誠乃戦隊

□七、少年はカブト虫を通し生命の尊さを知る
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真選組は暑い中、将軍様が飼われていたペットの瑠璃丸(カブトムシ)を探索しに森へやって来た。こんなことまで頼まれてしまうこの組は、一体何なのであろう。

勿論侑も出動している。
近藤がハニー大作戦とやらでカブトムシを誘き寄せると言うので、彼女はその手伝いだ。

ふんどし一丁の近藤の体全体にハチミツを塗る。侑はとても嬉しそうだ。だって近藤の体が今見放題なのだから。


「はい、出来上がりです」

「ん、ありがとう侑ちゃん。よし、適当な場所に立っておこう」

「私も着いて行きます」

ただ近藤の身体を見ていたいだけ。

「おおそうか。カブトムシが来た時には、素早く掴まえてくれよ!」

「はい、お任せください」



そうして、適当な場所に近藤が立っていると、誰かが来る音が聞こえた。

侑は気にも留めず、近藤の体を見続ける。



「銀さん帰りましょうよ。この森怖いです」

「身体中にハチミツ塗りたくってたネ」

「気にするな。妖精だ妖精。樹液の妖精だよ。ああして森を守ってるんだよ」

森へやって来たのは、万事屋一行であった。


「でもなんか見たことある人だったんですけど…」

「ゴリと侑だったヨ」

「じゃあゴリラの妖精と、それを見守る変態妖精だ。ああしてゴリラを守ってるんだよ」


その後、木にマヨネーズを塗りたくる土方も見掛けた奴ら。進むうちに、何とまあでっかいカブトムシを見つけた。それを落とすべく、ガンガン木を蹴る3人。そして、ズドーンと地に落ちたカブトムシを見てみると…

「何しやがんでェ」

沖田であった。彼は仲間のフリをし、カブトムシに接触する作戦を立てていたのだ。


「ちょっごめん、起こして。一人じゃ起きられないんでさァ」


「オイ何の騒ぎだ?」

ぞろぞろと真選組の者たちが駆けつけてくる。

侑はまだ起きられていない沖田の所へ駆けて行き、上体を抱えながら起こした。

「ありがとねィ」

「いいえ」



「お前ら!!こんな所で何やってんだ!?」

近藤は、ハチミツまみれのまま聞いた。


「何やってんだって…全身ハチミツまみれの人に言う資格があると思ってんですか?」

「これは職務質問だ。ちゃんと答えなさい」

「職務ってお前、どんな職務についてたらハチミツまみれになるんですかァ?」


そこで土方が煙を吐きながら言う。

「お前に説明するいわれはねー」

「カブトムシ取りだ」

「言っちゃったよ、もうちょっとこう何か…」


あぁん!?カブトムシ取りだと!?仕事しろ腐れポリ公!!とわーわー喚く万事屋。そこで侑が口を挟んだ。


「これも立派な仕事です。申し訳ありませんがお邪魔です。出て行ってくださいますか」

「おーいお前、この前はよくもあんな物を食わせてくれたな!!俺はね、侑ちゃんのことを信じてたわけよ!!なのにあんな仕打ちはないんじゃないの!?惚れた男に対し…「いや、惚れてませんから。早く出てってください」


「侑、それはあんまりヨ!!」

神楽の話を聞くと、彼女は死んだフンコロガシ定春28号の仇を討つ為に、ここへ来たらしい。何としても幻の大カブトを取り、沖田を叩きのめすのだと言う。
しかしフンコロガシが死んだ理由が、カブトムシ相撲を見て、興奮した神楽がそのまま握り潰してしまったという…アホなことが分かった。





「総悟、お前また無茶なカブト狩りをしたらしいな。よせと言ったはずだ」

「マヨネーズでカブトムシ取ろうとするのは無茶じゃないんですか?」

「トシ、お前まだマヨネーズで取ろうとしてたのか。無理だと言っただろう」

ハニー大作戦でいこう!と言った近藤に侑は賛成した。

「そうですよお二人共。局長がおっしゃっているんですよ。早く服を脱いで準備を…っ、いで」

土方と沖田は侑の頭にチョップをお見舞いした。





「ああ゛アレ!局長見てください!」

双眼鏡を覗きながら叫ぶ隊員。前方真っ直ぐの木に、カブトムシがいると言う。

万事屋と真選組は直ぐにその木に向かって走り出した。



「「「カブト狩りじゃああ!!」」」



「待てコラァァ!ここのカブトムシには手を出すなァ!!帰れっつってんだろーが!!」

「ふざけんな!一人占めしようたってそうはいかねーぞ、カブトムシはみんなの物だ!いや!俺の物だァ!」


土方と銀時が話している横をドドドド!と抜いて行ったのは侑。彼女が俊足の持ち主だということは、第4話で説明済みである。


「侑!そのまま行けェ!」

「了解しました」


木の下までやって来た侑。そしてあることに気が付いた。


「私、木登り苦手でした…」

「使えねー女だなてめェはよう!!」


侑がそこでおろおろしている間に、神楽がピョーンと跳んだ。


「カブト狩りじゃあああ!!」

しかしその足を掴んだ沖田。

「カーブト割りじゃああ!!」

そのまま地面に叩きつけてしまった。女子だろうと手加減なし。

そして銀時が沖田を木に蹴りつける。

「カブト蹴りじゃあ!!」


登ろうとした木には、既に近藤がいたが…

「カーブト…」

ハチミツの所為で滑って、

「割れたァァァ!!」



そして土方と銀時が、木に登った所でもめ始めた。

「カーブト…」

「言わせるか!カーブト…」

「俺がカーブト…」



ザッ、と沖田と神楽が復活した。仕返しの為に今、復活したのだ。


「カー」

「ブー」

「「トー」」


「…オイ、ちょっと待て」

「俺たち味方だろ。俺たち…」


「「折りじゃァァァァ!!」」

木ごと折ってしまった二人。もの凄く大きな音が響き、辺りの木々を騒がせた。その所為で、目当てにしていたカブトムシは飛んで行ってしまった。










そして夜。
真選組は適当な場所に簡易小屋を建てている。そこで今後の予定を考える。


「全く、とんだ邪魔が入ったものだ。ただでさえこの広い森の中で一匹の虫を探すなんて至難の技だというのに」

近藤はまだ、ハチミツまみれのままでいる。それを隣でじーっと見続ける侑。


「どうしたものかトシ…」

「とにかく奴らにアレの存在を知られねーように気を配ることだ。奴らのことだ。アレに勘づいたら間違いなく良からぬことを考えるはずだ。なんせ価値にしたら国宝級の代物だ」

「うむ!何としても見つけださねば。皆、今のうちに腹ごしらえしておけ。今日は夜通し探索を行うぞ!一刻も早く、瑠璃丸を将軍様の元へ返すのだ!」

「「「オオー!!」」」



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