誠乃戦隊
□十四、真っ赤なお顔のサンタクロース
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クリスマス。恋人たちが騒ぎ出す聖なる夜。こういうパーティー的な行事がある日によく事件は起きる。人々の心もざわめき出し、犯罪を犯したり、被害に遭ってしまうのだ。
今日は珍しく夜の見廻りだ。
運転手としては、街のライトがチカチカ光り過ぎており、少しうざったい。
助手席に座っている上司土方は、煙草の煙を吐き出し愚痴をこぼす。
「目に見えんのはカップルばっかで腹立つな。こっちは遅くまで変態部下と見廻りだってのに」
聞き捨てならないと、侑は言い返した。
「変態ではありません。ただ車内で二人きりなので、チャンスをうかがっているだけです」
勿論、土方の体を触るチャンスである。
「ヤベ、帰りてェ」
と言っても仕事だから無理な話だ。
彼女に隙を見せてはいけない。見せた瞬間襲ってくる。
土方は仕事とは別の緊張感も持っていた。
「けれど、副長は今年のクリスマスはご予定がなかったのですか?彼女さんは?」
「いてもいなくても仕事休めるかよ。年末年始は事件件数が増える時期だからな」
「あぁ、いらっしゃらないんですね」
馬鹿にしたような言い方だった。
「人を負け犬みたいに言うんじゃねェ!そういうお前だっていねェだろーが!」
「いなくても結構です。今夜の私の彼氏は土方さんの上半身なので」
「気持ち悪ィわ!しかも何で上半身のみっ!?」
「正確に言うと、首から腰までです」
「顔もはぶかれた!?」
侑が必要としているのは上半身についている筋肉だけであるから、頭部はいらないのだ。
「お前本当に変な奴だな」
「私から見ると、副長も結構変です」
マヨネーズ偏食症ですもの。と生意気にもそう言った。
最近こういう言動が多い為、昔の生意気でない侑を懐かしく思っていた。
「やっぱ、かぶき町だな…」
スーと煙を吐き出す土方。
事件が起こりやすい町は、やっぱりここである。
空き地にパトカーを停め、二人は寒い中歩いて見廻る。
周りはカップルばかり。イチャイチャしているのを見ると、どうしてもイラ立ってくる。こっちは寒いし仕事だし、寒いし仕事だし…。
土方はズンズン歩いていたが、ふと隣にいたはずの侑がいないことに気が付いた。またイラ立ち度が増す。
ったくどこ行きやがったんだ、と後ろを振り返って見ると、目の前に缶コーヒーが現れた。
「これどうぞ」
侑はこれを買いに行っていたらしい。
「…気が利くじゃねーか」
「少しは温まるかと思いまして」
土方は侑から缶コーヒーを受け取った。無糖の物で、きちんと好みも分かっている。
早速飲もうとプルタブに手を掛けた瞬間、ヤな男の声を聞いてしまった。
「あ、侑ちゃんじゃーん」
「坂田さん。こんばんは」
「え、一人?そうかそうか。じゃあちょっと一緒に肉まん買いに行か「オイ、俺が見えねェのかクルクルパーマ」
「あれ、いたんだ。気付かなかったなー」
そのまま気付かぬフリをしたかったような口振り。
「それよりさぁ、聞いてくれよ。神楽がよぉ、肉まん食べたいって言うから買いに来たんだけど、今日はシャレたもんしか売ってないのよ。庶民派な俺たちはどうすればいいワケ?」
さぁ、と思った侑だったが、まだ付け加える銀時。
「周りはカップルだらけだし、一人だし、寒いし…。なぁ、温めてくれよ。俺の心と体を温めてくれよお巡りさーん!」
銀時は無遠慮に、侑に抱き着こうとした。だがヒョイ、と横へとかわされてしまう始末。
「俺の体に触りたくないの?」
「私は坂田さんより副長が好きなのですが…そこまでおっしゃるなら触らせて頂きたいです」
失礼しますと断りを入れてから、少し触った侑。相も変わらずいい体をしていたようだ。
その様子を見て、眉間に皺を寄せる土方。侑の首根っこを掴み、銀時から引き剥がした。
「遊んでんな、行くぞ」
「別に遊んでなどいません」
それでは、と銀時に一礼をして土方について行った侑。
「何だよ多串くん。ヤキモチか…」
一人ぽつんと呟いた銀時であった。