Novel

□好きなのにすれ違う
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 「あれ? バネッサ、ムラクは...」
 「先生に先程呼ばれていたから、職員室だろう。」
今朝一番に出会ってアイツから聞いた言葉は‘ムラク’だった。
 先程、ミハイルは教室につくなり教室を見渡していた。大方、あの時もムラクが居るかを探していたのだろう。
 アイツは口を開けばムラク、ムラクで、行動も常にムラクと一緒でいつもうんざりする。
ほら今も、ムラクの帰りを待っているように教室の入り口をみている。
 ――って、私は何ミハイルの事ばかりみているんだ。
無意識にミハイルを見ていた自分の行動に恥ずかしくなる。 顔が熱くなるのを感じてしまう。

 「どうしたバネッサ? 顔が赤くなっているぞ?」
 「っ!? ミハイル、いつの間に」
気が付いたら、ほんと目と鼻の先の近さでミハイルの紺に近い透き通った紫色の瞳があり、思わず目を見開いた。

ミハイルは私と顔が近いなど気にしてないように涼しい顔をして少し離れる。
 ―まるで、男同士と接するように。
 「あぁ、ムラクも居ないしな」
 「あ、そうだよな」

 ――またムラクかよ...
いい加減うんざりしてきた。
さっきまで火照っていた顔が一瞬で冷めた気がする。
 やはり、ミハイルはムラクの事しか気にならないらしい。

 「大丈夫か? 今日は帰った方が...。ムラクも心配するだろうし――
 「お前は!!」
気が付いたら、教室の話し声が消え、全員が私の方を向いていた。 どうやら、知らずに大声を出していたらしい。
 みんなからの目線が恥ずかしく、私は教室を飛び出していた。
 「バネッサ!!」
ミハイルの私を呼ぶ声が聞こえた気がした。


***


 「バネッサ! どこまでいくんだ!」
 「つ、ついてくるな!」

 今朝会った時からバネッサは顔を赤らめていた。
 もし、風邪を引いたのであれば今回のウォータイムに支障が出てしまうかもしれない。
そう思って、バネッサに一声掛けたのだが、彼女は突然声をあげて教室から飛び出してしまい、今に至る。

教室から出てしばらくかけっこが続き、階段の踊り場までついてしまった。
 先程追い掛けていて、バネッサが、階段を上がったのが見えたから多分、屋上へ出るつもりなのだろう。
 次々とすれ違う生徒を避けながら階段をかけ上がり、屋上のドアを開けると、一番奥にある手すりに掴まり息を整えるバネッサが居た。
 バネッサも僕も運動は得意な方ではあるが、流石に階段を全速力でかけ上がるのは苦しく、お互いに体力は限界に近かった。
 「なんで...追って来たんだよ」
僕の方を向かず、彼女は息が切れているからか、弱々しく僕に聞いてきた。
 「なんでって、君が突然教室から飛び出したから...」
それしか言葉は思い浮かばなかった。
 僕の言葉が届いたのかバネッサは荒い息のままだが、こちらを向いてくれた。 心なしか、その表情は怒っているように見えた。
 「どうせ、ムラクが心配するからだろ?」
 「え、どういう――

 どういう事だ?
そう聞き返そうと思ったらバネッサの身体がずるずると手すりに寄りかかりながら、下に崩れて行った。
 もしかしたら、本当に風邪を引いたのかも知れない。
心配になり、バネッサの元へ近付こうとするが、
 「来るな!」
と、自身の額に手を当てながら叫んできた。
やはり、風邪を...いや、もしかしたら熱まで出ているのかもしれない。
 バネッサは、心配されるのを異様なほど嫌っている。
以前も熱が出た事があり、あの時は暴れるバネッサを抱えて保健室へ連れていった事もあった。
だから今回もそのような類いなんだろうと思い未だに、抵抗はせず、来るなと叫ぶバネッサに近付き顔を覗きこんだ。

 「バネッサ、どうして...」
 「来るなって言ったろ、ばか」
バネッサの黒い肌には一筋の滴が垂れていた。
 その滴はバネッサのつり目の灰色の瞳から来ており、いつもの気の強そうな彼女のイメージとは全くと言っても良いほど似つかなかった。
初めてみる彼女の泣いている姿にどうしたら良いのかわからなく、頭の中が混乱してしまう。
 混乱している僕に対しバネッサは更に涙を流し続けており、屋上の床はバネッサの涙により滴の後が染みていた。

 「悪い、ミハイル...忘れてくれ。」
制服で涙を拭いながら静かにバネッサは呟いた。
その瞬間、僕の身体は自然と動いていた。 座り俯いているバネッサに僕は、慰めるように背中に手を回し隣に寄り添った。
すぐ真横にバネッサが居るため、バネッサの体温が呼吸が直接感じる。
 僕が寄り添った瞬間にバネッサの身体は驚いてかなのか、びくりと反応した。 きっと今も僕の行動に理解出来ず目を見開いている事だろう。それは、僕だって同じだ。
なぜ、僕がこんな行動に出たのか。自分でも理解が出来ない真間でいる。

 「すまない、バネッサ。」
 「な、なにを突然! 謝るんなら放せよ!!」
やっと自分に起きている事が理解出来たのか、「放せよ」と言っておきながらバネッサは女子とは思えない程の力で僕をはね飛ばしてきた。
 ごんっと鈍い音がしたかと思えば、後頭部に鋭い痛みが走る。 どうやら、バネッサにはね飛ばされた事により真後ろに倒れ、頭を強くぶつけたらしい。
いてて、とぶつけた部分を片手で撫でながら起き上がると目の前には顔を真っ赤にしてこちらを見ていたバネッサと目があった。

続く、あとがき→
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