妙が働くこの店に用があると言って、土方は部下を連れてやって来た。



「キャアアアア土方はん!土方はんやわ!」

「今日はあのゴリラじゃなくて土方はんが来てくれはったわ!」

「キャアアア!こっちの席にきて土方はん!」


キャバ嬢から逆に指名されるとは、流石モテ男土方である。腕を引っ張られたり体を触られたり。だがそんな光景を見て、気に入らない者が一人。…もう察しがつくだろう。


「土方さんに触らないでくださいィィ!!(下半身なら可)」

侑である。自分のお気に入りの上半身を触られたとあっては、コイツが黙っちゃいない。キャバ嬢らに睨みをきかせ、土方の上半身に抱き着く。
引き剥がそうと試みた土方であったが、こういう時の侑の腕力は強い。はぁ、と溜め息を吐いて諦めた。



「土方さん、御指名は?」

「………」


不本意ながら、だった。





「どーいう風の吹き回しですか?最近ゴリラが大人しくなったと思ったら、今度はアナタですか」

お妙を指名した。


侑は相変わらず土方の隣にいて、彼の体に纏わりついている。出された烏龍茶にも口を付けていない。


「真選組の皆さんは豪気な方が多いんですね。税金使ってキャバクラ遊びですか」

「俺だって来たくて来たんじゃねーってんだよ」

「で?近藤さんは知っているの?」

「あ?」

「私たちがこういう関係にあるって」

「こういう関係ってどういう関係だよ」


え、そうだったんですか!?というような顔をしている侑に対し、土方は一発頭を叩いた。


「まったくモテるというのも困ったものね。上司と部下で一人の女をとりあいなんて、まるで昼ドラだわ」

「オイ何勝手に話進めてんだ。俺はだな…」

「でも私はそんな安い女じゃないの。月9みたいな恋愛じゃないとお断りよ」


そこで侑が口を挟んできた。

「私はドラマとかよく分かりませんけど、恋愛ならば戦隊のレッドとピンクのような関係に憧れます」

「おめーは黙ってろよ。違うっつってんだよ。俺はだな」

「でもあなた、どう見ても日テレ顔ですよね。土曜9時にマヨラー探偵とか、イロモン系ですよね」

「誰がマヨたんだ。まァ俺はいい。だが近藤さんはどうだ。月9顔じゃねーか。何回目のプロポーズ顔じゃねーか」

「近藤さんは火サスに出てくる死体顔です」


お妙は色々と酷いと思う。


「土方さん。まさかアナタ近藤さんのためにここに…」


すると、お妙の前にザザッと立ち並ぶ真選組隊士たち。それを見た侑は、ここへ来た理由を思い出し、自分も!とその中に入った。


「「「お妙さァァァん!!」」」

皆そう声を張り上げた。


「「「どうか局長の女房に…俺たちの姐さんになってくだせェェ!!」」」

そして土下座だ。


「なんですかコレは。腰の低い恐喝?」

「…実はな、今近藤さんに縁談の話がきてる。あの人も三十路近い。世間体も考えろってんで、うえの方から来た見合い話なんだが…。最近のあの人はアンタにふられ続けて疲労し、性別がメスなら誰でもいいという限界まできている」

実は侑のことも女として見ていることがあり、土方に相談をしていた。勿論やめておけ、と返事をしたらしいが。

「…恐らくこの話、飲む」

「アラ、よかったじゃないですか。これで私へのストーキングもなくなるし、近藤さんも愛妻ができるし、みんな幸せになれますね」

「ああ。なんせ猩猩星の第三王女バブルス様だ。逆タマだよ」


土方は見合い写真を開き、お妙に見せた。


「まァ。夫婦は顔が似てくるっていうけれど、既に長年つれそった夫婦のようだわ。ゴリ二つよ」

「姐さんよく見て!!微妙に近藤さんと違うよ!!そっちはモノホンだよ!!」


写っているのはウホ、という鳴き声が聞こえてきそうなほど、本物のゴリラ。


「お願いだ姐さん!俺たちこのままじゃその化物姐さんと呼んで一生敬わなきゃならねェ!」

「私はそのようなゴリラさんに、近藤さんの上半身は渡せません!しかしお妙さんなら、まだ…えぇ、ちょっと妬いてしまいますけど、大丈夫です!」

上半身?そんなのいらないわ。て言うか近藤さん自体いらないわ。と侑に向かって訴えたお妙。


「今の局長止められるのは姐さんだけだ!!」

「大丈夫よ。毛深い女は情も深いといわれているの。きっといい奥さんになってくれるわ」

「深すぎるんですけど!情も毛も彫りも深すぎるんですけど!」

まぁ、確かにそうですね、と王女の顔を思い出していた侑。


「この通りだ姐さん。結婚までとはいわない!止めてくれるだけでいい!男がこれだけ頭下げてんだ。その重み!義に通ずる姐さんならわかってく…」

ガシ、と山崎の頭を鷲掴みにしたお妙。途端にそのまま持ち上げてしまった。凄い腕力、と侑が憧れてしまうほどだ。


「アラ、どこが重いのかしら?この頭」

すると、

「スカスカの脳みそしか、つまってねーだろうがァァ!!」

並んでいた隊士らに向かって山崎をブン投げた。


「てめーらしつこいんだよォ!」

「ちょっとォォ、お妙ちゃんん!!」

「んなマネしたらまた勘違いされて、ストーカーに拍車がかかること山の如しだろーが!」


お妙さんが暴れ出したァ!!と侑も止めるのに精一杯だ。



土方は静かに携帯を開き、近藤に連絡をした。

「もしもし近藤さん。…やっぱり無理だった。もう覚悟決めるしかねーな。
イヤよイヤよも好きのうち?いやイヤなもんはイヤなんだろ。それからよォ、俺ァもうこんなお使いさせられるのは御免だぜ」


ドガシャ!!

行き成り、土方の席のテーブルまで人が倒れ込んできた。

それをやったのは、ガキとも思われる侍だった。笠を被っている為顔が見えないが。


「なんだ、てめェェェェ!!」

「貴様ら、こんな多勢で女に手を出すたァそれでも侍かね?」

「何言ってんの!!どう見ても俺たちが姐さんにボコられてただろーが!!それでも僕らは侍です!!」

「このひとに手ェ出してもらっちゃ困る。僕の大事な人だ」


隊士たちはその侍を囲み、ガンを飛ばした。

「あ゛――!?チビ助が何ナマ言ってんだ!!」

「オイ、やめろ。これ以上店騒がすな。引き上げるぞ。それからガキんちょ、お前も来い。お前未成年だろ。こんな店に来ていいと思ってんのか」


侑も未成年であるが、今回は付き添いなので問題ないらしい。


「オイ貴様。今何て言った?」


侑は直ぐに感じ取った。侍が抜刀の意を決したのを。


「ひじ…」

届けた声よりも早く、侍は土方に刃を向けていた。


「僕は、ガキんちょなんかじゃない」

侍の神速技に隊士らは気を失い、土方は自分の刀を抜き、ギシシとその峰を受け止めていた。


「柳生九兵衛だ」

「きゅ…九ちゃん!?」
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