桜と永久の約束
□小夜の子守唄
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悟空は話した、たくさんのことを。
三蔵たちとの出会い。
自分の目で感じて、聞いてきたこと。
「ジープは八戒と居ることが多いんだ。拾ったのも八戒だし、一番懐いてる。桜はもう会った?」
「ええ」
「ぁ、そんで八戒はすんごい気が利くんだ。三蔵はすぐ怒るんだけどさ、八戒にはどこか弱いんだ。
本気で一番怒らせちゃいけないのは実は八戒なんだぜ」
「あら、どうして?」
「八戒は…とにかく怒らせちゃダメなんだ!!!」
悟空の脳裏に黒い笑みを浮かべた八戒が過ぎる。
桜は悟空の一喜一憂に自然と笑みが溢れる。
「悟浄さんは?」
「悟浄はすんごいエロガッパ」
「えろがっぱ?」
「うん。女の人にすぐ手を出すんだ。あ!大丈夫、桜は俺が絶対何が何でも守るから安心しろよな!!!」
「ふふっ、頼もしいわね」
桜は、悟空の柔らかい髪を撫でる。
悟空は恥ずかしそうに笑う。
「えへへ」
「悟浄さんにもいいとこはあるでしょ」
「んー、悟浄は…ふざけてる奴だけど。…でも、頼りになる仲間だ。
―――ぁー、これは悟浄にはナイショな」
「どうして?」
「悟浄はすぐ調子乗るから」
「ふふっ、そうなの?」
「うん。だから付け上がらせちゃダメなの。
それから、三蔵はいっつも不機嫌なんだ。すぐ怒るし、叩くし、銃ぶっぱなしてくるし」
「――でも、大切な仲間なんでしょ?」
「うん。三蔵が助けてくれなかったら、きっと桜とこうやって話すこともできなかったと思うし。なにより――」
悟空はそこで言葉を区切る。
「今は寂しいなんて感じない。
胸がぎゅって苦しくなることもないし、手を伸ばせば手が届く距離に誰かがいる」
「悟空?」
「ほら、こうやって手を伸ばせば、桜に触れる」
悟空の手が桜の手に触れた。
悟空の手は暖かかった。
「俺が拾われたときの三蔵、桜にも見せたかったな」
逆光になった表情は見えなかったが、
悟空にはそれが輝いているように見えて。
あの瞬間から全ては再び動き出したのだ。
「あのさ、三蔵の髪の毛すんごい綺麗な金色なんだ。陽の光や月の光浴びるとキラキラしてんの」
「金」
「うん。ぁ、俺の目も同じなんだけどさ。三蔵の方がすんごいキラキラしててさ。
そん時の三蔵はまるで―――太陽みたいだったんだ」
「太陽―――」
『…すげーきらきらしてんな。たいようみたいだ』
声が聞こえた。
それは幼い子供の声。
桜は突然の声に硬直する。
その声の響きがとても胸を締め付けて
思わず、胸に手を置いた。
「――、くら!なぁ、桜聞いてる?」
「!!」
桜の肩がピクリと揺れた。
悟空の声で我に返る。
「――なぁ、桜聞いてた?」
「ぇ?ぁあ、ごめんなさい。ちょっとぼぅっとしちゃって」
「あーあ、桜にも見せたいな。一緒に旅できたらいいのに」
「それは、残念だけど。また、ここに来てくれるんでしょ?」
「――うん。そうだな、じゃあパパッと要済ませたらここに――桜に会いに来る。いつか絶対、また会いに来るからさ。だからさ―――」
「わかったわ、楽しみにしてるわね」
「じゃあ、約束な」
悟空は自然に小指を前にだした。
「ほら、桜も指出してよ」
「指?」
「え!?指切り知らないのか!!?」
「指切り?」
「うん、こうやって指を絡めて。げんまん、っと。これは約束するときにすんの。だから約束の印。
約束だかんな、きっと別れてもまた会おうな」
桜はどうしようもなく目が熱くなった。
左目から溢れた雫は、目を覆うサラシが吸い取る。
(なんで、こんなに泣きたくなるのだろう)
それは、悲しみの涙か
それとも―――
今はまだ、全てがわからないまま。