誠乃戦隊
□二、風呂に入る時は下を隠せ
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「オイ日高、お前いつまで寝てんだ。今日は日曜だが朝から稽古してんだぞ。早く来い」
土方は眉間に皺を寄せながら、閉められている襖に向かって話す。一応女の部屋であるから、ガツガツ入ることも出来ない。
「………」
返事がない。
土方は痺れを切らし、スパァァンと襖を開けた。もう女の部屋だろうが彼には関係なかった。
「っ…!」
土方の目の前に広がる世界は、想像していたよりも異常なものであった。
“史上最強のブレイヴ!獣天戦隊、キョウリウジャー!!”
“荒れ踊るぜー!止めてみやがれってんだ!”
「おま、何してんだ?」
「おはようございます副長。今日は日曜。そして今は7時30分。これから30分間は私の時間ですので、お引き取りをお願い致します」
そう土方に訴える侑であったが、全く彼の方を見ていない。目線の先は、ずっとテレビにある。
そう、侑は戦隊オタクでもあったのだ。部屋中には戦隊のフィギュアが綺麗に並んでおり、変身玩具も箱の中にまとめられている。
相変わらず無表情でテレビを見ているが、オープニングテーマが流れるとリズムに乗り、体をゆらゆらと左右に揺らす。
「ファイヤァァァァ!!」
「ファイヤァァァァ!!じゃねーだろォォォォォォ!!!」
土方は、意味の分からない合いの手にツッコミを入れた。そして彼女の首根っこを掴み、ずるずると引っ張って行く。
「何をなさるんですか副長。レッドが、私のレッド様が…」
「何がレッド様だ。朝稽古があるって言ってんだろ。ったく新入りの癖に」
「局長には許可を頂きましたが」
「あ?」
土方の睨みは本当に怖い。あれで幾度も子供を泣かせたことがあるが、侑には通用しない。
「ですから、許可を頂きました。前以って履歴書にも趣味の欄に“平和を守る方々の応援”と書いていましたし」
聞こえはいいが、単なる“特撮番組の視聴”である。
「履歴書?」
そう言えば見てなかったな。と土方は思い出した。侑の入隊は上の方が決めたことであった為、土方は詳しいことを知らされていなかったのだ。
彼女を稽古場に放り投げ、土方は資料室へ向かった。