誠乃戦隊
□八、上司の恋を応援するのも部下の仕事
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侑は朝稽古を終え、隊服に腕を通す。もうこの黒服にもすっかり慣れたなぁと思っていると、土方が外から彼女を呼んだ。
直ぐに出て行くと、彼はいつもの隊服ではなく着流しを着ていた。そう言えば昨日、非番と言っていたことを思い出した侑。
着流しは良い、と彼女は思う。簡略化された男性の召し物。袴と違い、衿を大幅に開けている。そこから見える鎖骨や胸筋がたまらないらしい。
「どこ見てんだ変態女」
「仕事が終わったらきちんと見てもよろしいでしょうか?」
スパーンッと土方に頭を叩かれてしまったことは、言うまでもない。
「昨日言っといた仕事にもう一つ仕事が加わった」
「何でしょうか」
「近藤さんを連れ戻して来い」
はい?と聞き返すと、土方はいつものように煙を吐いた。
「あの人の分の書類が溜まってるんだよ。昨日非番だったんだが、まだ帰って来てねェ。ま、大方いる場所は分かってんだけどな」
至急だ。と言われたからには、急いで連れ帰らなければならない。場所を土方から伝えられ、直ぐに向かった。
恒道館道場。ここに近藤がいるという。
侑は門の前に立ち、ドンドンドン!と叩いた。
暫くすると、中でこちらに駆けて来る音が聞こえた。
「はーい。今開けます!」
どこかで聞いた声だと思った。門がゆっくりと開き、その声の主が分かった。
「新八さん」
「あ、侑さん!おはようございます」
「おはようございます。ここは、新八さんの邸第なのですか?」
「ええ、まぁボロ屋敷なんですけどね」
ははは、と笑っている隙に、侑は新八の腹筋に手を伸ばした。
「って、行きなり何してんスか!?」
「成長過程を見るというのも、いいものです」
「いや、ちょっとくすぐったいので…やめっ」
こんなやり取りをしていると、後ろの方から美しい女性がやって来た。新八の姉、妙である。
「新ちゃん?どなただった、の……」
二人の様子を見たお妙は、目を見開きこう言った。
「そうだったの新ちゃん。もう、そんな年頃になったのね」
「え?いや姉上、違います!」
「水臭いじゃないの。さ、遠慮せずに上がってくださいな」
「それでは、失礼致します」
「アンタもちょっとは否定しろよォ!!」
という感じで、侑は新八の家に上がらせてもらえた。理由は何であれ。
「あら、そうだったの。ごめんなさいね、勘違いして」
「いいえ。こちらこそ、大事な弟さんに手を出してしまって申し訳ございませんでした」
「何か違くね?」
出されたお茶を味わう侑。すると、誰かから抱き着かれた衝撃があった。
「侑、今日暇アルか?」
「隊服着てんのに暇なわけあるかよ。そんなんで遊んでたら税金泥棒だろーが。金返せってんだコノヤロー」
「銀さんは言えるほど納めてませんよね」
今日は、万事屋がここに勢揃いしていた。暇だから。仕事がないから遊びに来たらしい。
「神楽さん、申し訳ありません。今日は仕事でここに参ったのです」
えー、と残念がる神楽。侑に抱き着いていたが離れた。
「お仕事?」
「はい。局長がここにお邪魔していないでしょうか?」