ジャンプ系→中・短

□接点
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最近 図書室によく来る生徒が居る
確か…二年の切原赤也君
同じクラスの真田君から聞いたことがある
テニス部のルーキーなんだって
凄いね 二年なのに


そんな彼との出会いは
中間テスト期間のときだった
柳君、真田君、幸村君に囲まれて泣きながら勉強していたのを影から見ていた
少し笑ってしまって そしたら





切原〈笑うなんて酷いっス!〉





と言われてしまい また笑みがこぼれた
それからというもの 彼はテスト期間になると図書室にやってくる
幸村君から〈迷惑かける〉と言われたが
最近の図書室は人が居ないから少し寂しい思いをしていたところ


確か小テストがあると風の噂で聞いた
今日も ここに来るのかな?楽しみ!





ガラッ




切原「奏先輩!」





元気よく入ってきたのは
やはり切原君だった
人が少ないとはいえ 大きい声は厳禁





『こんにちは切原君。図書室では静かにね?』



切原「ぁ…スンマセン…」



『さて、どこが分からないの?』





成績は上位に居る
正直 本を読むか勉強するしか時間を潰す方法を知らない
友達は居るけど うわべだけ
なんでも テニス部ファンクラブというのに入っているらしく
興味がないと断ったら 皆離れていった





切原「奏先輩?どうしたんっスか?ボーッとして」



『ゴメンね?気にしないで勉強やりましょうか』



切原「っス!」





テニス部ファンクラブがある所為か真田君も頭を抱えてるらしく
応援してくれるのは嬉しいが 騒がれるのは敵わないと 愚痴を溢していた





切原「奏先輩って…その…好きな人…とか…居ないんっスか?」



『私?考えたことないかな?私の恋人は本だもの』





ファンクラブの存在で選手にも影響が出ていると柳君が言っていた
人間不信…いや 女子不信になっている人も居るとか


だから 初めは切原君とも こういった関係ではなかった
テスト期間の度 一人で黙々と勉強している彼の邪魔をしないように図書委員としての仕事をこなしていたら





切原〈あのっ!〉



〈はい?〉



切原〈ここ…教えてください!〉





顔を真っ赤にして 教科書を付きだしながら頭を下げる彼の姿に
豆鉄砲を食らったように目を見開いてしまった
瞬間 クスクスと笑ってしまい
また 〈酷いっス!〉と言われてしまった





切原「またボーッとしてるっスよ?」



『そぅ?切原君との出会いを思い出して笑っちゃってたのかな?』



切原「うわっ思い出さないで欲しいっス」



『フフッゴメンね?さぁ、続きをやりましょ?』





テスト期間だからといって部活を疎かにするわけにはいかない
全国制覇のためにと日々努力しているからこそ
このような勉強のために時間を潰すわけにはいかないのだ





切原「今日も残ってるんっスか?」



『ん?そうだね。切原君のテニス姿も見たいし』





図書室の一角にテニスコートが見える場所がある
知っているのは アタシだけ
図書委員として倉庫を整理しているときに気づいた





切原「コートに来れば良いじゃないっスか…」



『仕事を放り出すわけにはいかないから…時間があれば、ね?』



切原「約束っス!」





数十分後 真田君が迎えに来た





真田「済まないな」



『私も楽しませてもらってますので』





切原君が来てくれるお陰で
最近笑えるようになった
教室でも 人と接する機会が少ない分 笑うことをしなくなって
でも 切原君と話していたら
自然に頬が緩んでしまって…





『…え?』





まさか 私 切原君に …恋してるの?


倉庫の窓からコートを覗くと
割れんばかりの歓声とギャラリー
視界の先には 柳君と切原君が居た
先ほど分かれたばかりなのに…もぅ寂しくなってしまって…胸が…痛い
無意識に心臓部分の制服を握る





『切原君…私は…』





どうか 貴方を想ってしまった私を 許してください
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