Novel

□そんな彼等が眩しすぎて
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 僕にとって、バンくんやヒロくんは眩しすぎた。

LBXの産み親、山野淳一郎博士の子供で、才能を持つ、LBXが大好きなバンくん。
小さい頃からヒーローに憧れ、素直で初心者ながらも器用にLBXを操るヒロくん。

闇を体験したことのない、
まっすぐな彼ら。
でも、僕は違う。僕の人生は小さい頃から歪み続けていた。
だから、傷付けた、バンくんも僕自身も、そしてジンくんも

海道ジンくん、彼は凄く強い。LBXプレーヤーとしてもだが、彼は心が本当に強かった。

 「ねぇ、ジンくん...」

独り言のように、ポツリと呟くと隣に座っていたジンくんが声に出さずに、こちらを見て
次の僕の言葉を待っていた。
 「本当にジンくんには感謝をしてもしきれないよ」
突然言われたことに、理解出来ず、軽く首をかしげている。

 ―まあ、しょうがないよね、
突然言ったんだから、いくらジンくんでも理解をするのは難しいだろう。

 「ユウ...」
 「今回のオメガダイインの戦いも、僕はジンくんに助けられっぱなしで、恩返しなんて一つも出来なかった。」

そう。助けられっぱなしなんだ。
僕は、アルテミスの時から何も変わんない。
今回の戦いで、恩返しが出来たら。そう考えていたけど、やはり迷惑をかけてしまった。
それが、本当に悔しく、情けなく、怒り任せに、座っているベンチに迎い右手の拳を小さく振り上げ叩き付けた。

まだ震える右手をもう一度振り上げるが、それを阻止したのは、白く長い指を持つジンくんの手だった。

 「ジンくん...」
 「バトルに支障が起きたら危険だ、それ以上はやめておくんだ。」

冷静に淡々と僕に告げた。
ジンくんの手は、細いのに強くて、今まで運動などしてこなかった僕じゃジンくんの手から逃れる事は出来なかった。

 「悔しいんだよ! 何にも出来ない自分が、助けて貰う事しか出来なかった自分が悔しくて、憎くて...」

 目から溢れる抑えられない涙。
涙は止まらなくて、鼻水まで出てくる。
 きっと僕の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっており、汚いだろう。
目の前は涙で歪んで居るためジンくんの顔は見れない。
ジンくんはどんな顔をしているのだろうか。
怒ってる? 悲しんでる?考えただけで怖くて、見えない事に安心をした。

また、怒るかな。
そう考えていた、でも気が付いたら僕の身体は暖かく包まれていた。

 「ジンくん...」
 「ユウヤ...」
僕の身体を包んでいたのは、ジンくんの両腕だった。

 「何も出来てないなんて言うな。ユウヤが居るから今の僕が居るんだ。」
優しい声が僕の耳に直接響く。
少しハスキーで、でも柔らかく同い年とは思えない声を聞くと、いつも胸が高鳴ってしまう。

何も言えない自分にまたイラつきを覚えるけど、ジンくんの中に居るのが心地好く、涙は段々と止まって行った。

 「...ありがとう、ジンくん」
まだ笑顔にはなれないけど、小さく呟く。
そんな僕は、もう闇を知りつくしているけど、まだ光を諦めるのは早いのかもしれない。

その優しい手を握れば、笑顔が僕を迎えてくれるのだろうか。




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