誠乃戦隊
□十二、ミイラ捕りがミイラに
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過激派の高杉らと、穏健派の桂らがやり合ったと、監察の山崎が調べ上げた。
両陣営とも被害は甚大であった。しかし桂の方は、ロクな手駒を持っていなかった。何故彼がそこまで高杉とやり合えたのか…。情報があったのは、妙なガキを二人連れた、バカ強い白髪頭の侍が助っ人だったということ。
土方は山崎に命じた。その怪しい白髪頭の侍…かもしれない坂田銀時を探れと。そして黒だった場合、斬れと。
そうして山崎は、忍者姿で恒道館道場へやって来た。銀時は何故か療養中で、ここに来ているらしいからだ。
外壁の屋根に上り、辺りを見回す。そこから侵入するべく、降りようとした時だった。
「山崎さん?何してらっしゃるんですか?」
後ろを振り向くと、侑が門前に立っていた。一体何をしに来たのか。
「あ、あなたこそ。俺は、仕事だけど」
「お仕事。それは、お疲れ様です」
一礼した侑につられ、山崎も少し頭を下げた。
「いやそうじゃなくて!侑さんはどうしてここにいるの!?」
そう聞くと、侑はもじもじしながら言った。
「べ、別に…坂田さんのことが心配で来たわけじゃありませんから。弱っている時に、少しでも近藤さんと土方さんの仇討をしようと思って、来ただけですから」
「ツンデレ?」
「ち、違います!」
「でもお土産持ってるよね。完璧見舞いに来たよねそれ」
侑の手には、有名なケーキ店の箱が握られている。
「違いますから!中身はマヨネーズまみれになったケーキですから!」
こう言っている侑だが、今回のものは本当に美味しいケーキだ。単に恥ずかしかったから、嘘を吐いただけ。
山崎は、少し顔を赤くしながら弁解する侑を可愛いなと思った。
侑はドンドンドン!と門を強く叩いた。
山崎は気付かれぬよう、足音も気配も消して、侵入した。
「あ、侑さんこんばんは」
新八が門を開け、出て来た。
「こんばんは。あの、坂田さんはいらっしゃいますか?」
「あ、ごめんなさい。銀さん、ちょっと今怪我していて…」
「存じています。その、お、お、お見舞いに参った次第です」
どこか恥ずかしげに言う侑を、可愛いと思った新八。思考回路は山崎と似ているようだ。
それじゃあ、どうぞ。と新八に案内される侑。
そして銀時が寝ている部屋に通された。
「ダメですよ、入院なんてしたら。どうせ直ぐ逃げ出すでしょ。ここなら直ぐ仕留められるもの」
お妙の声だ。仕留める?と侑は首を傾げた。
「ホラッ!今もまた聞こえた!仕留めるなんてありえないもの!言う訳ないもの!」
銀時がビクビク怯えているところへ、新八が声を掛けた。
「銀さん、侑さんがお見舞いに来てくれましたよ」
「は?マジ、で…?」
「こんばんは」
さっきまで怯えていた顔はどこへ行ったのか。パァッと明るくなり、彼女の元へ行こうと体を動かしたら、お妙に睨まれた。またさっきのように、怯えた顔になってしまった。
「あの、これどうぞ。ショートケーキです」
「マジか!?いやー、ありがとなー。じゃあ早速「あら、ありがとうございます。でも怪我人にショートケーキは刺激的だわ。後で私たちだけで頂きましょう」
やっほー!と大喜びの神楽。侑ありがとー!と抱き着いてきた。
「代わりと言ってはなんですけど、卵粥を作ったの。でも動けないから食べさせてあげないとね」
お妙の手にあるものは、卵粥らしいもの。どう見たってダークマターだ。
銀時は侑を見て、助けて…と無言のシグナルを送った。
近藤さんと土方さんを傷付けた罰が当たったんですよ。どうか安らかに…とこちらも無言で送った。
「姐御、私にやらして」
「ハイハイ。神楽ちゃんはお母さんね」
お妙の手から神楽の手へ渡る器。が、手を滑らせて床に落としてしまった。先程長刀に突かれて出来た穴に、少しだが落ちていく。
ギャアアアアアアアア!!
と、床下に潜り込んでいた山崎が苦しんでいることは、誰も知らない。
「向こうに残りがあるんで取って来ます」
そうお妙が動いた瞬間、銀時はダッと脱走した。
「動くなっつってんだろーが!!」
これが怪我人に対する思いやりなのだろうか。殺す勢いでお妙は長刀を振るっている。
「ぎゃああああ!!」
山崎も災難である。
「冗談じゃねェ!こんな生活身がもたねェ!」
「待てコラァァァ!天パー!!
侑も一緒に、あの腐れ天パ探すネ!」
コクンと頷く侑。
「見つけた場合、とどめ刺してもいいですか?」
「いいわよ侑さん。暫く動けなくしてやって」
はい。と返事をしてから、侑は庭に飛び出した。
すると、道場の要塞モードがオンになったとかで、ネズミ一匹外に出られなくなってしまった。逃げようとしていた山崎も、道場内に閉じ込められてしまった。