Novel
□初めての夏
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「みなさーん!!花火セット買ってきましたよ!」
ダックシャトル内に、バン達より一つ下であるヒロの声が響いた。
その声に反応した全員が、笑顔になり席を立つ。
***
誰かが持ち出した、「花火」をやりたいと言う言葉。
それに、反応したユウヤは目を輝かせ、
「僕も花火やってみたいな」
といい、その言葉に珍しく微笑むジンが同調をした。
ジン、ユウヤはお互い家族も居ず、小さい頃からイノベーターとして居たためか、
家族、友達と遊びに行く。というのは、ほぼ0に近かったのだ。
イノベーターの事を深くは知らないヒロ達は 花火をやった事が無いという二人の事実に驚き、目を丸くした。
「なら、すぐ買ってきてやろうぜっ!!」
と提案したのは、遊びなどが大好きなアスカで、その提案に直ぐ賛成したのは、後輩のヒロとランだった。
外出時など、そういう話は拓也に許可を貰いに行くのが、原則だ。
今回もそれらと変わらず、拓也の元へ、許可を貰いに行った。
話をすれば、拓也はすんなりと
「たまには羽を伸ばすのも良いだろう」
なんて言いってきた。
その言葉で全員のテンションが上がるのは当然だった。
じゃんけんで、運悪く負けてしまったヒロは、近くの店で花火セットを買いに行く事となり、
少しの文句を言いながらも、ダックシャトルを出ていった。
「花火をついに出きるなんて、嬉しいな!」
いつもは、大人しいユウヤであるが、この事は本当に楽しみらしく、笑顔でジンに話しかける。
ジンも小さな笑顔で返し、「楽しみだな」
と言っていた。
そんな二人を少し離れたところでみていたバンも、笑顔で話をしているジンを見れて
自分も釣られながら笑顔になっていた。
***
ヒロが帰って来たのは、あれから10分後で、時間的には日が完全に落ちる少し前。
花火をやるには丁度良いタイミングであった。
8月の強い日射しに、セミの大合唱が行われているため、昼間は暑く苦しく感じるが、
夜にでもなれば、セミの鳴き声も静まる。太陽も隠れ、少しばかり生暖かい風も吹き始めるため、昼間に比べればましな暑さになる。
『花火セット』と書かれた袋を3つ持ち、全員は「楽しみだね」など楽しい会話を繰り返し、ダックシャトルからそれほど遠くない静かな広場へと向かった。
続く
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