桜と永久の約束

□小夜の子守唄
2ページ/5ページ




悟空は話した、たくさんのことを。
三蔵たちとの出会い。
自分の目で感じて、聞いてきたこと。



「ジープは八戒と居ることが多いんだ。拾ったのも八戒だし、一番懐いてる。桜はもう会った?」


「ええ」


「ぁ、そんで八戒はすんごい気が利くんだ。三蔵はすぐ怒るんだけどさ、八戒にはどこか弱いんだ。
本気で一番怒らせちゃいけないのは実は八戒なんだぜ」


「あら、どうして?」


「八戒は…とにかく怒らせちゃダメなんだ!!!」



悟空の脳裏に黒い笑みを浮かべた八戒が過ぎる。
桜は悟空の一喜一憂に自然と笑みが溢れる。



「悟浄さんは?」


「悟浄はすんごいエロガッパ」


「えろがっぱ?」


「うん。女の人にすぐ手を出すんだ。あ!大丈夫、桜は俺が絶対何が何でも守るから安心しろよな!!!」


「ふふっ、頼もしいわね」



桜は、悟空の柔らかい髪を撫でる。
悟空は恥ずかしそうに笑う。



「えへへ」


「悟浄さんにもいいとこはあるでしょ」


「んー、悟浄は…ふざけてる奴だけど。…でも、頼りになる仲間だ。
―――ぁー、これは悟浄にはナイショな」


「どうして?」


「悟浄はすぐ調子乗るから」


「ふふっ、そうなの?」


「うん。だから付け上がらせちゃダメなの。
それから、三蔵はいっつも不機嫌なんだ。すぐ怒るし、叩くし、銃ぶっぱなしてくるし」


「――でも、大切な仲間なんでしょ?」


「うん。三蔵が助けてくれなかったら、きっと桜とこうやって話すこともできなかったと思うし。なにより――」



悟空はそこで言葉を区切る。



「今は寂しいなんて感じない。
胸がぎゅって苦しくなることもないし、手を伸ばせば手が届く距離に誰かがいる」


「悟空?」


「ほら、こうやって手を伸ばせば、桜に触れる」



悟空の手が桜の手に触れた。
悟空の手は暖かかった。



「俺が拾われたときの三蔵、桜にも見せたかったな」



逆光になった表情は見えなかったが、
悟空にはそれが輝いているように見えて。


あの瞬間から全ては再び動き出したのだ。



「あのさ、三蔵の髪の毛すんごい綺麗な金色なんだ。陽の光や月の光浴びるとキラキラしてんの」


「金」


「うん。ぁ、俺の目も同じなんだけどさ。三蔵の方がすんごいキラキラしててさ。
そん時の三蔵はまるで―――太陽みたいだったんだ」


「太陽―――」


『…すげーきらきらしてんな。たいようみたいだ』



声が聞こえた。
それは幼い子供の声。


桜は突然の声に硬直する。
その声の響きがとても胸を締め付けて
思わず、胸に手を置いた。



「――、くら!なぁ、桜聞いてる?」


「!!」



桜の肩がピクリと揺れた。
悟空の声で我に返る。



「――なぁ、桜聞いてた?」


「ぇ?ぁあ、ごめんなさい。ちょっとぼぅっとしちゃって」


「あーあ、桜にも見せたいな。一緒に旅できたらいいのに」


「それは、残念だけど。また、ここに来てくれるんでしょ?」


「――うん。そうだな、じゃあパパッと要済ませたらここに――桜に会いに来る。いつか絶対、また会いに来るからさ。だからさ―――」


「わかったわ、楽しみにしてるわね」


「じゃあ、約束な」



悟空は自然に小指を前にだした。



「ほら、桜も指出してよ」


「指?」


「え!?指切り知らないのか!!?」


「指切り?」


「うん、こうやって指を絡めて。げんまん、っと。これは約束するときにすんの。だから約束の印。
約束だかんな、きっと別れてもまた会おうな」



桜はどうしようもなく目が熱くなった。
左目から溢れた雫は、目を覆うサラシが吸い取る。



(なんで、こんなに泣きたくなるのだろう)



それは、悲しみの涙か
それとも―――



今はまだ、全てがわからないまま。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ